【感想・ネタバレ】大災害と法のレビュー

あらすじ

地震、津波、台風、豪雨、噴火など、毎年のように日本列島を襲う大規模災害。なぜ国、自治体の対応は遅いのか。どうして被災者に救助の手が届かないのか。東日本大震災を経たいま、災害に関する複雑な法制度をわかり易く解説した上で、その限界を明らかにし、改善策を探る。被災者のために、法は何をなし得るのか。

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Posted by ブクログ

長年,災害問題に真摯に取り組む津久井先生のご著書。災害法が果たすべき使命は「被災者の救済だ」と力強く説く本書は,はっきり言って,「名著」です。平易,冷静に,かつ,問題の本質を的確にえぐり出す筆致の中から,著者の「熱い想い」が否応なく伝わってきます。
「法は人を救うためにあるはずだ」。この確信に満ち,そして,人間愛に充ち満ちた一文に,どうか,一人でも多くの人が出会えますように。是非,多くの人に本書を手にとって欲しいです。

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2012年09月18日

Posted by ブクログ

国内の災害史とそれにより発生した社会問題、そしてそれを解決する手段として法が制定されてきた経緯を学ぶことができよかったです。それぞれの法の目的とするところや責任の主体について、そもそも法律とはといったところや、さらにもっとルールを策定し実行することの要点についても勉強になります。

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2019年08月16日

Posted by ブクログ

法の運用が現場ではいかに縮小して、前例主義的に行われてしまうのか。もっと法の精神を活かさなければと思う。それにしても一口に災害と法と行っても実に多面的で広範囲にわたる。

復興基本法としての日本国憲法という考え方は新鮮だった。

・災害対策基本法で情報伝達は現場から国へという方向になっているのは時代錯誤。
・災害関連死にも弔慰金は支払われる。阪神・淡路で919人、新潟中越で52人、東日本では1年間で1633人。
・義援金の差し押さえの禁止。
・都市の復興ではなく、人間の復興。長田の教訓。
・復興基金は法律に基づかないからこそ柔軟性と機動性を実現できた。私有財産の形成に公金は使えない。
・福島県の場合、震災後1年の時点で、死者・行方不明者1819人に対し、災害関連死は764人で、そのほとんどが避難生活中に命を落としている。

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2013年07月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

よみやすかった!
こういう俯瞰図大事!災害関係の法律が一望できる。
たまにコミュニティ万歳系のイデオロギー強いので☆4!

<感想>
人権保護色がとてもつよくて「人間の復興」というものを標語に掲げているけれど、結局のところ全ての人の人権を保護しようとするとその相互作用から新たな問題が起こる。よく議論が起こるように「公共の福祉」と「基本的人権の尊重」のバランスだ。
極力できることはしたいし、困っている人も助けたいけれどそれによって依存心を引き起こしてしまうとそれが今度は「公共の福祉」に反すると「傷ついた」被災者を責め立てることにもなるというダブルバインド状態が生まれる。または他の人の不公平感を引き起こすことにもなる。
本書でも触れられていたようにそういった(役所の)公平感を帰した対応が、対策の遅延にも繋がるけれど、結局のところそこもまたメタ位置でのダブルバインドが起こる。こういった批判と改善の繰り返しによって四角いモデルが丸に近づいて来たんだろうな、と思いつつ。丸に近づいてきたモデルは「批判」という四角い改善法では強い副作用を起こしつつある。あまりに強い人格否定を含む批判は現代では状況を逆に悪化させることさえもある。つまり、手段と目的がねじているようにも見受けられる。その改善法さえも近代から現代的なものに改良する必要性を感じる。

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2013年03月19日

Posted by ブクログ

災害に対応する法律について、体系的にわかりやすく解説した良い本だと思う。教科書として使えるとともに、法と災害の両方に関心のある方は、万一の備えとして読んだら面白いと思う。また、災害行政や立法に関わる方は、少なくともこのくらいの知識は持った上で機能して欲しいと思った。

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2012年09月24日

Posted by ブクログ

津久井先生から献本いただいた。感謝。

 災害法制の見直しを考える立場として、大変参考になると説得力ある視点がもりだくさん。

 個別の論点については、もっと勉強して整理したいと思う。なにせ、災害法制は、積み木のようにその場、その場でできているので、整理しなければいけない論点がたくさんありそう。

 直感的な印象。

(1)国、県、市町村というツリー型のシステムは災害時にはあまり有効ではない。先日、読んだ上先生の本でも、現場で自主的に動こうとすると、市町村や県、業界団体がじゃまをするようなことが多くあった。

 そのような障害を弾力的に様々なレベルに連絡して解決するためには、アレクサンダーがいうところの、セミラチス型の仕組み、複層的でかつ、トップへのホットラインも確保できているような仕組みが必要だろう。

 例えば、地区の防災協議会が国の運用基準や市町村の姿勢でうまく活動できなければ、緊急に国レベルの会議でその問題を解決して是正指示(最近の地方自治制度では要請か?)できるような、ホットライン的な仕組みも必要だと思う。

(2)これから起こる首都直下や3連動を踏まえると、財政支出の規定は、その時点の国民の財政負担についての了解が必要なのであらかじめ決めきることは難しいかもしれないが、それ以外の特例的な措置で有効なものは、東日本大震災の特例法とするのではなく、恒久法として用意しておくべきではないか。

 予算は、衆議院の議決だけでねじれ国会でもすぐ通るが、法律はそうはいかないということも考えれば、できるだけ恒久法を用意すべきだろう。

(4)災害救助法と被災者支援法など、似たような趣旨の法律がその成立経緯をふまえて、別別の省庁で運用されていることも課題。いろいろ政治的な反対もあるのかもしれないが、これから、予算、人とも少ない資源の中で大災害に対応する必要があるので、できるだけ縦割りを排除して一体的に実施する仕組みを考えるべき。

(5)災害救助法のように古い法律は、人の生死にかかわるような事柄が、厚生労働大臣の通知一つで決まるというのはなんとも非民主的。きちんと骨格は法律で規定して国会の承認をいただいて、実施すべきだろう。

 いずれにしても、もっとたくさんの論点があるが、災害関連法制の勉強の第一歩として大変参考になった。

 津久井先生ありがとうございます。
 

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2012年07月27日

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