あらすじ
豊町から朝夜兄弟がやってきた。クロとシロをやっつけ、宝町を乗っ取るのが目的だ。が、不覚にもシロにふたりの居場所を尋ねた兄弟はクロの不意討ちにあう。
...続きを読む
「強さ」って、どういうことだろう。
私は映画からハマったクチですが、原作も何度も読み返しては独特の浮遊感に浸り、そのたびに「強さ」について考えます。
宝町という荒んだ街でたくましく生き抜く少年・クロとシロ。2人が見る世界は、暴力とオトナの欲望に満ちている。オトナを圧倒する「力」を欲するクロの凶暴な感情は、すべて相棒のシロを守ることに注がれているけれど、実はシロの純朴さに生かされている。でもそれを「依存」と簡単にオトナの理屈で言い切りたくはない。2人は光であり闇であり、どちらにも振れる危うさこそが純粋で、愛しく胸に迫るのです。
ひとりで着替えもできず、幼児のように世話のかかるシロですが、「安心安心」「シロ、こんな街いらない」「もっとゆっくりならいいのに」など、たまに呟く「シロ語」は、本質を突いていてドキッとします。
ぜひ、映画主題歌だったアジカンの「或る街の群青」を聴きながら、宝町に飛び込んでください。松本大洋の不細工なガキ(褒め言葉)、クロが最高にカッコよく、シロが最高に可愛く見えてくるはず。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
鉄コン筋クリート 2巻 松本大洋 小学館ビッグスピリッツコミックススペシャル ISBN4091847323 866円(税込) 1994年5月1日初版【ストーリー】
収録内容は下記の通り。女が身籠り、上司からは暇を出されボヤく木村。おかしな男に名刺を渡され勧誘されるが・・・。朝夜兄弟が街を奪いにやってきた「ネコふんじゃった」、朝夜VSクロシロ「牛乳飲んで骨を鍛えるのだ!」、朝夜との決着。子供の城の蛇と3人の殺し屋。イタチの伝説。「対人関係にやや難有り」、子供の城を迎合する親分と意見を違えるネズミ。じっちゃがシロとクロのケアを。3人の殺し屋顔見せ「ネズミがチュー」、殺し屋No.3の龍がネコ退治に・・・。子供の城の目的「NO.3」、ネズミは藤村に街が変わってしまったとボヤく。逃げ惑うクロとシロ「嘆きのボイン」、ブーたれるシロ。もうシロの愛した街は失われてしまった・・・「シロガトブ」、残りの殺し屋が出動。シロの身に迫る危険「シロ隊員待機せず」、走るシロ。クロのもとへ帰らなければ・・・「僕らはみんな生きている?」、病室で「鼓動・調和・迷走・残像・友情・回帰」、離別「クロが泣く」【感想】最後の二話が泣けました。強い敵も登場し勢いと深みのある巻。
Posted by ブクログ
なんでもアーバン・ファンタジーよいうジャンルらしい。初耳。
なるほどなとうなずかされる言葉だ。
というのも、この作品で描かれる都市は無際限に拡大する都市という不合理で不可逆なシステムではない。
むしろ個人の内面だとか家庭だとか極小の場所を、都市に拡大して考える類の都市だからだ。
半透明で透過性のあるコクーンが、クロとシロのふたりの周りに敷き詰められている。
半透明だから互いに自由のように見える。
そして実際、透過性があるから他者からの侵入を許すこともあり、結果的にふたりが反目することもある。
が、変わってしまったも変わっていない繭が、依然としてうすーく残っているのだ。
だからふたりが再開すれば、ふたたび繭は閉じることができる、そういうふうにできている。
彼らを包む都市も、そういう具合でできている。
あるいは繭のような都市の核が彼らといえるのかもしれないし、都市の繭性を彼らが象徴しているといえるのかもしれない。
くだくだしく書いてしまったが、ふたりのキャラクターも好きだし、ふたりと取り巻く大人たちの群像も好きだ。
『AKIRA』のまだ幸せだったころの金田と鉄男を連想したりもした。
健康優良不良少年なところや、幻想への没入の仕方とか。
Posted by ブクログ
どんどん、まちがこわれていく。どんどん、よごれていく。
それを人一倍早く察知したシロ、それに気づかないクロ、バランスがどんどん崩れていく。
忍び寄ってくる悪いやつらによって、まちがむしばまれていく。
Posted by ブクログ
クロ、シロ、街、ドッペルゲンガー…。このマンガには記号が散りばめられている。クロとシロそれぞれが持たない部分をそれぞれが補完し合うという、哲学的な文脈を物語の骨格としつつ、作家の人情性が物語りの肉付けを行っている。ここに出てくる街はメタファーとしての街であり、変わり行く時代の象徴なのだ。