あらすじ
10年後に思い出す。そんな日は突然やってくる。
『わたしを空腹にしないほうがいい』『うたうおばけ』『湯気を食べる』がロングヒット&話題沸騰!!
ままならない人生に巻き起こる、心ざわつく悲喜こもごも――。
エッセイで日常のシーンを鮮やかに切り取り掬い上げてきたくどうれいんが描く、風味絶佳な初の小説作品集。
「そうだ。この間、酔って穴掘ったんだよ」「穴?」「どこに」
高校時代からの三人の友情は、公園の穴に吸い寄せられてゆく。(「スノードームの捨てかた」)
「いいんだよ、バイキングって『ご自由に』って意味なんだから」
同じヨガ教室に通う美女・ようこさん。彼女の“秘密”を知った私は――。(「鰐のポーズ」)
「どういうことですか」「こういうことです」
別れた恋人との指輪の処分に迷うまみ子が出会った、しゃがみ込む男。(「川はおぼえている」)
「すみません相席いいですか」
美術館の監視係をするわたしに舞い込んだ恋の予感、のはずが……。(「背」)」
「なにか直してほしいところ聞きたい、時間つくるから、つくって」
――結婚目前の彼女からの不穏な質問。(「湯気」)
「あら、じゃあもう決定だ、正解だ、運命だ」
仕事を辞め、虚ろな毎日で見つけたのは、一枚の祖父の絵だった。(「いくつもの窓」)
思ってもみなかった。こんなに心ざわつく日がくるなんて。
くどうれいんが描く傑作6篇。
感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
どれもエモ深かった✨
【川はおぼえている】
夜の川はときどき鱗のように光る。二度と同じ水は流れないはずなのに、川を見て何か
を思い出すとき、わたしたちは川の何を見ているのだろう。←ささった!
【背】
美術館の監視係は、防犯カメラの監視係に見られていた。そんなきっかけで始まる恋なのかと思いきや、やがて「見られる」ことのストレスやまとわりつくものについての話に。着地点が分からずおもしろかったし小川洋子みを感じた。(背筋をのばしている描写の意味はなんなのだろうか、本人の生きている実感のためか、もしくは今でも見られる恐怖が意識が残っているのか)
Posted by ブクログ
くどうれいんは、歌人で、
しかも、本書が初小説だそうです。
感性ひかる、六つの短編が入っています。
どれも、
くどうれいんの特徴の
こまかな描写や所作、微妙な感情の
ゆれを文章でつづっています。
その中でもわたしは、
「いくつもの窓」という作品が気に入りました。
…保険の外交三年目の女性は、あるときに自分で作って、
お客さんに配る「かっきーつうしん」のチラシをくしゃくしゃにして捨てられてしまいます。
そのショックな出来事が発端で、激務だった仕事を辞めることにします。
そして、
辞めたあとも辞めたことに悩みながら、携帯電話の写真を消去することから始まり、部屋の断捨離に取り組みます。
当場は、スパゲッティ屋でアルバイトをしながら、再就職を考えています。
断捨離の過程で見つけた祖父の山の絵(ちぎり絵)を額装をすることにします。
「雲画堂」に頼んで、額装された作品を部屋に持って帰ってから、額が絵に対して、立派ずきると、
絵と額を別々に飾ります。
玄関に飾った(絵のない)額の「空虚さが心地いい」と…
さまざまな人との交流があります。
保険の外交員として、新規のお客さまとの関わり。
保険の仕事を辞めるときの上司への報告を兼ねたやり取り。
アルバイト先のスパゲッティ屋の店主との会話。
「雲画堂」の店主とのほのぼのとした
トーク。
それぞれの場面が、
「あるある!」と自分の日常とクロスするような感覚にさせてくれます。
Posted by ブクログ
短編集はついお気に入りの作品や順位をつけてしまいがちだが、この本はどの物語も例外なく心を掴んできた。温かくなったり、切なくなったり、心がじんとする感覚がたまらなく心地いい。自分の中で「手元に置いておきたい本」はいくつかあるが、その中でも、気負わずに、ふとページを開きたくなるお気に入りの一冊になった。
「キスに位置エネルギーが働いている」という表現、妙に納得できて思わず笑ってしまった。
Posted by ブクログ
くどうれいん
とてもいい。今回もよかった。
いかにもくどうれいん的なものもあれば、あ、書き方いつもと変えてる、と思えるものもあり、でもどれもおもしろかった。
ヨガのやつと最後のが特によかったなぁ、心の機微がうまく表されていて、書き手ではなく読者でしかない自分は「そうそう、あるのこういうどこにも行けないどうしようもない感情って」と感心してしまう。
スノードームの捨て方、をたいとるにしたのもいいよね、くどうれいんぽくて。スノードームというアイテム、それを捨てるという表現。
