【感想・ネタバレ】一九八四年[新訳版]のレビュー

あらすじ

〈ビッグ・ブラザー〉率いる党が支配する超全体主義的近未来。ウィンストン・スミスは、真理省記録局で歴史の改竄に従事していた。彼は奔放な美女ジュリアとの出会いを契機に、伝説的な裏切り者による反政府地下活動に惹かれるようになる。

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「戦争は平和なり 自由は隷従なり 無知は力なり」
〈ビッグ・ブラザー〉率いる党が支配する近未来では、ありとあらゆることに統制が加えられる超全体主義的な社会が成立していた。真理省記録局で歴史の改竄に従事していた主人公・ウィンストン・スミスは、奔放な美女ジュリアとの出会いを契機に、反政府地下運動に惹かれるようになっていく…。

先の見えない不安な時代に売れると言われる本作品。トランプ大統領が就任した際、アメリカ国内での売上ランキングで1位となり話題になりました。また、ノルウェー・ブック・クラブの「世界最高の文学100冊」にも選ばれ、世界中で高い評価を得ています。こんな社会はありえないだろう…とページをめくっていくうちに、『一九八四年』的未来はSFにとどまらないのかもしれない…と考えはじめてしまうでしょう。現代を生きる我々に警鐘を鳴らす一冊です。

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Posted by ブクログ

昔の小説なのに現代に通じるものがあって面白い、いつだって人は権力を持ったら支配したくなるのか、支配したいと思う人に権力が集まるのか。
どんな時でも自分の中の正しさを信じて生きたいな、死ぬとしても。

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2025年11月05日

Posted by ブクログ

 「一九八四+四〇 ウイグル潜行」を読んだのちに、改めてオーウェル「一九八四年」を読む。最初にトランプ大統領が就任した2017年以来だけど、これまで何度か読んでいる。しかし、細部はすっかり忘れていました。
 覚えているのは、「ビッグ・ブラザー」「テレスクリーン」「ニュースピーク」「二重思考」、そして「戦争は平和なり」「自由は隷従なり」「無知は力なり」。

 共産主義や全体主義を批判したディストピア小説として知られるけど、いまだに読み継がれるのは、もっと普遍的に権力そのものの本質をついているからでしょう。「権力は手段ではない、目的なのだ。・・・・迫害の目的は迫害、拷問の目的は拷問、権力の目的は権力。それ以外に何がある」「ナチス・ドイツとロシア共産党は方法論の上ではわれわれに極めて近かったが、自分たちの動機を認めるだけの勇気をついに持ち得なかった」

 プーチンやネタニヤフ、そしてトランプ、その他たくさんの指導者がついにその動機を認めてしまったかのように振る舞っています。

 本書に書かれた当時としての未来を、現代の世界の一部についてはすでに凌駕してしまっているかもしれません。克服ではなく、凌駕です。

 「1984年」は「2025年」かもしれないし、「2030年」かもしれません。この本を読んで、覚悟しましょう。
 

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2025年11月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

裏切られた人間を再度受け入れることはできるが、自分が裏切った人間を再度受け入れることはできない、確かに、そうかもしれないと思った。

ーーーーー

ネット番組で紹介されていたので、読んでみることに。
ABEMA世界の果てにひろゆき置いてきた内で、東出昌大さんが旅に持ってこられていた本の中に同じジョージ・オーウェルの作品「動物農場」があり、これも併せて読んでみたいと思う。

党のスローガン、これは人間社会の統治においての真理なのかもしれないと感じた。
『戦争は平和なり』
人間コミュニティーの平和のためには共通の敵が必要であり、また、反乱要因と成りうる人間の余暇や物質的余剰をなくすために戦争(的なもの)を意味もなく続ける。
『自由は隷従なり』
本文中にもあるが、改め『隷従は自由なり』であり、一定の不自由を甘受すれば、その内部での自由は許される。
『無知は力なり』
一般国民へ政治への問題を意識させない、何が問題かを見えないようにするという点は、きっと古くからある人間社会の統治構造の根本なのだろうなと。

