あらすじ
富山の刑務所で作業技官として働く倉島英二。ある日、亡き妻から一通の手紙が届く。そこには遺骨を故郷の海に撤いてほしいと書かれており、長崎の郵便局留めでもう一通手紙があることを知る。手紙の受け取り期限は十二日間。妻の気持ちを知るため、自家製キャンピングカーで旅に出た倉島を待っていたのは。夫婦の愛と絆を綴った感涙の長編小説。
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Posted by ブクログ
倉島英二
刑務作業をする受刑者たちに木工を教える指導員。定年後に嘱託として再雇用される。洋子の散骨のため、キャンピングカーで長崎へ向かう。
倉島洋子
英二の妻。悪性リンパ腫。余命六ヶ月を宣言され、亡くなる。元歌手で、刑務所慰問をしていた時に英二と知り合う。
杉野輝夫
キャンピング仕様に改造した紺色のハイエースワゴンに乗る車上荒らし。元女子高の国語教師。
田宮裕司
北海道の物産展で「イカめし」を出店するため日本を回っている。自宅で妻が浮気をしているのを目撃する。
美和
田宮の妻。
南原慎一
年齢は上だが田宮の部下。過去に何かを抱えている。倉島に船が見つからなかったら、大浦吾郎に相談しろと伝える。
大浦卓也
薄香の若い漁師。奈緒子と来月結婚の予定。
濱崎奈緒子
卓也の婚約者。父を海で亡くした。
濱崎多恵子
奈緒子の母。薄香で唯一の食堂を営む。夫が海で遭難して行方不明になって以来、奈緒子を一人で育てている。
大浦吾郎
卓也の祖父。散骨のために船を出す薄香の漁師。
塚本和夫
富山刑務所の総務部長。階級は矯正副長。英二の後輩。
塚本久美子
和夫の妻。
笹岡紀子
NPO法人遺言サポートの会のスタッフ。洋子から託された手紙を英二に渡す。一通は直接、もう一通は薄香郵便局の局留め。
Posted by ブクログ
いずれ夫婦のうちのどちらかが先にこの世を去ってしまう。
先立つ側が何を残し、遺された側が何を受け取るか。
別れの悲しさの中に、倉島夫妻のお互いを想う気持ちがぎゅっと込められていて、胸が苦しくなったり温かくなったりと、情緒が揺さぶられる。
私の何となくの理想は散骨だったけれど、遺族の負担は結構大きいのだと知った。(亡くなった人の骨を砕いて粉々にしなければならないという心理的な負担と、船を出して海に撒かなければならない身体的・時間的な負担)
でもその旅を通して、最初の章では点でしかなかった色んな人たちの人生が、線になって繋がっていく様子は、洋子が遺した奇跡なのだと感動した。
最後に倉島さんが到達した境地(命を大事に生きることは、時間を大事に過ごすことだということ)は、今後の自分の人生においても大切にしたい。
死んだ後に遺すものも一世一代のことで大事だけれど、その前に一緒に過ごした時間の中に光るものがあるからこそ、その人への気持ちがきちんと伝わるのだと、この話から学んだから。