あらすじ
戦争をなくしたい。兵器のない世界をつくりたい。でも、自分だけ先に武器を手放してしまったら、他の国に侵略されてしまうかもしれない……。そんなジレンマのなかで戦争と平和を繰り返す、世界の国々の力関係を読み解きます。 【目次】第一章 世界の力関係はどう変わってきたか――帝国と主権/第二章 帝国の出現を防ぐ手立てとは何か――勢力均衡/第三章 世界大戦はなぜ起こったか1――脆弱性による戦争/第四章 世界大戦はなぜ起こったか2――機会主義的戦争/第五章 国連はなぜ機能しないのか――集団安全保障/第六章 核兵器はなぜなくならないのか――核抑止/第七章 戦争はどう終わるのか――戦争終結/第八章 人類はまた大戦争を引き起こすのか
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Posted by ブクログ
やられる前にやる? 勝てそうだからやる?
戦争が起きる理由がわかれば、平和に一歩近づける。
これからの世界を生きるための国際政治学入門。
戦争をなくしたい。兵器のない世界をつくりたい。
でも、自分だけ先に武器を手放してしまったら、
他の国に侵略されてしまうかもしれない……。
そんなジレンマのなかで戦争と平和を繰り返す、
世界の国々の力関係を読み解きます。(紹介文より)
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さすが中高生向けの新書。
タイトル通りの内容で、とても分かりやすかった。
結局世界はジレンマの関係性で成り立っていて、
理想論ではなく、抑止力により行動のバランスがとられていて
「みんなが武器を捨てたら、核をなくしたら、平和になる」は現実的ではないことがとてもよく分かる。
そんな中でも平和を持続させるために、
世界はパワーバランスをなんとか保とうとしている。
日常の簡単な世界に関する疑問の答えのようなものがたくさんあった。
・「集合行為問題」…部分部分による合理的な選択の結果、全体として不合理な結果に陥ってしまう。「囚人にジレンマ」がまさにそう。
・「囚人にジレンマ」の解決策は、命令できる第三者がいること。国はそうで、強制力をもって犯罪を抑止したり、税金を徴収したりできる。ただし、世界にはそれがない。国連は世界政府ではない。
・国連が機能しない理由は、集合行為問題がはたらくから。また集団安全保障は「みんなが平和に対して協力してくれるであろう」という理想論の上に成り立っている。1か国でも反対すれば機能しない安保理のシステムも、国連が動けない理由。
・ただ無意味かというと、国連があることで、第三次世界大戦という大惨事を防いでいるともいえる。集団安全保障に期待しすぎず最低限の枠組みとして必要。
・核も一緒で「世界が平等に核をもつ「恐怖の拡散」よりも、不公平だが核兵器を独占する国をの数を絞る「恐怖の独占」のほうがマシ」というのが現状。
・戦争の終結は「紛争原因の根本的解決」か「妥協的平和」のどちらかしかない。それを決めるのは優勢側が「将来の危険」と「現在の犠牲」のどちらをとるか。
・アメリカが世界の警察をやめた今、日本も無関係ではいられない。
・
Posted by ブクログ
タイトル通りの内容。わかりやすい。
中高生向けということで、シンプルだし、ラフな文章になっているからドンドン読める。
しかし内容は現実的でかなりシビア。
単純に平和を望もう、戦争反対みたいになってないのが面白く、そして考えさせられる。
ロシアとウクライナ、ガザイスラエル、の事にも触れていて、簡単に答えを出していないのも良い。
そうはいっても中高生に向けてという本であれば、最後のまとめは(悲しいけど現実的だけども)もう少し『平和』を唱え続けることの重要性も強調して欲しかったかも。
Posted by ブクログ
非常に読みやすい一冊。
文中、随所で“中高生向け”と出てくるが、10代に分かりやすく説明することが一番難しく、平易な言葉遣いで要点を外さず、筋を通していることが求められるので、それが出来ている点で、良書と言えるかもしれない。
日経書評で見かけた一冊だったが、書評子も「理論的視点が明快に示され、ビジネスパーソンにも大いに学びになる」と書いている。良い本は世代を選ばない。
学生時代や若いころ夢中になった国際政治の分野だ。その勢力バランスを、昨今のキナ臭い世相を反映させて、力、要は「戦争」を軸に読み解くもの。
その国家間の関係には「直感に反する理屈」が存在するとして、合理的な個々の判断が不合理な結果を生む「集合行為問題」にあるとし、その発生の因として①脆弱性によるものと、②機会主義によるものがあると分析、それぞれを因に発生した戦争(二度の世界大戦など)を例に、その終結の方法や、抑止力について解説していく。
今現在(2025/5末)継続しているロシア・ウクライナ戦争、イスラエルのガザ侵攻なども俎上に上がる。
ロシアは、第一次世界大戦の各国のように、「相手に対して手を出さなければ弱みを抱える自分がやられるという恐怖から、戦争に入っていかざるをえなかった」と「脆弱性による戦争」の端を開いたとするが、いやいや、ロシアが怖がって先に出を出してくるように、その不安をNATOはじめ西側が煽りつづけていたからではないかい?
