あらすじ
『哲学者の密室』の“悲劇”再び
矢吹駆シリーズ最新作!
間違われた誘拐
連鎖する誘拐
前人未到、永久不滅の誘拐ミステリ
1978年の秋、矢吹駆とナディアは“三重密室事件”の記憶を持つダッソー家での晩餐会に招待され、アイヒマン裁判の傍聴記で知られるユダヤ人女性哲学者と議論する。
晩餐会の夜、運転手の娘・サラがダッソー家の一人娘・ソフィーと間違えて誘拐される。さらに運搬役に指名されたのはナディアだった。
同夜、カトリック系私立校の聖ジュヌヴィエーヴ学院で女性学院長の射殺体が発見された。
「誘拐」と「殺人」。混迷する二つの事件を繋ぐ驚愕の真実を矢吹駆が射抜く。
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Posted by ブクログ
「哲学者の密室」からの続きといえば続きかもしれませんが、内容的には「哲学者の密室」を未読でもなんとか着いていけるとは思います。
でも、読んでおいたほうが無難に楽しめるでしょうか。
「夜と霧の誘拐」というタイトルから、フランクルの「夜と霧」がある程度のモチーフになっていると思ってましたが、直接的なモチーフとしては出てきませんでした。
出てきませんでしたが、小説内で語られる事件の本質直観として「交換犯罪における」「二重化とずれ」とカケルが語ります。
歴史修正主義の問題も小説内で重要なファクターのひとつとして出てきますので、その歴史の偽装行為を「歴史観の交換」と置き換えれば、それに伴う「二重化とずれ」が生じ小説内で起こる殺人事件に繋がっているとも言えなくもないでしょう。
となれば、「夜と霧」の歴史修正→「夜と霧」の誘拐、という本小説のタイトルの含意に納得がいきます。
最終章で語られる、イスラエル建国にまつわるシオニズム、唯一の被爆国を語る際の日本、それらが含んでいる欺瞞性の考察はなかなか読み応えがあります。
ちょっと心配になるくらい攻めてるような感じです。