あらすじ
春の宵につまむ鯛の刺身、秋には毎日のように食べた秋刀魚、冬の料理に欠かせぬ柚子の芳香……季節折々の食の楽しみと、それらが呼び覚ます思い出を豊かに描いた「味の歳時記」。フランス旅行で偶然出会った、江戸の面影を感じさせる居酒屋“B・O・F”への偏愛をつづる「パリ・レアールの変貌」など。食を愛し、旅を愛した大作家の、絶筆となった小説や座談会も収録した傑作随筆集。
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Posted by ブクログ
過日、書生だった佐藤隆介さんが亡き師を思い、味を再確認するエッセイを書かれた本を読んだ。
これは、池波正太郎氏がエッセイを書き、まとめたものです。
第一部 味の歳時記
タイトル通り、一月から十二月までの、旬のものを扱ってまとめたもの。読みながら、その料理を思い描き、口中に唾が出る。
第二部 江戸の味、東京の粋
食を通しての書く著名人との対談をまとめたもの。
作家の山口瞳氏との対談は、考えさせられるものがある。122ページの、池波氏の言葉が忘れられない。
第三部 パリで見つけた江戸の味
パリへ取材を兼ねた旅行でのあれこれ。同行者や、パリ在住の日本人写真家とのやりとりが楽しい。中でも、写真家が紹介してくれた酒場〔B・O・F〕のことが多く語られる。
老亭主と奥さんとで切り盛りする酒場を、池波氏は『まるで、むかしの東京の下町になったような』と表現する。それほど、気に入ってしまい、パリ滞在中に四度ほど訪れている。
最後に、この酒場をモチーフにした短編小説と絶筆小説が掲載されている。愛していた酒場〔B・O・F〕は、読んだものに強い印象を残してしまう。
この酒場名は『忘れられたる佳きフランス』というような意味だと、作中に書かれているのもまた、印象深い。