ニュースピークという、減少していく語彙というものは、衝撃だった。言語によって人間の思考を狭めていく社会。
そして『二重思考』については、現代においてとても自然に人々が行っている思考方法であるな、と。受け入れがたい現実や整理できない煩雑な情報を、レイヤオフまたはレイヤを半透明にして何とか日常を送っている、多くの人がそうではないだろうか。
また、物質として記録が残らない事の危険性も感じた。ペーパーレスは便利だが、データが消えれば記録は消え、不安定な人間の記憶だけが拠り所になってしまう。

本書のこの世界を思うと、現実世界は2つの大戦を"終わらせられた"と言う点で、まだ良かったのかもしれない。戦争が常態化し、世界が社会主義化し、大衆は貧困化させられるという世界線もあったのかと思うとゾッとする。
しかし、人間は脳内で思想を繰り広げる事が出来るという生き物であり、簡単かつ正確にその思考を外部から読み取ることが出来ないという点で、人間と全体主義とは相性が悪そうだとも思う。

本書内の設定で疑問に思った点として、党幹部たちは血縁関係でも世襲制でもないということだったが、権力を党に集中させるということの大義を党幹部たちはどこに感じていたのだろうか。純粋な個人の支配欲や出世欲、または純粋に社会主義システムを構築したいと思って動いていたのだろうか。ビッグブラザーもゴールドスタインも物質的には作中に登場していない。なにが原動力になり得ているのかよく分からなかった。理解できないという点で、自分は形而下的思考の人間なのだろうか。

今、世界が不安定化する時代にこの本を読んで、まったくの絵空事の様に感じられないのが、少し恐ろしい。5年10年前に読んでいたら現実感のない小説だと感じたかもしれない。

そういえば、本書のこの世界ではイギリス国室はどうなった設定だったんだろう。

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【名前・用語のメモ】
ウィンストン・スミス ー主人公。39歳。真理省記録局勤務。ヴィクトリー・マンションに住む。
イングソック ーオセアニアス社会主義。
ニュースピーク ーイングソック思想に染まるための言葉。思考を縮小させる。
真理省(ミニトゥルー)(p12) ー報道娯楽教育芸術
平和省(ミニパックス) ー戦争軍事
愛情省(ミニラヴ) ー法と秩序
潤沢省(ミニプレンティ) ー経済
プロール(p18.p83) ープロレタリアの略。非支配者階級。政治的意見は持たされず、素朴な愛国心のみを与えられ、愚民化させられている。
二分間憎悪(P19) ーゴールドスタインを憎むための洗脳儀式。
ジュリア(p19.P67.p186.p200) ー虚構局のメカニック。小柄な黒髪の女性。26歳。
オブライエン(p20.259) ー党中枢委員。メガネ。ブラザー同盟の一員。
☆(p21) ー薄茶色の髪の小柄な女性。記録局の同僚。仕切り部屋の隣の部屋。夫が蒸発させられた。二分間憎悪で叫ぶ。
エマニュエル・ゴールドスタイン(p21) ー党の敵。元党指導者。ヤギ髭、メガネ。痩せたユダヤ人の様な顔。
オセアニア(p22) ーBB側。
ユーラシア(P23) ー敵国。ロシアやヨーロッパの辺りの勢力
イースタシア(P24) ー敵国?。アジア辺りの勢力
ブラザー同盟(P24.P30.) ーゴールドスタイン側の同盟。自由を目指す。あの本。
トム・パーソンズ(P34.P87.) ー隣人。真理省勤務。p37に略歴。35歳、小太り、金髪。汗臭い。
ティロットソン(P67) ー記録局の同僚。男。仕切り部屋の向かいの部屋。
アンプルフォース(P67) ー記録局の同僚。男。長身。耳毛。詩人。
ウィザーズ(P70.) ー党中枢メンバーだったようだが、姿を消された?
サイム(p76) ーウィンストンの友人。調査局勤務。歴史言語(ニュースピーク)学者。BB信奉者だが危うい。
栗の木カフェ(p86) ー画家や音楽家のたまり場。縁起が悪い場所?
キャサリン(p101) ーウィンストンの妻。
大粛清(p116) ー60年代なかばに起きた。ジョーンズ、エアロンソン、ラザフォードという男たちが最後まで生き延びていたが、公開告白の刑を受けその後釈放されたが、1968に処刑。
革命(p141) ー1925年に社会主義革命が起こった。
チャリントン(p152) ーウィークス古道具屋の店主。ウィンストンが日記帳を買った店。63歳。奥さんに先立たれている。
ウィルシャー(p172) ー知り合い程度の同僚。
マーティン(p263) ーオブライエンの執事。ブラザー同盟の一員。
バムステッド(p363) ー顎なし男。骸骨男にパンをあげようとした。

