【感想・ネタバレ】祝祭のハングマンのレビュー

あらすじ

法が裁けないのであれば、誰かが始末しなければならない――

警視庁捜査一課の瑠衣はゼネコン社員の不審死を追うが、自身の父にも疑惑の目を向け始め…。予想を裏切る衝撃のミステリー!

解説・中江有里。

単行本 2023年1月 文藝春秋刊
文庫版 2025年5月 文春文庫刊
この電子書籍は文春文庫版を底本としています。

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Posted by ブクログ

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パイセン本。

中山七里著『祝祭のハングマン』は、法の網をすり抜ける悪を裁く「私刑執行人=ハングマン」という、ダークヒーロー的存在を核に据えた作品である。その設定は単なる勧善懲悪の枠を超え、人間の心に潜む復讐心や正義への渇望を鮮やかに照らし出す。主人公たちの姿は、理性と激情のはざまで揺らぎながらも、許されざる者を断罪するという一点に収斂していく。その過程は倫理観を鋭く突きつけると同時に、読む者に強いカタルシスをもたらす。序盤の静謐な展開から、後半にかけての昂揚は見事であり、闇に潜むハングマンの存在が現実に顕現したかのような迫力を放つ。正義と悪の境界が溶解する中でなお、人はなぜ「裁きたい」と願うのか――本作はその根源的な問いを私たちに突きつける。重厚なテーマと緊張感ある筆致により、ダークヒーロー小説の醍醐味を存分に味わえる一冊である。

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2025年08月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

てっきりハングマンを捕まえる刑事の話かと思い、スッキリした終わり方を予想していたのですが、全く違っていて驚きでした。
ですが、倫理観と正義感のある主人公が、殺人犯という全く逆の行為を行うに至った心情が中々細かく描かれていてとても良かったです。殺害を決めた後も何度か揺れ動く気持ちも、その事に対して優柔不断だと嫌悪する気持ちも、殺害により達成感や喪失感が同居する感覚、殺害後の虚無感…きっと普通の人間が復讐で殺害したとしたら、こんな気持ちなのかもしれないなと追体験させられた気分になります。
実際、私が主人公ならば、復讐を取るかもしれないと考えてしまったから尚更です。非常に不快で、そんな気持ちにさせるこの本はやはり凄いのだとも思います。
何度も自分の信念を捨てて、決意を固める事は辛いと思うが、きっと復讐後の方が重く辛いのではないかと思います。警察という場所にいるなら特に、自分は警察官としても人としても外れた事をしている罪悪感と、今までの自分では無くなった喪失感で潰されてしまうのではないかと予想します。
誠也は望んでいない結末であっただろうとは思うのだけど、もしも法で裁けないと分かっていたら、目の前に今なら復讐できる機会が転がっていたのなら、きっと多くの人が手を伸ばしてしまう気がするのです。
倫理観は、親しい人を奪われた憎しみに比べればと軽い様に思いました。
ただ、ハングマンさえ現れなければ、彼女は憎しみの中でも警察官でいられたかもしれないので、ハングマンが正義のヒーローにはやっぱり見えません。

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2025年05月31日

Posted by ブクログ

ネタバレ

解決困難な事件を主人公が見事に解決に導く、というようなこれまでの中山七里さんの作品とは違って、解決しないまま主人公が復讐をする。今までとは違った新鮮な作品でした。

口コミでは主人公の瑠衣に魅力を感じないとありました。確かに他の作品の主人公は、複雑な過去を持っていたり、猪突猛進な性格であったりなどはなく、まだ未熟なキャラクターだと思いましたが、その人間味のある性格が作品に感情移入させてくれたと感じます。

普通の生活のちょっとした描写が、父親が亡くなってしまったのだと実感させられ、切なさにうるっときました。

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2025年05月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

犯人、事件の起きた深層を探っていくストーリーが多い中、これは違った。
被害者遺族でもあり、刑事でもあり、ストレスを持って揺れていく主人公。
展開は面白い
けれど、もう少し掘り下げて欲しい部分もあったかな。共感できないまでも、この人物に寄り添える、もっと追いかけたいといったものがなかった。

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2025年08月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

父親を殺された女性刑事が元刑事の私立探偵と共に復讐する話。といいつつ復讐するまでの過程が長すぎて途中まで正統派の警察小説だと思ってた。いわゆる「法の代わりに我らが裁く」的な勧善懲悪ものなのでそれなりに面白かったけど、システムに侵入してうんたらかんたら、ってちょっとありがち過ぎてちょっと物足りなかった

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2025年08月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ストーリーとしては面白かった。会長に対して刃を突きつける場面は、ヒーローが怪獣を倒すなんて洒落た演出だと思ったし、悪いことした奴に対して被害者家族がきちんと復讐する構図が描かれている。

司法には委ねられない。国がやらないなら自分でやる、“私刑”というやり方でしか悪に立ち向かえないところに、モヤっと感が残った。

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2025年08月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

中山七里といえば、私の中では東野圭吾と並んで凄いリーダビリティの作家です。それがたとえ個人的にはイマイチと感じる作品であったとしてもグイグイ読まされるのが常だったのに、なぜか本作は読むのに異様に時間を要してしまいました。

角川文庫の字の大きさが私に辛くなってきているのかしらと思うけれど、主人公のことがあまり好きになれなかったのがひとつの理由かと思います。

毎度最後の最後に驚かされるドンデン返しもなくて。というのか、えっ、彼女がそのまま仕置き人になるのねという展開は逆に新鮮か。道徳観を振りかざされるよりは良いかもしれませんけど。

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2025年06月26日

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