あらすじ
すべてはここからはじまった――幕末から大正にかけて、未知の土地・北海道にわたり、近代都市・札幌を作った、島義勇、内村鑑三、バチラー八重子、有島武郎、岡崎文吉の熱き物語!
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Posted by ブクログ
和人2戸7人(1869年/明治2年)とアイヌの集落があった札幌が、明治維新以後どのように開拓され発展を遂げたのか——世界でも稀に見るスピードで200万都市となった北の大都市の開拓初期が、当時を生きた実在の人物たちの物語を通じて綴られている小説。面白いし、色々と知れる。
5人の主人公が各章で変わる。
・アイヌ語で「広い乾いた土地」と呼ばれていた時代
佐賀藩出身の島義勇が開拓判官として赴任してきて、碁盤の目状に開拓することを決める。ここに骨を埋めるつもりで自らも手を動かし、時には夜中まで作業をする。しかし最終的には職を解任されてしまう。
・その数年後、クラーク博士がやってきた頃の話。主人公の内村鑑三は、札幌農学校の第二期生として入学するも、すでにクラーク博士はアメリカに帰っていた。「ボーイズビーアンビシャス」の後に続く言葉はなんなのかわかってないらしい。同級生に新渡戸稲造がいて「だからお前はダメなんだ」と言われながらも、生涯の友となる。高校デビューならぬ、新時代デビューというのがあったらしい。
・3章はアイヌ出身の八重子のお話。ウス(有珠)の集落から札幌へやってきて、英国人ジョン・バチラーの養子に。そこへ日本のアイヌ語研究の本格的創始者として知られる金田一京助がやってきて、その影響で歌人になる。アイヌ語の歌をたくさん収録した歌集「若きウタリに」を出版。アイヌ文化が徐々に失われていこうとも、心の中に灯火のように宿るアイデンティティが芽吹いているのが美しい。
・4章
主人公は東北帝国大学農科大学(旧:札幌農学校)に入学した有島武郎。教授に新渡戸稲造がいる。父が農地を買ってくれたものの、農場経営には興味がわかない。文学に傾倒し、「白樺」創刊。人気作家になった。その後、約450ヘクタール(東京ドーム約100個分)に及ぶ広大なニセコの土地を、約70戸の小作人に無償で開放した。
5章。
岡崎文吉による北海道最大の川、石狩川の治水。
たびたび洪水を起こし、石狩平野を完遂させてきた暴れ川を制御するため放水路を作る決心をする。外国に視察に行ったのち工事を始める。
めっちゃ読み応えあった。今度札幌行ったら史跡を巡りたい。
Posted by ブクログ
はるか原野の奥の闇に、ぽつりぽつり、橙色の点が横に並んでいる。星の列のようにも見える。
目的地の銭函でかがり火を焚いたのである──。
──まさしく北海道でなければ、しかも民家などの建て込まぬ開拓時代でなければ不可能なやりかた。最長距離の道しるべ。
この物語は、まだ北海道が蝦夷地だった頃。ロシアからの侵略に対して応戦する為、北の障壁となるべく都市の開拓が急務だった。それらの目的の為、世界的にも類を見ない速さで開拓・発展を遂げた近代都市札幌。幕末から昭和にかけて、未知の北海道で生きた5名の男女にフォーカスした、史実に基づいた物語。
島義勇の章では、『北海道開拓の父』と呼ばれ、碁盤目状の街路やインフラ整備など、札幌の基礎を築いた物語を描いた。
内村鑑三の章では、クラークが去った後の北海道開拓の上で切っても切れない、『札幌農学校(現・北海道大学』の学生たちの物語を描いた。
バチラー八重子の章では、アイヌを鼓舞する為に自身の半生を歌集に乗せ、和人と共存していくアイヌとしてのアイデンティティを描いた。
有島武郎の章では、農地解放を行い、小作人による農業組合が日本で初めて立ち上げられるまでを描いた。
岡崎文吉の章では、氾濫の多かった石狩川河川の現代にまで生きている治水事業を描いた。
下手な感想なんてありません。ただただシンプルに、自分の地元をまた一段と好きになりました。
Posted by ブクログ
当地在住の身にも関わらず知らないことばかりでとても学びが多かった。
判官様というお菓子があるくらいなのに島義勇のことは開拓の人と言ううっすら知識しかなかったのが恥ずかしい。そしてたったの数ヶ月しかいなかったことに驚愕。それでこの碁盤の目の街の基礎を作ったとは…
あと面白かったのはやはり有島武郎の数奇な人生と岡崎文吉の石狩川工事。
有島は名前を知っていても具体的には何をしたか知らなかったので、ニセコに記念館がある意味を知れたのが大きい。小作農解放は凄すぎる。
あと石狩川がまさかショートカットされていたなんて知らなかったので、読んだ後に地図を見ると面白かった。茨戸川は捷水路で切り取られたものだったとは…
とりあえず札幌の人はみんな読むべき一冊。
Posted by ブクログ
幕末から戦前を中心とした北海道、札幌の歴史小説。
五つの章から構成されていて、島義勇、内村鑑三、バチラー八重子、有島武郎、岡崎文吉が各章の主人公。
札幌の開拓物語と思っていたが、島と岡崎の章以外は札幌ゆかりの人の話という感じです。
とにかく島や松浦武四郎がいなかったら札幌が道都になっていなかったと思えると島の章は重要です。
堀利煕についても最期について記述してあげてほしかったです。
内村、八重子、有島と文化人が続きますが、キリスト教やアイヌ民族や農場経営について勉強になりました。
石狩川治水責任者の岡崎がトリになるのですが、時代的にはそれまでの章と前後する部分もあるものの、彼の功績によるところが大きく、札幌の人口が函館の人口を超えて、名実ともに道都となったところは感動しました。
確かに、平城京や平安京のように何もないところから初めから都として創られた札幌は近代日本人の偉業とも言えます。
Posted by ブクログ
札幌の成立過程を、幕末から昭和にかけての5人の人物のドラマを通じて描いた連作短編、門井先生自身が語った創作意図・作品で最も強調したかったのは、「人が住んで街になるのではなく、人はいないが街をつくる」という、極寒の大地で大規模な都市計画をゼロから推進した先人たちの信念と情熱、そして現代にも通じる「自制心」を持った5人らしい・・・が、小説ならば特定の主人公を通過した5人という書き方の方が馴染みある、つまり札幌誕生というタイトルに相応しい観察者が不在なため、読者はバラならの5人の先人話を読まされただけに終わった(辛口)バチラー八重子や有島武郎の話は札幌誕生ストーリーに何も寄与していないと断ずる