ーーーーー
【読書中のメモ】
付録p15.
All mans are equal. オールドスピークでは「人は平等」だか、ニュースピークでは「人間は同じ形」となり、イングソックの望まない思想を抱けないようにしている。
p75.
シャルルマーニュ、ジュリアス・シーザー
p124.
『そして恐ろしいのは、党の考え同調しないために殺されることではなくて、党の考え方の方が正しいかもしれないということ。』
p146.
『何の役にも立ちそうもないと見えるところが魅力を倍増させる。』
p203.
環境が得意なものでも、生まれ育った場所ならばそれは空と同じように何か変えようのないものと考える事はとても自然だ。
p279.
交戦国が、ユーラシアからイースタシアへ唐突に変わった!
p288.
戦争が日常化してしまった世界?
p289.
イースタシアの強さが『住民の生殖力と勤勉さ』というのは、当時の白人の黄色人種への意識が表れてるな、と。
p303.
『永続する戦争に依拠する経済』
p312.
人間社会は、一方向に進歩するか、振り子のように常に揺り戻されると思っていたが、ある一定の時代を凍結させる事が出来るのか?
p320.
党が世襲制でないのが意外!
p322.
人間という生き物が、血縁よりも社会システムを守りたいと思ったりするものだろうか?
p328.p329.
このページを見開きで開いていると、『二重思考』の太文字が浮かび上がってきて、おどろおどろしい感じがする。
p328.
『意識的な欺瞞を働きながら、完全な誠実さを伴う目的意識の強固さを保持する事』そんなことが訓練で身につくものなのか?嘘を付くこと、そして無駄な作業を永遠とさせられること、それも自分の利益になるわけでもなく、そんな賽の河原の様な状態に人間が耐えられるものなのか?
p330.
『人は社会的地位が高くなるにつれ、戦争ヒステリーが強まっていく』戦争を始めるのは組織のトップだと言われればそうだが、開始の判断をするのはトップだから結果的にそう見えるのではとも思う。
p344.
ミスター・チャリントン、まじか!
p369.
オブライエンもかあ…
そうなると、2章のウィンストンの告白は最悪の告白だった…
p383.
『形而上的思考』今ここに形のないものを意味付けする。現実は見る人間の数だけ様々に姿を変える。
p391.
かなり荒い方法での洗脳手法なのか?
p392.
中世の異端審問や二十世紀の全体主義者(ナチやロシア)の異端迫害の失敗からの教訓
p406.
人類にとって大切な自由と幸福のうち、幸福を平等に与える事が党の存在目的?
p408.
『権力の目的は権力』私欲のためではなく、社会システムを構築する目的だけのためにひたすら権力を集中させている?権力を得ることが純粋な目的になりえるだろうか…?
p409.
『自由は隷従なり』改め『隷従は自由なり』これは人間社会の真理だと思う。
p415.
ゴールドスタインも、この社会システムの構築に必要な要素、必要悪だった。"真っ当"に恨むための対象として、異端者を炙り出すための装置として。
p416.
『恐怖と憎悪と残酷を基礎として文明を築く』は、ありえるか?党中枢職員がそこに従順になるメリットは?
p420.
拷問時に多少自由が効くようになったのは、ガリガリに痩せていたためだった?
p488.
イギリス(労働党?)とソ連等で、社会主義にも様々異なる種類がある?
p505.
『彼女(ジュリア)は告白と裏切りの違いを理解している。』本編を読み終えてその違いを理解ができた。罪の事実や背徳の関係をただ告げる事が告白であり、耐えられない苦しみを相手に擦り付け自分や相手の心に不義を働く事が裏切りである。
p507.
冒頭の原註からすぐ附録を読んだので気づかなかったが、ニュースピークの諸原理は確かに過去形文体で説明されている。なるほどこれが、ウィンストンが落とされた後の世界の行く先を表していたとは。