名久井直子さん装幀。誇らしいだろうなぁ。
歌人が書く小説。
とてもいい。
どんどん買いてね、全部読むから。
Posted by ブクログ
【スノードームの捨てかた】
表題作。
婚約破棄された怜香、一児の母さらさ、独身主義の絵美。
立場が全然違う3人が長くやっていけるのって、
お互いそれを気にしてないからなんだろうな。
それと集まれる場所と、家族の理解。
横浜の赤レンガ倉庫は冬になるとクリスマスマーケットをやるので
スノードームが大量に飾られている。
私は雪だけのスノードームは見たことがないけれど、
大きいとそこそこの値段するので、珍しいし売ると思う。
でも次見たら買っちゃうかも。小さいやつ。
【鰐のポーズ】
今までめちゃくちゃ素敵に感じていた人が、
ある時突然「え、こんな人だったの?」と思うことはある。
あるけど、主人公も同じ立場なのに何で嫌悪してるんだ。
自分は罪悪感があるのに、ようこさんにはそれがないから
また違う立場なのかな。
彼女は早く抜け出した方がいい。
ようこさんぐらい達観できないと、辛いだけだよ。
【川はおぼえている】
物語にしたくない、か。
私はどちらかといえば、何にでも意味を持たせたくなってしまう。
意味のあるものはいつまでも大切にできる気がする。
【背】
黒歴史というものが存在するとして、
それが自分の意思と関係ないところで起きたことだと
可哀想だなぁと思ってしまう。
黒木くんは美術館に行きそうなタイプに思えなかったけど、
本当に気が付いていなかったのかな。
本当に悪意もない行動だっただけに、彼も気の毒に思う。
【湯気】
まさくん、悪いことは言わない。
この人とは結婚しない方がいいと思う。
マリッジブルーっていうのもわかるんだけどさ、
そもそも「結婚したらつまんない人間になる」って
結婚する前に思っちゃうような人間は結婚しない方がいい。
しかもそれが、相手のせいだと思っている人とは。
日常生活を一緒に送る相手が穏やかであること、
毎日が平凡でつまらないことがどれだけ尊いものなのか、
それが分からない人と結婚すると苦労するよ。
だってここで「そっか、ごめんね。
君が入れたいならいいよ」って結婚したとして、
またしばらくすると「つまんなくなった」って言ってくるよ。
毎日見てたらそれが平凡になって、
またつまらなくならないって保証がどこにあるのさ。
それで事あるごとに「この人のしんにょう変だな。
僕はしんにょう我慢しながらつまんないって言われるのか」って
いつか思うときが来ると予想しています。
彼女は一生刺激を求めて生きていくタイプなので
よほど寛大な心で受け入れないと苦しむ時がくるよ。
【いくつもの窓】
織姫っていう額縁が本当にあるのか、検索してしまった。(ありません)
急に仕事を辞めてしまって、繋ぎでバイトはしているものの
自分に対する焦りがあるまま、物語は進んでいき、
祖父の絵を額縁に入れることで何かが始まるのかと思いきや、
何かが変わるわけではない。
人生がそんな劇的なものではないっていう終わり方がいい。
初めて読んだ作者さんだけどすごく面白かった。
湯気のページ数が少ないことに読み終わった後気がついて驚く。
バーっと、色々な気持ちが溢れてくるすごい作品だった。
Posted by ブクログ
くどうさんの短編集。正直、響いたのは本のタイトルにもなっている「スノードームの捨てかた」のみ。
他の話は終わり方がスッキリしなくて消化不良な感じ。途中のくどうさんらしさが見える比喩や、どうなるんだろうとワクワクする展開は面白かったけど、表題の作品以外に印象に残る話はなかった。
結婚して子どもがいると持ってる人、かぁ。確かにそう思われるのかもしれない。でも結婚している人は、ちゃんと独身の人生を手放している。どんな人生でもそれが私にとって正解だと信じて生きて行きたいし、他の人に対してもそう思える人でありたい。
Posted by ブクログ
表題作の「スノードームの捨てかた」と「湯気」、「いくつもの窓」が印象に残った。
「スノードームの捨てかた」は、三十歳のリアルな姿が描かれていて共感しやすく、少し余韻の残るラストが良かった。
「湯気」は、わかるようでわからない結婚前の男女の不穏さが描かれている。一件、仲睦まじく幸せなように思えるが、1つの大した欠点ではない部分に目を向けるとそれがとんでもなく大事のように思えるような感覚がわかりやすかった。
「いくつもの窓」の主人公はどことなく不幸せだ。自分にとっての理想と現実のギャップに苦しんでいる。そんな主人公が最後に平凡であることの穏やかさを最後に少し取り戻せたような気がして、読んでいて安堵した。