【感想・ネタバレ】マイノリティの「つながらない権利」――ひとりでも生存できる社会のためにのレビュー

あらすじ

何らかのマイノリティ属性をもつ人は、生存に必要な情報を得るために当事者コミュニティへのアクセスがほぼ必須であり、コミュニケーション能力によってさまざまな差が生じている。マイノリティがつながることを半ば強いられている状況のなか、マイノリティは"つながらなければならない"のかを、根本から問い直す。

本田秀夫さん(精神科医)、飯野由里子さん(東京大学特任教員)、相羽大輔さん(愛知教育大学准教授)へのインタビューを収録。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

タイトルの「つながらない権利」という言葉に最初はとても引っかかっていた。人と人とのつながりなしに生きるなんて可能なんだろうか?この社会は人のつながりの中で成立しているのではないか?

ただ、本書が訴えるのは「誰ともつながらない」などという極端なことではない。困難を抱えた人が当事者コミュニティなしで情報を獲得しづらい、そんな現状の問題点を鋭く指摘していて、なるほどと唸った。

情報が氾濫するこの社会において、特定のコミュニティに所属せずとも欲しい情報を得ることは比較的容易だ。ただし、それはマジョリティとして自覚なく社会のあらゆる利益を享受できる者の話。アルビノの当事者であり、ASDや性的マイノリティでもある著者のように、複数のマイノリティ性を抱える人にとって当事者コミュニティはかならずしも安心できる場所にはならない。マイノリティが本当に欲しい情報、例えば進学、就職、あるいはもっと身近な日々の生活に必要なことを知るための選択肢はものすごく少ないのだと改めて気づかされる。

第2章の対話編では、3人の有識者へのインタビューによって論点が整理され、著者自身が捉われていた「能力主義」にも言及される。第1章を読みながら疑問に思ったことや違和感を覚えた点は、2章でかなり解消された。問題意識を発信し、有識者と共に見識を深め、これからの道筋を提示する本書の流れはスリリングですらある。

マジョリティと呼ばれる側がマイノリティを理解する手がかりにもなる良書だった。

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2025年02月20日

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