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2025年10月19日

Posted by ブクログ

こういう社会が、もしかしたらこれから実現してしまうかもしれない、または世界のどこかに既に存在しているかもしれないと思うと、心底恐ろしいです。
「ニュースピーク」という概念がとても興味深かったです。

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2025年09月15日

Posted by ブクログ

これはすごい。
こんな政治的な内容とは思ってもみなかったけど。

1940年代に近未来を描いた作品だ。
究極的な全体主義が世界を覆っている。
個人の思想、思考は一切許されず、心までも制御、統制をする社会。
反体制的な言動は顔の表情、寝言まで見逃されない。
党の正統性を維持するための過去の記録の塗り替えも日常茶飯事。

「テレスクリーン」や「二分間憎悪」、「二重思考」「ニュースピーク」など、聞き慣れない用語に
最初は戸惑い、この世界に入っていくのに多少時間がかかるが、このジョージ・オーウェルが
描いた世界はなんと精巧なことか。この世界の構想を練るのにどれだけの労力がかかったのか、
と感心させられる。全体主義的な社会を突き詰めて描くことによって、見事にその恐ろしさを
表わしていると思う。

とくに、「ニュースピーク」という新しく生み出された言語は、現実に存在するのか、と思うほど
文法まで決められており、それが小説の世界に深みをもたせている。
言語を統制(単語を必要最小限にまで減らし、単語が持つ意味を最低限にする)することで、
個人が反体制的な発言をすることはもちろん、反体制的な思考さえも物理的に出来なくしてしまう。
非常に鋭い洞察だと思う。

なぜ、党はこんな絶対的に抑圧的な社会を作り出しているのか。
戦時体制だから? ではなくて、
党中枢の一部の人々にとって都合のよい社会を創り出すためだけに、常に戦争だって行われているのだ。
その理論もきちんと、この小説の中で描かれている。

こんな社会で、反抗的な心を密かに抱く主人公のウィストンとジュリアの恋愛がスタートする場面には
仰天した。彼らは恋愛をすることで、社会に抵抗していた。
どんなに、政府が彼らを思い通りにしようとしたって、心だけは奪われない、人間性だけは奪うことが出来ない、
と信じていた彼らだったが、党幹部のオブライエンとの出会いと、その後の反政府地下活動から一気に物語は佳境に。
最後のどんでん返しにわずかな期待を残しながら読んだが、一縷の望みもないラスト。
それにすべて納得出来たわけでもないが、
著者はどこまでも徹底して全体主義的な近未来の社会を描くことで、警告を与えたのだろうか。

読み直すたびに、考えさせられそうな作品だ。

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2025年09月13日

Posted by ブクログ

サイエンスフィクションはいかに納得感があるかに尽きる。事実と、それをどのように解釈するかは異なるものであり、矛盾なく解釈できるロジックがあるとき、世の中のすべてのものは説明がつく(たとえ事実と異なっても)。このロジックを他者に納得させることはある種宗教のようでありながら、とても賢い人が打ち立てた世の中を見るためのものさしのようにも感じられ、それをもう少しで理解できそうだと勘違いしてしまう自分がいる。読むのに苦労したが面白かった。

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2025年08月28日

Posted by ブクログ

傑作。衝撃的で素晴らしい本です。物語の中のディストピアが単なるフィクションではなく、今私たちが生きている現実の延長線上にあるように感じられました。世界はすでにビッグ・ブラザーに支配されているのではないかという小説と現実の境目が揺らぐような感覚に囚われています。

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2025年08月27日

Posted by ブクログ

ジョージ・オーウェル「1984年」
長年気になっていながらも、手が出なかった有名な作品。

今回、思い切って読み切りました。
全体主義と、そのシステムの中で自我を抹消されていく個人の姿を描き切っています。人が造り上げる社会というものの怖さ、そして自由という概念の脆さが浮き彫りになります。

ある知人は、この本はもう古いかもしれない、と言っていました。確かにディストピアを書いた物語や映像はたくさんあります。
けれど、私は知人とは真逆で、「1984年」はディストピアの原点であり、出版から70年以上経った今もこれを超える作品は出ていないのではないかと思いました。

