あらすじ
こう考える医師が
多いのは、なぜか?
多くの人がのぞみそうなポックリ死・老衰死は、
がん死よりよほどつらいと思います――久坂部羊(『人はどう死ぬのか』著者)
がんだけは絶対に嫌だ、という人は多い。だが2人に1人がこの病気になり、3人に1人が亡くなる。
著者は長年、外科医としてがん拠点病院で活躍。
その後ホスピス医として3000人の末期がん患者と接した経験から医療の過剰な介入(幾度もの手術、抗がん剤)に疑いを持ち、むしろ「がん死」こそが人間に相応しいと考えるに到る。
がんでも穏やかに最期を迎えるには、何をどう準備すべきか。
がんで亡くなった愛妻の最期を告白し、「人ががんで死ぬ」25の実例を挙げ、死に方、終末医療のあり方を示す。名著、待望の復刊。序文・久坂部羊。
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身内が癌で亡くなり、大変な治療をしてきたので癌になったら終わりと思ってたが、この本を読み180度変わった。やりすぎる治療、抗がん剤、
医者の言うままに治療は考えものだと思った。
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私もかねてからガンで死にたいと思っていたので読むのを楽しみにしてました。
第1章はがんについて知らないことが多くて読み応えがあったが、徐々に科学的な記述が減り、著者の印象や思いが多くなります。
しかし、私が日頃から思っていたこと(在宅ケアのこと以外)が言語化されており、終末時の取り扱いについて書面を残すときの参考になりそうでした。
家では死にたくないと思っているが、その可能性もあるだろうから、そこは向き合って知っていかないといけないと思った。
初期の肺がんの手術は成功したのに、合併症の間質性肺炎で69歳で退院後あっという間に亡くなった父、
甲状腺のガンで2019年に(おそらく)「広範囲郭清」してまだピンピンしてる80歳の母、
肝臓がんを積極的に治療せず、私達一家と旅行を楽しんだ医者だった祖父、
彼らのことを参照しながら読んでいる。
あとがきまで読むと、ご自身はがんの手術を57歳のときだけでなく、その後も2回していたと分かるので、人によっては賛同できないかもしれない。
それを踏まえての著書だと捉えて読める人には良いと思う。
私はこの本を手始めにガンにかかったときの準備をしようと思った。
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たくさんのがん患者さんから学び、家族をがんで失い、自身もがんになった著者しか書けない事実がたくさん書かれていた。
日本の医療技術も医療機関のホスピタリティも、世界の中では優れたものだと勝手に思っていたけど、まだまだ至らない分野があるんだな。
日本人の死生観は未熟だと思い知らされた。
私の父もがんを患い、亡くなった。
がんとわかってからは元気なうちに身辺整理をして、それなりに行きたいところに行って、会いたい人に会って、紆余曲折はあったけど、最期は家族みんなに囲まれて自宅で息を引きとった。
本人はどう思ったか知らないけど、ピンピンコロリ(=突然死)よりも、幸せな死に方だったと思う。
私も、自分の人生は、自分で後片付けしてから終えたいと思う。
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自分自身の尊厳ある生き方、そして死に方について考えさせてくれる良書だった。
ホスピスや緩和ケアについていくらか知っているつもりだったが、現実には金儲け目的の有料老人ホームは数あり、緩和病棟のある日赤や協立病院などもあるがほんの少しのベッド数だ。
自分の最期はこんな所で、という小川糸のライオンの家のような場所にたどり着くのは難しすぎる。
田舎では、結局は病院でということになるのだろうか。癌になってもそう簡単に手術や抗がん剤、放射線の治療には進むまいと心に刻んで本を置いた。
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「癌で死にたくない」との声をよく聞くが、それは単に「死にたくない」ということではないかと序文で久坂部羊氏が書いている。二人に一人が癌に罹患する時代である。死に対する心の準備ができる癌で、穏やかな死を迎えることができるよう心の準備をしたいものである。
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外科医として、長年がん拠点病院で活躍され、その後ホスピス医として3000人の末期患者と接した経験をもつ小野寺医師だからこそわかる事がある。
自らの実体験から、ついに自らも自分の死について考え、実践されていかれたそうです。
誰もが、いろいろな知識を習得し、自分の死を考え、行動していくことが必要なのでしょう。実は日本の医療は思っているほど、世界的にみて先進的ではない事、知らないと大変な事が起こる可能性ある事を知るべきです。
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本書は2012年に出版された本の復刊。久坂部羊氏の序文、著者のご息女のあとがきが追加されている。
