あらすじ
推理作家ミセス・オリヴァが押しつけられた奇妙な謎。それは十数年前に起きた心中事件は、男が先に女を撃ったのか、あるいは女が男を先に撃ったのか、というものだった。困り果てたオリヴァから相談を受けたポアロは「象のように」記憶力のよい人々を訪れ、過去の真相を探る。著者晩年の傑作。
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Posted by ブクログ
ポアロシリーズあと2冊。小説家が集まる昼食会に出席したオリヴァ夫人。見知らぬ夫人・ミセス・バートン・コックスが話しかけてきた。「あなたが名付け親のシリヤの両親が心中した事件覚えている?母親が父親を殺したのか?それとも父親が母親を殺したのか?」という質問。オリヴァ夫人はポアロに真相を依頼する。オリヴァ夫人、ポアロは関係者に話しを聞く。シリヤの母親は【ミステリーでは禁じ手?】であった、そうきたか!ポアロが登場するラストストーリーで若干納得いかないものの、完成度は高く、楽しめました。次回がラストポアロ(泣)⑤↑
Posted by ブクログ
ポアロものでも、オリヴァがでてくるのは安心して読めます。
オリヴァが、ある意味、アガサクリスティの分身でもあり、
作家生活について表現したいことが、ところどころで本音として現れています。
物語は、悲しいお話ですし、一卵性双生児についてと、精神病に関する記述では、
妥当性について考えさせられるところもありました。
アガサクリスティが人間性を大事にしているということが分かっていて読めば問題がないですが、
誰の作品か分からずに、この本だけを読むと、よい印象を持たない読者もあるかもわかりません。
ファンの目と、通りすがりの読者の視点の違いが気がかりです。
ただし、「象は忘れないが、人間は忘れる」というのが大事な伝言だと思いました。
つまらないことを忘れる能力が、人間が大事なことに集中できる力なのだと。
Posted by ブクログ
あらすじ
十数年前、とある夫婦が心中します。
その夫婦の娘が婚約するにあたり、相手の養親が心中事件の詳細を知りたがり、紆余曲折をへてポアロが調査することになります。
感想
十数年前におきた心中事件がテーマで、新しい事件が起こるわけではありません。
また、当時の関係者の話を聞いていく、という地味な展開のため、退屈してしまう読者もいるかもしれません。
私はこの落ちつきが嫌いではありませんが。
事件の真相は、"家族愛"だと思いました。
精神障害と遺伝に強い相関があると思われていた時代。
夫婦は真相を隠すことで、姉を守るだけではなく子供たちも守ったのではないでしょうか。
Posted by ブクログ
クリスティの長編ミステリー。ポアロシリーズ。相棒はオリヴァ夫人。
冒頭のオリヴァ夫人の葛藤はクリスティのそれを反映したものだろう。スピーチへの嫌悪感や分別の無いファンへの煩わしさというのはとても共感を持てる。売れっ子作家としての人生は本人達でなければ気づく事は出来ないが、様々な苦労があるのだろうと勘繰ってしまった。
今作は作中でも触れられているが「五匹の子豚」と対をなしているイメージだ。過去に戻りながら事件の真相に辿り着くという一連は、どちらにも共通しているテーマだ。
今回珍しく幾つかの作品に触れられており、上記作品と「マギンティ夫人は死んだ」、「ハロウィン・パーティ」についても簡単だが言及がされている。ネタバレ等はないが少しヒントが出ている為未読の人は注意が必要だ(五匹の子豚はだいぶ言及されている)
結婚を控えた若い二人の男女。男の継母がオリヴァに近づき(オリヴァが女性の方の名付け親だった為)息子の相手の両親が拳銃で死んだ事件について根掘り葉掘り引き出そうとする。オリヴァは娘の母親と面識はあるが、当時、オリヴァが海外にいた為、事件の真相はわからず、更には警察などでも詳しい内容の究明がされないまま、自殺という事で決着した。オリヴァはなんとか継母から逃げ仰せたが該当事件の真相が気になりポアロに相談する。