正直、暗黒世界というテーマは趣味に合いません。しかし、個人的な好みを語る隙もなくこの傑作には圧倒されました。

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2025年08月08日

Posted by ブクログ

やっっと読み終わった。マジ何ヶ月かけたんだこれ読むのに。もーーほんっっとになんか色々忙しくてタイミングなかったんだよ。
まぁ、読み始めたのは9月ですね。旅行の飛行機で読もうくらいの感覚で買いました。あとまぁ、友達が村上春樹好きで、1Q84おすすめしてくれたからさ。
この感想書く前に、現状の私を説明していいですか。ありがとう。
まぁわけあってNPO属してみたわけですよ。理由はいっぱいある。
なんかワンチャン休めに海外滞在できそうってのと、他者とうまく協力する経験をもう一つやるかってのと、多分自分が嫌いなタイプだから一回属してみてから判断するかってのと。こんな感じで。
でそのNPO、まぁ、ボランティアとか率先してやるような奴らですからいい子たちなのよね。いい子だから、自分がいいと思ったことを人にもおすすめしちゃうんだよね、きっと。
それはいいとして、こいつらの何がきついかって、「自分がいいと思った考え方を人にもしてもらいたい」って思ってしまうみたいだ。まぁ、人間そんなもんだと思うけど、私の中でこういう、自分の都合の良いように人の考え方を矯正するってことは最も許せないことなんですよね。
おまけにもっときついのは、なんか大層なスライドとか作って、情に訴えるような強い言葉を無責任に使って、無理やり従わせようとしてるんだよね。
もう何が言いたいかわかった?
そう、タイムリー!!
この世界観!とても!今の私だーーー!!!
組織に属して違和感を持ちながら、違和感を持つことで抵抗する(流石にそこまで考えてないけどね)。今まさにここ!
このまま組織残ったら、拷問とかではないにせよ、情に訴えられる形で考え方矯正されるのかな?ちょっと面白いけどね。
ちょっとこのNPOの話は感覚によるところが大きいから話さないとして、なんか、こうあるべき!みたいな組織風土がきつかったんすよ!
なんか後半の怒涛の洗脳パートはすごかった。
ここは解説見てもっかい書きに戻ってくるよ感想(なお現在11/29)

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2025年11月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

1949年に書かれた1984年を2025年に読んでみた

テレスクリーンというものに始終監視されていて人を信じることなく生きていかなくてはいけない世界で主人公・ウィンストンはわりと行動的。二重思考に対するウィンストンとオブライエンの問答を読み解くのははなかなかに難しく…。

第一、二部はわりとするすると読めましたが拷問メインの第三部がどうにもしんどかったです。

現代に当てはめるとインターネットがあるからそのままの設定では再現は無理というわけでもなく破壊しつくして1984年の世界を創り出せば再現可能で、過去が私が知る過去ではなくなる恐怖に背筋がひんやりしました。

とはいっても1949年に書かれた作品なので、あれは?これは?どうなってるの??という疑問は解説でトマス・ピンチョンが言語化してくれていて助かりました。名作だけどパーフェクトではない、ということですね。

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2025年11月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

途中に出てきた人間が闘うことになるのは自分の肉体だという趣旨の文が、拷問シーンで伏線回収されてゾッとした。
絶え間なく監視される生活、改変される過去、騙される民衆、二重思考…解説を読むと現実でも同じようなことが行われていることに気づくことができる。
同著による『動物農場』では、ブタの支配下に置かれた動物たちの行動次第で何かが変わったかもしれない。本作でもプロールこそが唯一の望みだと書かれていた。未来を良い方向に変えるには、民衆が行動を起こす必要があるのではないか。

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2025年11月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

全体主義社会を描いたディストピア小説。第一部、第二部ではわずかに希望が感じられたが、第三部で主人公が政府に捕まり、徹底した洗脳を受ける過程が執拗に描かれる。物語の結末では、これまでの出来事がすべて無意味になったかのように、まさに「二重思考」的な絶望だけが残る。