あるいは「機会主義」という点では、国際的な抑止がないと見て、機会を取ったのがロシアによるクリミア半島の占領であり(2014年)、本書でいう「ミュンヘンの教訓」をその時、なぜ西側は活かさなかったのかも含めて考えていく必要がある。
という複合的なことまで考えていくと、中高生向けではなくなるので、そこはいろんな情報に触れ、大人が考えて、よりよい出口を探っていかなければならないのだろう。
国際関係の構造、戦争発端の原因、抑止の考え方など、様々な例を挙げるが、それをどう組み合わせていくかが、現代は非常に難しいと改めて思う。核による抑止も、それがあることで第三次世界大戦が“今は”起こっていないとするが、果たしてそれもどうなんだろうと思う。
戦争終結の二つのかたちも提示される。①紛争原因の根本的解決か、②妥協的平和か。
昨日(2025/5/26)、ロシアはキエフに開戦以来最大規模の空爆を行ったとニュースになっていた。
ロシアの求めるのは、間違いなく①だろう。キエフを占領して自国領土としたいわけではない。現政権、ゼレンスキーを退陣させること。
根本原因の排除が最終目的であることは、当初からブレていない。
Posted by ブクログ
読んでいるうちは理解していてもまた読み終わったら忘れていってしまうのですが。
それでも中高生向けの内容とのことでした。
安全を保障する国際体制には、
最悪を防ぐ、という動機がまずあるということに強く気づかされました。
小国が被害を被ることは最悪ではなく、大国の論理であり、その歴史を知ることはとても大事だなーと思いました。
力関係の変化
①近世以前の帝国:力の強い国が他の地域を征服していく
②近代の主権国家システム:一部の国同士で対等な関係に立ち、戦争は認められる
③現代の主権国家システム:世界のすべての国同士で対等な関係に立ち、戦争は認められない
現在の国連による集団安全保障体制が第二次世界大戦後にでき、
今の国連の体制が機能不全というけれど、
最悪の事態、つまり核保有国間の戦争を回避することが第一目的であると知ると、その役割を今のところは果たしている、ということが分かった。5常任理事国の拒否権は批判されることが多いけれど、大国に対しては集団的な対応を取りえないという、「ブレーカー」のようなものだ、と論じられていた。
加えて核保有大国がお互いに核報復能力を持つことで、核の打ち合いになる可能性が下がるという点で両者の関係は安定するように見えるけれども、実は「限定的な紛争」が起きやすくなり不安定化する「安定・不安定のパラドックス」があり、これが現在の状況だという見方を知った。
つまり、ロシアは核を持たないウクライナを侵略していて、NATOはロシアがもし核を使用すると核により報復する可能性を示唆しているため、核戦争の抑止にはなっているが、それ以下のレベルでの侵略や攻撃は許容されている。
そして、戦争終結のジレンマについて、著者は、現在の犠牲を抑えることを主眼とする「妥協的平和」と将来のリスクをつぶす「紛争原因の根本的解決」という二つが天秤にかけられているというレンズを導入されていましたが、
これも、国際政治上の国の立場によって異なってきそうだなと思った。
とにかく最悪の事態を避ける、ということに焦点をあてているのが核抑止を含めた今の安全保障体制ということ。そしてそれは、非核保有国や市民の求める「平和」、つまり人道的観点で、人命の犠牲を避ける、という要求とずれが生じるのは明らか。
簡単に人間や社会を破壊できる技術があり、人口が増加し、だれもが世界各地に移動できる手段を得た今、それに対応するルールを作ってきたようだけれど、
戦後80年経ち、いろいろと世界の状況も変化している中で、大国間の戦争を避けるだけでは実際の平和とは言えないのではないか、という規範や実践も進められている道半ばの時期なのかなーと思った。
一方で、著者の指摘では、
ロシアがウクライナを完全に制圧したら、あるいは中国が台湾を侵攻したら、
現代の対等な主権国家体制が変わることも考えられる、帝国の時代の復活もありうる、とも述べられている。
力による一方的な現状変更が常態化すると、国連体制による集団安全保障で止めることはほぼ不可能になり、勢力均衡で対応していくことが考えられる、とのこと。
相互確証破壊の能力を持つ国が3か国以上出てくると、バランスが崩れ、軍拡が起こる、という核の安全保障のジレンマもリアルな状況だなーと思った。
でも集団安全保障は勢力均衡と違って国家間の力のバランスに頼らず、グループ全体で侵略行為を止める、という仕組みにしたということだけれど、核保有国間では勢力均衡がいまだ働いているということなのかな。
イラク戦争時はアメリカは国連の安保理決議の枠外で反撃を開始したというようなことが書かれていたけれど、そういった傾向が益々強まっているということかな。そうしたら、周囲の中小国としてできることは、集団安全保障体制の決議案を経ていない動員には協力しない、賛同しない、ということなのかもしれないけれど、結局大国から距離が開くほどに、許容される限定的な戦争の犠牲になる、つまり見放されるジレンマがありそうなので現実的にはなかなか難しそう。
世界は核保有大国が支配しているんだなーと思った。