あらすじ
闇バイトを通じて記憶喪失の冴えない中年男性・ゴンさんと出会った律。かつて宮廷料理と呼ばれたゴンさんとともに中華デリ「山東ダイナー」の活動を始めて、「俺はゴンさんと一緒に店をはじめるんだ」そう決意を固めたが――!?
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Posted by ブクログ
この(2)も、本当に美味しい。グルメ、ミステリー、ビジネス、サスペンス、と言った要素が、グッと詰め込まれている。
けど、作者の、それぞれの要素を上手く扱い、なおかつ、調和させるセンスが冴え渡っているので、破綻しそうな感じはなく、旨味だけを抽出しているのが凄い。友情や成長などの人間ドラマ性が高いってのも、読み応えを味合わせてくれる。
この『となりの宮廷料理人』に限った事じゃないけど、本当に質の良い食系漫画は、人間ドラマ性がしっかり作り込まれているように、私は思う。
登場人物のキャラが立ってる、料理が美味しそうに描かれてる、食べた際のリアクションにオリジナリティがある、なども当然、大事だ。
しかし、料理とは作るだけでなく、それを人が食べ、様々な感情が発され、生命に影響を及ぼすものだ。
その美味しい料理を食べる人間の日常、どんな人にも各々のドラマがある。キャラの魅力をより際立たせる、人間ドラマが織り込まれている食漫画は、本当に良いモノだ、と私は断言したい。
この(2)を飾っているのが、律、ゴンさんに加え、(1)で登場し、喧嘩慣れしている律にテンプルへの一撃でKOされたイケメン借金取りである事から解かる通り、この(2)からは、このキャラも主幹となるストーリーにしっかりと汲みこまれて来る。
律は、最初、このキラトって青年に「嫌い」を隠そうともしていなかったが、彼も彼で色々とあり、それでも、真っ直ぐに生きようとしているのを感じ取ったのか、何だかんだで突き放さず、夢に向かう道に同行させる流れなのが、実に好ましい。
また、この巻でも、律がゴンさんの作る料理や、それを食べてくれる人との交流を通じて、人間的に変化し、成長の兆しを掴んでおり、優しい気持ちで見守りたくなる。
どんなジャンルの料理であろうと、本当に美味しければ、相手の人生に良い影響を与えられる、と教えてくれるって意味でも、一読の価値はある、と私は断言したい。
これらの台詞を引用に選んだのは、上記したが、律の成長を感じられるものなので。
悪ぶっちゃいるけど、人間としての芯は曲げないようにしている主人公が、ちょっとした事から、生きていく上で大切な事に気付いて、成長の糧にする展開、嫌いな人は少ないだろう。
しかも、律の場合、ここがピークって訳じゃなく、もっと、大きくなってくれそう、と期待させてくれる「何か」がある。
今回、登場した、銭ゲバ宮司の見せた反応からして、やはり、ゴンさんには、とんでもない秘密がありそうだけど、それでも、律なら、その衝撃を受け止め、強い漢に化けてくれそうだ。
実際のとこ、人は個人での努力でも成長は出来るけど、ブレない人間になるには、やはり、色々な人と交流した方が良いんだろうな。
また、杉本先生は、食べるって事が、お天道様から顔を背けずに済む、真っ当な人生を歩む上で、どれだけ大切か、それを、ちゃんと解ってくれている人なんだ、と嬉しくもなる、この台詞を読むと。
「兄貴」
「その兄貴ってのやめろ」
「礼を・・・言わせてください。兄貴も、ゴンさんも訳アリな俺達と向き合ってくれて・・・嬉しかったんです」
「それは、いろんな人を知っていくと、自分がどんな人間になりたいか、考えることができるし、それに、誰にでも訳はある・・・」(byキラト、律)
(今でも、いつでも、倒れそうになっても、きっと、迷いを乗り越えて生きのびられる自分でありたい)(by律)
『長い中国の歴史のなかで、今なお作り続けられるのは、簡単で美味しいからですが、なにより、この料理には生き続ける力があるんです。どんな運命も負けず、決して消えることがない、そんな料理を創造したい』
(その夜のゴンさんの言葉と料理の味は・・・今でも忘れることができない。何かを遺していけるかはわからない。ただ、一つの料理を囲んだみんなに、そして、自分に・・・生き抜く力があることを祈った)(byゴンさん、律)
「人間って死んだら、おしまいだって思ってた。だから、なんで、好きなことに打ち込むのかって考えてたんだけど、だれかと感覚を共有したいのかもしれないね。楽しいとか、おいしいとか、涙が出るとか、そういう強い感覚を。なんで、そんなことすんのか、わかんないけどね!!」
「私に何か起きたときのために、私の好きな料理やおいしい作り方、律さんにすべてをのこしていきますよ」
(何も迷わずに、いつもの笑顔で、ゴンさんはなんでもないことのように、さらっと凄いことを俺に言うのだった)(by律、ゴンさん)