作中には、現代社会にも通じる警句が多く見られる。
歴史言語学者でニュースピークの研究、ニュースピーク辞典の編集作業に従事する友人サイムのセリフ。
「おそらく君はわれわれの主たる職務が新語の発明だと思っているだろう。ところがどっこい、われわれはことばを破壊しているんだ。」「ニュースピークの目的は挙げて思考の範囲を狭めることにあるんだ。最終的には〈思考犯罪〉が文字通り不可能になるはずだ。何しろ思考を表現することばがなくなるわけだから。必要とされるであろう概念はそれぞれたった一語で表現される。」

反体制派とされるゴールドスタインの著書より。
「戦争というものは、いずれ判明するだろうが、単に必要な破壊行為を成し遂げるだけではない。それを心理的に受け入れやすいやり方で成し遂げるのである。ここで気にかけるべきは、大衆の士気ではない。問題となるのは、党そのものの士気である。最も地位の低い党員ですら、有能で勤勉、ごく限られた範囲内であれば知性を働かせることさえ期待されるが、彼はまた同時に、信じやすく、無知で狂信的でなければならず、恐怖、憎悪、追従、勝利の興奮が、彼の支配的な感情でなければならない。」

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2025年10月23日

Posted by ブクログ

第二次大戦直後に書かれたディストピア的近未来小説。解説にあるように、結果として実現しなかったディテールを見るのではなく、現在の社会に通じる側面を見つけ出すのが面白い。

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2025年10月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ


イギリス社会主義なる独裁体制に支配された1984年の世界の話。ニュースピーク言語なる、支配側からの言語統制によって反抗思想的な単語が抹消された話し方が採用され民衆が政治的な反抗思想すら考えつかないようにされている。

が、ちょうど併読していた「言語が違えば世界も違って見えるわけ」(ハヤカワ刊)にもあったが、「人間の思考は言語や母語によって違いが生じるのではなく、日常生活の基本的な面について本人が所属する社会の中の他人と円滑に意思を疎通するために反復練習した経験から生ずる」とあり、まさにそれ。ニュースピークという新しい言語体系があるが実際のこの世界の人々は党に反抗分子と思われたくないから円滑に生活するために、不満のないような会話だけを周囲とをせざるを得ない。
二重思考だってここから生まれますよね。実生活でもそう思ってなくてもそう思わって振る舞わないと周りと円滑に行かないとかで。それはもう二重思考…。

つまりこの小説の世界はニュースピークによって一切の政治的反抗ができなくなったのではなく、社会で、職場で、親子でお互いに監視しあい密告する文化が出来上がったからこその自己保身から生まれたディストピアなのだな〜と思った。
やはり全体主義は怖いし、一歩間違うとどこの国や社会だってそちらへ一気に傾きかねないのが怖い。
もっと小さい、会社や職場単位でもこういうのがあったりするわけだし。

一番印象深かったのは実は見事な二重思考者だったオブライエンが急に敵対者になってからの急展開、それに続く拷問シーン、それに続くその後のウィンストンの復帰。
人間は痛みに弱いし、ウィンストンの「自分より高度な知性を持った狂人に対し何が言えるというのだ?」言う諦観がえぐい…。
逆を言えばそういう狂人を権力の座につけないのが大事ってことですよね…。

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2025年10月19日

Posted by ブクログ

『ビックブラザー』なる者を最高指導者としたディストピア世界。ほんの数日前の事柄、人間さえ、党に不都合ならば無かったことにされる。新聞、書籍、辞書、全ての記録物を編集され、過去が意味を持たない社会。主人公は新聞記事を党の意向に合うように"編集"する職についています。党に心酔した可笑しな人々を可笑しいと思える主人公がディストピア世界で、どう生きるかを描いた作品です。

現代の日本人には、滑稽な社会でもがく正常な主人公と映るだろうが、時代と国によれば、その評価が逆転してしまう。本書を読み進めるうちに、このディストピアに入り込み、現実に立ち返ると、安堵と共に嫌な不安感が残ります。

ただ、「訳者あとがき」にあるように、本書は私にとっても「読んだふり本」一位です。文章は何とか読めますが、その本懐を理解するのは困難でした。
また時を開けて、読解に挑戦したい作品です。

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2025年10月19日

Posted by ブクログ

ディストピア小説の王道といったところだが、作品の設定と同じような地域が現在もあるということ、いつ1984のような出来事が起こってもおかしくないという点にゾクっとさせられた。
昔話のように聞こえるが、現在でも市民が声を上げないだけ、もしくは気がついていないだけで、本作と同じような結末を目の当たりにしているように思える。

