あらすじ
人類の歴史で、長らく「人間(man)」の代表とされてきた「男性(man)」。歴史、文学、医療、スポーツ。あらゆる領域で「標準」とされてきた男性像は、他方で、必ずしも男性一人ひとりの実際と重なるものではない。等しく強いわけでも自律的で自立しているわけでもない男性たちは、いかにして「男性」として存在させられてきたのか? 男らしさとは、そもそも性別とは何なのか? そんな「当たり前」を考え直すための最初の一冊。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
おもしろかった。今まで読んだことがある男性学の書籍からの引用が複数あり、あれのことだ!となったので、それだけ有名どころは読んできたのだと思う
なかでもおもしろかったのは3つほどある。ひとつは日本が働き方を変えられなかったのは、石油ショックを例外的に持ちこたえてしまったという指摘だった。欧米では石油ショックを機に男性主体の家計モデルを見直すことになったが、まだ脱工業化をできていなかったために長時間労働を頑張れば生産性を保ててしまい、結果として働き方の見直しにつながらなかったという点だった。これは別に日本優れているわけではなく、ただ欧米よりも産業構造の変化などが遅れたためだということがおもしろかった。タイミングの問題なんかい!
2つめは『剥奪感の男性化』だった。社会的な認知がないままで既得権益として無自覚に思い込んでいたものが失われつつあるように思えてくる。漠然とした不安や不調、『奪われている』と感じる剥奪の種類はいくつかある。この『剥奪感』は例えば韓国では20~30代男性が保守的な支持が多いということにも関わっていたり、この『剥奪感』はバックラッシュのひとつの要因ではないかと思う。とはいえアプローチがわからんのだよなー…どうすればいいんや…
3つめは現代日本の教育には『児童中心主義』が定着しており、子どもの主体性や個性を尊重するある意味進歩的なスタイルである。しかし保育者が子どもたちの管理を避けることで、一部の男子に権力が偏るという事象が発生してしまい、それがヘゲモニックな男性性につながるという
今まで男性学の本を何冊か読んでいたが、以上の3点については初めて見た指摘だった。な、なるほど…!と目からうろこだった
男性学の本はすでにいくつも出ているがボリュームがあるものが多いので、まずはこちらの新書から読んでみてもいいと思う
男性学の本を読むたびに思うのだが、女の私から見ても非常に抑圧が男性にもあり、『それ、つらくない?イヤじゃない?やめよう?』と言いたくなる
Posted by ブクログ
男らしさの定義が色々な角度から検証されていて面白い。
スポーツ選手は自由というよりトレーニングなどの管理下に置かれている、兵士は主体性より命令に忠実、アイドルは女性人気へのアプローチをしていると、それぞれの男らしさ間に矛盾があると。
あとは、多様性と言いつつ無意識に男性が優位になっている状況などはなるほどなと。例えば、女性も家事という勤めを果たしているのに、子育てに参加してイクメンと呼ばれ特別扱いになる的な。
いずれにしても、視点の切り口が面白く、学びになる。
Posted by ブクログ
イクメン など時代の変化に合わせることで男女同権につながるかと思いきやそれがかえって男性優位の立場を助長するという
一般的な男性を定義すると、仕事を持っていて、異性愛者で、、と実はその対象を限定していてそこに当てはまらない人はいないものとみなされてしまう
Posted by ブクログ
フェミニズムなどの女性系の本はちょこちょこ読んできましたが、こちらは男性についての学問の本です。男性とは?というところから始まって家父制度などまで色んな方向性から”男性”を見ている一冊でした。
この本でうちの父がいかに古い意味での”男らしい”人物だったのだなぁと読んでいて随所に感じられました。今では理論立てて物事を解決していく人を男らしいと思われると書内にありましたが、そうではなく、腕っぷしの強くて男は泣かず、泣くときには男泣きなタイプ。本当にこれ…。
達成か逸脱の問題も、前に別の本を読んだ時にも思いましたが、今回も正しくな!と中学生時代のおバカな頃を思い出して思ったのです。私もおバカだったかもしれませんが、頭のいい男子と、おバカな(ヤンキー含む)男子の差はここか。達成か逸脱か!そういうことか!と、再び膝を叩いたものです。
あと、男性特権というのがなるほどと思わされたことでもあります。入試の時に点数が低くても男性というだけで合格になるとかそういうやつか!と思うと「恨!」と思うべきものです。「男性特権なんてないよ」とか言う人に、男性が持っている特権について一つ一つ語って聞かせたいくらいです。
この中に「弱者男性」「インセル」「トランス男性」「男らしくない人」などなど、男として認められずらい(認められない)人たちも出てきますが、ほんの少し。ここに関してももっと詳しく読みたかった。と思いましたが、この本「入門」なので、それはぜいたくかな。と。
とても興味深い一冊でした。
Posted by ブクログ
男性学とその歴史について、ザザっと広く浅く紹介した本。
どこかで聞いたような話も多く、あまり新しい知見は得られなかった。
入門書だから…なのか?
男性学の歴史が浅く、そもそも著者も研究者ではないので、仕方がないのかもしれない。
…
本書には、もちろん家父長制(批判)の話が登場する。
家父長制と家族は表裏一体なので、資本主義を批判するのと同程度に、家父長制の批判にはどこか虚しさを感じてしまう。
個人的には、柔らかい家父長制…というか、家長が固定されないような家族制度の方が現実的な気がする(もはや、それを家父長制とは呼ばないのかもしれないが…)。