あらすじ
「今日は風が強いから電車が止まるかも……」と心配して早めに帰ろうとすると、案の定、駅に着いたら電車は止まっている。「いつも、この路線ばっかり!」とイライラした経験は誰にでもあるはず。一体、鉄道会社はどのようにして電車の運休を決めているのか?本書は、2011年3月の東日本大震災以後、首都圏でも発生が危惧されている地震を筆頭に、ゲリラ豪雨、強風、落雷といった自然災害に対する鉄道の備えと、意外な弱点を解説していく。「地震のとき『地下鉄のほうが安全』は本当か?――直ちに地上へ避難すべき」「電力不足になると、なぜ『各駅停車』の列車ばかりになるのか?」「老朽化する鉄道インフラ――明治時代の建造物が今でも列車の走行を支える」など、いざという時に役立つ“安全知識”も豊富に収録。さらには停電、火災、人身事故などの問題にも触れることで、「いつも正常に動いて当たり前」と思っていた鉄道への認識が変わる一冊だ。
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Posted by ブクログ
電車を利用していて遭遇する場面がある。それは、電車の運転間隔を調整する、あるいは運転を止める。人身事故で調査中、安全確認後に運転再開というアナウンスや、強風や地震で一時運転停止と言ったことを聞く機会がある。
利用者も止まると困るが、運航している側も困る。享年のNHKで放送されていた「ブラタモリ」の中で、東京メトロの基地を訪れていたタモリと久保田アナウンサー。突然、事故か何かで、運航時間変更に追われていた職員の姿を映し出していた。見ていて大変だなあと思ったのを覚えている。
著者は、地震が発生すると、なぜ運転再開までに長い時間を要するのか?として次の6つの手順を挙げている。
1.列車を止め、続いて運転士は列車の運行を一括して管理する
2.指令所の指令員、あるいは駅と連絡を取って被害の状況を報告する
3.駅と駅との間に停車した列車の利用客の避難や誘導を行う
4.線路や施設の点検と復旧を実施する
5.運転を再開するに当たっての運行計画の策定や乗務員、車両の手配を行う
6.運転再開前に、行政など関係機関や他の鉄道会社との連絡や調整を実施する
いろいろやることがあって、地震が止まったらすぐに出発進行とはいかないようだ。特に私鉄と東京メトロがつながっている路線ではそうなる。たとえば、東急田園都市線と東京メトロ半蔵門線、東武東上線と東京メトロ副都心線あるいは有楽町線がいい例だ。(東京の事例ばかりで申し訳ないが、モクモク羊の生活圏内が東京近辺なのでどうしてもそうなってしまう)
いくつもの路線がつながると便利なことは、乗り換えなしで目的地まですいすいと行けることだ。その反面、途中で事故が起きてしまうと一見関係のない路線でも被害にあい、運航見合わせという結果になることがある。その理由として、折り返し運転する余裕がないことがある。折り返し運転をするためには、場所と人員を確保する必要がある。しかし、民営化以来、折り返し用の人員削減を行った。さらに、運航管理をCTC( Centralized Traffic Control device 列車集中制御装置)が担うようになり、折り返し運転をこまめにするのが難しくなったとある。
安全と言えば、ホームドアの設置が気になる。ホームドアがつけば安全性が高まっていいと思うが、付けるには多額の費用が掛かるとある。さらに著者によれは、飛び込みが多いのは通過駅だそうだ。東京駅だと人がいて仮に飛び込もうとしたら誰かが止めることが大いにありうる。それに、最近目に付くのが、停止位置の変更のために列車をちょっと動かすことに遭遇したことが何回かある。なかなか停止位置に止まるのが難しいのかなと思う。
普段お世話になっているインフラだけに、運行がどうして止まるか気になって今回の本を読んだ。安全の確保には細心の注意を払ってほしいと思う。