あらすじ
シェフの父を亡くして自暴自棄に生きていた青年・律は、かつて宮廷料理と呼ばれた「山東料理」を受け継ぐゴンさんと出会った。綺羅人という仲間も迎え、山東ダイナーの出店に向けて走り出した矢先、ゴンさんの失われた記憶の蓋が開かれる――ある冬に出会った2人の短い冒険の旅は、終わりを迎えようとしていた。
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Posted by ブクログ
⭐︎山東料理と道の先に見えた極上のフィナーレ⭐︎
辻真先先生(推理作家・アニメ脚本家)が紙書籍の帯で激賞!されるのも当然、まさにアニメ化やドラマ化を確信させる完結巻です。
1巻から追いかけてきたこの物語が提示してくれたのは、単なるグルメの枠を超えた「人が生き直すための道標」でした。誰しも過ちを犯したり、道を誤りそうになることがある。しかし、誰かの幸せを想い踏み出す一歩が、まるでオセロの盤面が次々と裏返るように新たな善意と縁を呼び寄せる。「人との繋がり」から次々に繰り広げられる面白くもリアリティあるエピソードと発展にどれだけ胸を躍らせられたか。
どん底にいた律くんが、記憶を失った異才の料理人・ゴンさんという「師」に導かれ、他者の痛みに寄り添える逞しい「幸せ使いの料理人」へと成長する軌道。その精神的な成熟と旅路の結末には、言葉を失うほどの感動を覚えます。
4巻ではミステリーの疾走感も最高潮に達し、キラトくんやルオシーさんの奔走から目が離せません。今ある苦境にただ打ちのめされるのではなく、「少し視線を広げて、光の射す場所へ一歩でも進もう」と問いかけてくる温かな眼差し。彼らの人間味あふれる表情、そして輝きに溢れるラストシーンは読む者の心に永遠に残るページとして刻まれました。
そして忘れてはならないのが、単行本最大の楽しみである「とな宮レシピ」の存在です。作中に登場する山東料理は、はっきりとした旨味と香りで食欲を刺激しつつ、ラードや化学調味料不使用ゆえの後味が爽やか。一見難しそうに思えるのに、素人でも楽しく作れるよう助言に工夫が凝らされています。どの料理も何度も作って食べたくなり、心身が内側から整うのを実感しています。
ほか巻末の描き下ろしページまで含め、内容が濃くて一冊の満足度が高いです。
食べること、生きること。中国の古くから作られてきた「山東料理」やその歴史、そして誰かと温かなテーブルを囲むことの尊さ。そのすべてを教えてくれた本作に、万雷の拍手と感謝を贈りたいです。
物語はひとつの到達点を迎えました。しかしまだ謎や空想の余地をたくさん残して下さっているこの物語。登場人物、一人一人が個性が立ち魅力的。生い立ちからこの先の歩みまで、どんな人生を辿るのか想像したくなる。愛おしいキャラの日常の続きや、仲間たちのその後を描く続編・番外編などが読める日を切に願っています。
心もお腹も満たされ、明日を生きる力が湧き上がる最高峰の傑作。迷っているすべての人に、今すぐ手に取ってほしいと強くお薦めします。