【感想・ネタバレ】夜の道標のレビュー

あらすじ

1996年、横浜市内で塾経営者が殺害された。
事件発生から2年、被疑者である元教え子の足取りは今もつかめていない――。
殺人犯を匿う女、窓際に追いやられながら捜査を続ける刑事、そして、父親から虐待を受けている少年。
それぞれの守りたいものが絡み合い、事態は思いもよらぬ展開を迎える。

日本推理作家協会賞受賞作。(解説)山田詠美

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Posted by ブクログ

ネタバレ

父親に当たり屋をさせられている小学生「橋本波瑠」
波瑠の同級生の「桜介」
過去にお世話になった塾講師を殺害した疑いで逃げ続ける男
学生時代その男に密かな恋心を抱いていた「長尾豊子」
二年間行方が知れない殺人容疑の男を追い続ける刑事「平良正太郎」と「大矢」コンビ

それぞれの視点で描く物語。

殺害の動機は障害を持つ男が親の身勝手で不妊治療をさせられ、子供が出来なくさせられていたことによる悲しい真実。
旧優生保護法という現在では人権侵害ともとれる法律が関わっていた。

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2025年12月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

4人の視点から物語は進んでいく。
父親の命令で危険な行為に手を染めざるを得ない橋本波留。そんな波留を放っておけず、友情を寄せる同級生・仲村桜介。人望ある塾講師が殺害された事件を追う刑事・平良正太郎。そして事件の鍵を握る過去を抱えた女性、長尾豊子。
この4人の物語が少しずつ絡まり、気付けば大きなうねりへと変わっていく。

その中心にいるのに、自分の視点では決して語られない男・阿久津弦。

1996年に起きた塾経営者殺害事件。通常の学校では居場所を見つけにくい子どもたちを受け入れていた個別指導塾・戸川塾。幼少期に阿久津はそこに通い、事件当時は35歳だった。目撃証言から犯人とされたが、嘘がつけず、曖昧な質問には答えられない彼が、どうして道標のような存在だった先生を殺めてしまったのか。その気持ちが知りたくて、ページを捲る手が止まらなかった。

物語の背景には、旧優生保護法や「不幸な子どもの生まれない運動」という、今では信じられない人権侵害が色濃く影を落としている。当時はそれが“正しいこと”として推奨されていたという事実に、胸がざわつく。登場人物たちが口にする言葉を前に、完全には同意できないのに、どこか理解してしまいそうになる自分がいて、それもまた苦しかった。

誰かひとりを「絶対悪」と切り捨てることができない物語だと思う。だからこそ、どうしようもない切なさが込み上げる。
ニュースでは決して表に出ない、それぞれの人生や背景がそこにはあって、本人の了解なしに物事が決められていく残酷さが痛いほど響く。罪は罪として重いのに、ただ裁いて終わりにできない。

読み終えて残ったのは、不幸な生い立ちを背負った登場人物たちが、どうかせめてこれからは幸福に向かって歩けますように。そんな祈りのような気持ちだった。

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2025年12月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

塾講師戸川勝弘が殺害された。
被疑者の阿久津弦は行方不明。

バスケ部で同級生の仲村桜介と橋本波留。
波留は父親の指示で当たり屋をして生計費を稼いでいた。

スーパーで働く長尾豊子、たまたま会った同級生阿久津弦を家に匿うことに。

それぞれの登場人物別に物語が進んでいって、どう交わっていくのか期待しながら読み進める。

食事に困った波留が猫に導かれたどり着いたのが阿久津が匿われている家の庭。そこで窓越しに波留から食べ物をもらううちに、自分が当たり屋である事を話すように。
二人で初めて家の外で会い、それが波留の父親に見つかり当たり屋の見本を見せろとしらしめるために阿久津が父親に車でぶつかる。
それが事件になり日光に向かう途中でパトカーに囲まれて捕まってしまう。

阿久津は幼い頃に親に避妊治療を受けさせられた過去がある。波留も父親から当たり屋を強いられている。
2人とも親からの虐待の被害者であり、暗く重い話だった。
重い話の中でも阿久津の優しさがみえて切なくなった。
阿久津は本当に戸川を殺害したのか、警察に捕まった後どうなったのか…匿っていた長尾はどうなったのか…気になる。

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2025年10月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

新進気鋭のイヤミス作家というイメージから読み始める。
4人の視点から変わる変わる描かれる日常風景に「一体どういう系統の話なんだ…」と困惑気味だったが、中盤になり話が見えてくる。

大きなトピックは殺人犯の阿久津を匿う豊子と父に当たり屋をさせられている波留の2つ。
これが最後、どう収束するのか期待したが若干のご都合主義な感じもあるがそこそこ面白かった。

波留と同級生の桜介が彼を救いたい気持ちとは裏腹に無力で親や先生を頼らざる得ない行動や逆鱗に触れる発言がリアル。また、殺人犯の阿久津の人間性の欠落した受け答えも心に残る。

まあ、インパクト薄めの話なので多分忘れちゃう部類の小説ではあるが…。

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2025年12月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

芦沢さんの本は初めて。スケールは大きくないがよくまとまっていた。最近犯人当てのものばかり読んでいたが、こういった動機を探るストーリーに、過去の優生保護法の暗闇を重ねた展開が重みを与え、こんな小説もいいなと思えた。当たり屋ケンちゃんのような小学生のパートは、構成としての脆さもあるし、警察側の深堀りは今一つだけど、全体として読み心地は悪くはなかった。タイトルは、あ、こういうことだったのかと思わせることで秀逸。

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2025年11月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

刑事が職場で冷遇されているという設定、阿久津を匿う女は物語上必要不可欠だったのだろうか?
2人の性描写は阿久津が強制不妊施術を受けさせられていたことの伏線でもあると思うけど、生々しさが少ししんどかった。
桜介も小学生と思えば不自然な言動ではないだろうけど、友情というかもはや執着に近い気がする。

語の根幹に関わっている旧優生保護法という重いテーマも、扱いきれているのかよく分からない。

阿久津と波留の関係性は良かった。

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2025年11月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

重っ、
だから、時代が1996年だったのかあ
最初1996年と2020年代が交互に出てくるのか?と思ったわ

今で言う、発達障害なのかなー
現代だったら確かに不妊手術っていう話にはならないだろうね。

これからも各々の人生は続く、っていう終わり方だったな。
阿久津は罪に問われて、
母親も本人の同意なしにそんな手術をしたのはなんらかの罪なりそうだし、
阿久津が悪気なく話しちゃえば豊子も匿ってた罪になるし(てか豊子自分から警察行きそう)、
波瑠は父親と向き合わなきゃいけないし。

怒りが母親ではなく戸川に向いたのは
母親は絶対的存在的な、自分を無条件で愛してくれる人、そして自分にとっても大切な人(殺す対象ではない)っていう潜在的なものがあったからなのかなあ
なんか会話の端々なそういうのを感じた気がする(曖昧)
それか戸川が「お母さんのせいじゃない、僕のせいだ」って言って、殺させた?

いろんな考察読もーっと。

追記。
中野にあるネズミみたいなカンガルーみたいな滑り台、気になって調べたら、確かにネズミみたいなカンガルーでした。

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2025年10月12日

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