あらすじ
民俗学、文化人類学、心理学などの分野から、間食の歴史や役割を多角的に考察。「間食」を通じて「食事」の本質に迫る。
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Posted by ブクログ
霊長類学・人類学・栄養学など幅広い視点から間食を考察。各地の滋味深い間食はどれも食べたくなる。各執筆者が述べる通り学術的な定義は無いため、考察の方向性はそれぞれだ。しかしながら総括では各項の趣旨がバランスよく整理され間食の輪郭を示している。
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「間食」についてここまで深く考え抜いた本は、今までなかったのではないか。
北海道フェアで手に入れたきびだんごを食べながら、ダラダラ読む。きびだんごといえば岡山のイメージだが、北海道で独自の進化を遂げたらしい。まあ、私の話は良いのだが、とにかく「間食」だ。ここまで生活に関わりが大きいにも関わらずじっくり考えた事が無かった。
本書では、色んな視点で語られる。例えば、「水分補給」。水道インフラがない時代、スイカのような果物で定期的に水分を補給していた可能性がある。また、人間以外は「間食」という概念以前に、<朝食・昼食・晩食>という概念がないので、そもそも原始的には手に入ったら食せという事で、全てが「間食」である状態が適正だったとも言える。なるほど、そう考えると、寧ろ一日三食(あるいは二食)の成立の方が意味のある事であったのでは。
労働や祭事など、「団体行動」がゆえに、決まった時間に食べる習慣が根付いたという解釈がある。狩猟でも団体で狩りに出かければ、その成果を分け合うタイミングは同時だっただろう。農耕は更に一斉に従事し作業にリズムがあるために、食事の時間は同じタイミングである方が良さそうだ。
しかし、それだけではカロリーが足りなかった。木の実でも昆虫でも、つまみ食いするのだがこれが「間食」として区別されていくのだ。
もう一つ、本書で面白い内容があった。好き嫌いとか、ゲテモノ食、偏食について。
― 劣位の個体は採食競争に負ける。このような個体は個体群の大半とは別のものを食べたり、別のタイミングで摂食することで適応をはかる。このことは特定の個体が集団の大勢とは異なるニッチを獲得する契機になりうる。移動先での異なる摂食行動は新たなニッチの学習でもあり、結果的に集団の生態域を拡張させる開拓的な性質を有する。また、特定の個体が他の個体とは異なる摂食行動をとることで、集団内の多様性が生じることになり、社会の進化の契機にもなりうることから、その進化的意義についても一考の余地はあるだろう。同じようには食べないことが革新的、新奇的なものに個体や集団を導くきっかけとなり、マイノリティの生存手段にもなりうるのである。雑食性の霊長類の、規則的ではない特に移動の合間に手当たりしだいつまんでいく摂食行動は自由であり曖昧な点で、間食の原点のような位置づけにあるといえる。
生きるために、他の個体とは異なる摂食行動という〝戦略“を取る。人類の一部が見せる〝〇〇専″みたいな偏った異性への好みに通ずるニッチ性を感じ面白かった。雑食で何でも食べる、というのが生存戦略的には良さそうだが、身体構造を作り変えるコストや競争回避の観点から、安定した環境では専門特化(草食・肉食)の方が効率的のようだ。専門性を高めるか、ゼネラリスト志向でいくか、みたいな考えさせられるテーマだ。