クリスティ作品でありがちな全く事件に関係無さそうな手掛かり(夫人の四つのかつら。かつらを四つ持っているのは違和感。飼っていた犬が夫人に噛み付いた事。愛犬は警察よりも賢いというポアロの皮肉が印象的)を皮切りに、警察に保管されている当時の資料や当時事件に関わった人達への聞き込み等(オリヴァ夫人も活躍!!)を繋ぎ合わせ、ポアロが悲しい事件の真相に辿り着く。
クリスティ作品は古典にあたり、現代と表現や感覚、考え方が難しい部分がある。今回、事件の真相には一卵性双子の入れ替えが関わるが、彼女達の遺伝的な考え方や過去の殺人についての姉への処遇等について、理解が難しい部分が多い。
一方で、若き娘シリヤの両親や家庭教師ゼリーが家族愛に溢れ、全てが報われないドロシアへの愛故の行動である事は、シリヤへの救いであり、シリヤの相手であるデズモンドの継母の怪しげな行動についてもデズモンドの実母から多額の遺産が入り、それが原因であるという事も作中では真実として知る事ができ、読者としては物語通して納得のいく物語だった。
クリスティ作品は意外にコッテリした味付けが多く、最後真相究明後、家庭教師とポアロがその場に留まって会話をしていたため、残りページは全くないながらももう一つ変化があるのかと期待してしまった。悪い癖だ(笑)出来栄えは「五匹の子豚」に軍配が上がると思うが二作連作で読むとそれぞれ何倍にも面白さが膨らむ様に思う。
「象は忘れない」の諺は教訓になるだろうが、知らない人から見れば「サファリに象狩りに・・・」となるのだろう(笑)
Posted by ブクログ
過去の事件の真相を探る本書は当時を知る「象」たちに話を聞いていくことでストーリーが展開される。昔の記憶はバラバラなところもあるがそれを結びつけていくと浮かぶ真相。ポワロやオリヴァの少しずつ過去を解き明かす様子が良かった。真相自体は途中からとても想像しやすいものであるが、大切なのはそれを当事者たちがどう受け止めるか、そしてこれから先どう生きていくか。過去を通して自立していく心温まるストーリーだった。像は忘れないが、人は忘れることができる。忘れていくこともまた大切なのだと感じた。
Posted by ブクログ
読むきっかけは、最近読んだミステリの解説の中で、ミステリ作家たちが長編小説の傑作は『象は忘れない』で意見が一致した、という文章を読んだこと。
今まで読んだポアロの中で一番情報を汲み取るのが難しかった!!
十年以上前の事件の真相について、当時関わっていた人たちに話を聞いていくのだけど、話し手は自分がそう思いたいと考えていることを事実として記憶しているので、
出てくる人の話がある事実においてはこうだけど、別の人によるとこうだ…みたいな感じで、事件についての情報がかなりとっ散らかっているように見える。
だけど最後の種明かしの場面では、「象」たちが話したことがシンプルな真相にきれいに収束していって、読み終えた後は感慨深い気持ちになった。
事件の真相を知った上で読み返せば、推理小説としてはもっと楽しそう。
あと最初はすごく読みにくかった…翻訳が古いのかな?と思ったけど、古さよりはミセス・アリアドニをはじめとする登場人物の会話のせいかな思った。
会話って文字に起こしてみるとかなり散らかっているので、こういう読みにくさも意図的なんだろうな…
また、クリスティーの晩年の作品を読んだのも初めてだった。
作中に出てくる年代が1970年代で、「え!最近じゃん!?」と驚いた。
今まで読んでいたクリスティーは戦前のものが多かったので…
作中に出てくる『五匹の子豚』も気になる。近いうちに読もう。
あとシリヤとデズモンドの二人がよかった。
ポアロが、シリヤには「幸福になる素質」「勇敢さ」があると言っていた。
この二つって人生を生き抜く上でとっても大事なことなのでは、と20代中盤を過ごしていて感じてきている。
Posted by ブクログ
「五匹の子豚」のような過去の真相を探る系ストーリーだが、五匹の子豚ほど容疑者がいないので犯人ダービーの盛り上がりはイマイチ。また、双子が出てきた時点で真相はある程度察してしまう。事件の前段階でもう少し何とか出来たのでは?という感想になる。