あらすじ
「弁護士に重要なのは切断の感覚や」先輩弁護士の口ぐせ通りに仕事してきた僕。自分と関係のないことには立ち入らず、世間と折り合いをつけてきたつもりだった。だが、見ないようにしてきた「壁」が周りに現れ……。コロナ禍を経て空虚さと軽薄さがますます溢れる都市生活の奥にほの見える、心動かされる一瞬を描く作品集。
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Posted by ブクログ
ニムロッドの作者の短編作品集。
片翅の蝶
大人が付くべき、優しい嘘について。
そして、なぜ人間に物語が必要かについて。
一方、その物語は必要なかったのかもしれないとも思う。子供に、そういう事実を教えてあげたっていいじゃないか。そういう気遣いが、世の中の見方を綺麗なだけのものにしてしまうのかも。
「少年の日の思い出」ヘルマン・ヘッセのエリオットの、大人版のようだ。
下品な男
下品な男は、最後に自分の物語を語った。
そしていなくなった。
幸せの形は一つだけど、不幸せな形は人の数だけある。上品の形は一つだけど、下品の形はさまざま。
想像力ある人間の方が、下品をより深みのあるものにできる。できてしまう。
関係のないこと
人が世界を切断してしまう瞬間について書かれていると思った。
主人公は、司法試験に落ちたあと、訪れた切迫感と恐怖に立ち向かうために、小谷との関係を断ち切ることになった。
(自分も、受験というあの切迫感から、あのとき、他者との関わりを絶ったのかもしれない)
関係ないって思うことだって必要だし、
関係ないことなんてないんだって思うことも必要だと思う。
人は、なんでも関係があるんだって思うと、社会にとって良いことをするようになる。
なんでも関係ないって思うと、自分にとって良いことをするようになる。
上手に選べば良いと思う。
主人公は、それが分かっていたんだろうな。
おそらくは、たぶん
生きていくことは、よりよくしようと言う社会に付き合うこと。あるいは、自然の摂理に付き合うこと。
人は、社会と見えない細い線で繋がっている。
たまに、その線を自分の元にたぐり寄せ、切断したくなる。
自然の摂理に付き合うことに疲れた小鳥は、突如飛ぶのを辞めてみた。
そうすれば、地面に真っ逆さま。
よりよくしよう、という社会との接続の時間が、
僕の中に澱を溜めていく。
それがあるから、明日も生きれる。
でも、ずっと持ってると腐ってしまう。
いつも、手放していかないといけないんだと思う。