内容は目次の各章のタイトルの通りで、自分の認識と違和感はない。
あとがきによれば、2019年にがんで亡くなった著者は、この本に記したようには死ぬことができず、手術は行い、ホスピスには入らなかったが、抗がん剤治療は受けず、ぎりぎりまで自宅で過ごしたとのこと。
2012年当時と比べ、現在どの程度著者の主張しているような医療に近づいているのか、自分に引き寄せて考えるとそのあたりを知りたいと思う。
【目次】
序文 久坂部羊
はじめに
第1章 高度進行がんになったら、手術は受けません
第2章 抗がん剤治療も受けません
第3章 体力のある間に、自分のやりたいことをします
第4章 在宅で最期を迎えるのが第一希望だが・・・
第5章 入院するならホスピスにします
第6章 痛みなどの苦痛は十分とってもらいます
第7章 食べられなくなっても点滴輸液は受けません
第8章 認知症になる前に依頼しておくこと
第9章 臨終に近づくときは、そっとしておいてもらいたい
第10章 安らかな死を妨げるのは最終的には心の痛み
補章1 残念でならない妻の臨終直前の呼吸苦
補章2 がんになったら、がんという病気の本性を理解しなければならない
あとがき 小野寺美奈子
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在宅か入院か
1️⃣抗がん剤はほぼ効かない。効果を発揮するのは数十人に1人。
2️⃣数十人に1人、としか書けないのは、ガン患者が全て登録され、術後の生存率や抗がん剤の効果などがすぐ検証できるアメリカに対し日本にはそのような仕組みがないので医師の個人的な経験と勘に頼った抗がん剤治療が行われているため。
3️⃣特に終末期に抗がん剤治療を行うと患者の気力体力を削ぐ。
4️⃣治らないと確定し、医師と患者がこれ以上治療はしない、と意思確認できればあとはホスピスで痛み対策のみしながら最後の時間を有意義に過ごした方が良い。
5️⃣ならば在宅で看取りを、と考えたくなるが、肺がんなど呼吸器に癌がある場合の呼吸の確保や、疼痛対策ができない。
6️⃣疼痛対策は非常に大事。モルヒネやフェンタニル(‼️)を使うのだが、病院で最後を迎えると、看護師に痛みを訴える→医師が処方箋を書く(休みだったら?)→病院の在庫から別の医師の許可をもらって麻薬を出す→ようやく注射、という流れになるので患者が長く苦しむ。ホスピスでは麻薬の効果が切れないよう、点滴に混ぜて連続投与するのだが。
7️⃣最後まで家族とコミュニケーションできる死に方が望ましいのではないか。
8️⃣…と書く小野寺医師ですが自らの最後は、望み通りとはいきませんでした。主に介護を担当した娘さんが、「文句が多く疲れる!2日旅行に行く!」とそばを離れた間に亡くなった。しかも、週末だったので「呼吸が苦しい、○○製のものを持ってこい」と言われたが、調達できず。この本は「患者と家族のために」という視点から書かれていますが、著者自身はそれを全う出来なかったようです。この部分は娘さんが書いたあとがき、で明らかにされます。
Posted by ブクログ
ポックリ死(心筋梗塞、くも膜下出血)は、発症時の痛みがひどい。
老衰死はそこに至るまでが苦しい。
がんであれば、死ぬまでに時間があって、痛みさえコントロールできれば心置きなく死を迎えられる。
がんになっても、手術は受けず、抗癌剤治療を受けず、ホスピスに入院する。
日本のがん治療は手術至上主義。
湿潤性のがんは常にがん細胞が流れ出ている。転移するのは当然。
手術するより、緩和ケアのほうが長生きする可能性がある。
がん手術に名医はいない。再発はがんの性質や進行度で決まる。
抗癌剤は、白血病、睾丸がんなど一部。
ホスピスで亡くなるのはがん死の5%程度。在宅ホスピスも選択肢。
モルヒネは天の恵み。
がん末期は、痛みだけでなく呼吸苦、だるさ、身の起きどころがない、などがある。何が出るかはわからない。
点滴は効果がない。中心静脈栄養でも、腹水など影響が出る。
確率的には認知症のがん患者になる。認知症になる前に意思表明をする。
食事を低カロリー低タンパク質にする。胃瘻はしない。向精神薬、モルヒネを使う。寝たきりになったら鎮静をする。安楽死問題で不可能な場合もある。
声掛けに反応できなくても、耳は聞こえている。反応できる力がない。
呼吸苦に対して、緩和ケアが遅い。塩酸モルヒネやピレチアを投与する。
がんと闘いすぎない。
初期の肺がんは、CT検査が必要。
欧米では胃がんは少ない。
がん治療後の食生活で、再発は防げない。
Posted by ブクログ
多くの医師ががんで死にたいと考えるというのはよく耳にしてきたが、人生の後始末をして死んでいけると言う意味では私も事故死や突然死よりはがんの方がいいかな。
本書は2012年に書かれた本の新装版ということで、がんの免疫療法等などは今は少し進んで一部保険適用もされているようだけど、高度進行がんに対して筆者の提唱することには概ね賛成だし、自分がもしがんに罹ったとしても、無闇に手術や抗がん剤治療で貴重な時間を無駄にしたくないと思った。
そして、一番大事なのは適切な疼痛管理で、これがホスピス以外の病院でも行われてほしいし、本人が望むなら薬による鎮静も躊躇することなく踏み込んでほしい。