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2025年10月10日

Posted by ブクログ

とても難しい本だった。
話の展開が急に変化するため自分の予想していたストーリーとは全く別のものだったし、人の考え、過去についてなど色々と考えさせられる話でした。
途中の過去回想シーンや拷問などはその痛々しい情景が浮かび上がってくるようで恐怖を感じた。
もう少し本を読んで経験を積んでから再読しようと思う。

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2025年09月10日

Posted by ブクログ

世界で一番最悪な平和を実現する方法。
AI、SNSを始めとしたデジタルデバイスに支配される現代に警鐘を鳴らす名著。今読むべき。

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2025年09月11日

Posted by ブクログ

ディストピア小説の代表作。

ビッグ・ブラザー率いる党に支配された全体主義国家・監視社会に反抗を目論むウィンストンの物語。

SFだが、共産主義国家の生活が垣間見えるようで面白かった。テレスクリーンによる生活の監視、二分間憎悪で不満を外に向けさせるなどの慣習は、今の隣国を想像させる。

決して現代でも色褪せていない名作である。

監視社会を壊れてハッピーエンドになるのかと思っていたら、全く反対の結末だった。

このハヤカワepi文庫には、トマス・ピンチョンの読み応えある解説がついていて良かった。

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2025年09月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ディストピアものの超名作。そこまで分厚くは無いものの、文章量、そもそも文字数がはちゃめちゃに多い。そして展開は一度も明るくならないまま、緩やかに重たくなっていく。人間を個ではなく全として扱いまとめ上げていく。党にとって人間は動く歯車でしかない。ただそれだけなんだけど、あまりにもそれに至る過程が恐ろしい。洗脳のための進め方も、問答も本物で物凄く怖かった。否応にもトラウマを抉られるし、心から大切にしているものすら打ち砕かれる。何も残らない。その末に見たものは、本当に彼が愛すべき存在だったのか。いやー、下手なホラー小説よりも怖かった。でも読みづらいし少し難しかったので星4つで。

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2025年09月05日

Posted by ブクログ

聞いたことはあるが、読んだことはなかったので。 出だしから、これはどういう世界観?となるが、読み進めるうちに納得。 全体主義が進行したディストピアで、体制側に反旗の意を持つ主人公の物語。 検閲など思想・良心の自由の侵害の恐ろしさを感じる。

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2025年08月30日

Posted by ブクログ

20年ほど前に読みました。

昔読んだ本の記憶は無くなってしまったものが多いけれど、この世界から感じた匂いや雰囲気はいまだに思い出すことができます。それほど心に残る作品です。

とある国はこんな感じなのかもなぁ。いや、気が付いてないだけで、ここまでではないにしても、日本もそうなのかもしれない。

んなことを感じながら読みました。

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2025年08月06日

購入済み

はじめて読み終わったときはそこまで大好きな作品にはならなかったけど、読めば読むほど夢中になる小説だった。

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2021年10月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

自分の心に他人は入ってこられるか。

世界的ベストセラーだけど読んだフリしている人も多いだろう作品。かくいう自分もそうだった。腰を上げて読んでみた。すごい作品だった。消化できた気がしない。

歴史を変える。党の言うことを疑わない。それが危険だと言われているのではなくて、おかしいと思った自分をそんなことを考えてはダメだと無視する態度が危険だと言う。自己防衛的愚鈍。身に覚えのある自分がいる。おかしいと思っても生活を続けるために間違っていないと言い聞かせ信じ込む。そうじゃないと生きていけないから。

SNSによって「1984年」は現実に近づいているのかもしれない。でもSNSとかじゃなくて、テレビやラジオであったとしても、もしかしてその前からも、人間社会にはここで描かれた傾向があっただろう。何か大きなものを進行させるために無視する矛盾。メディアが後押ししたかもしれないけど、ずっとどこでも人間にそういう傾向はある。時代も地域も関係なく普遍的な問いを表現した作品である。もし今流行っているSNSやらが無くなった未来でも、この作品は読まれるだろう。

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2025年11月03日

Posted by ブクログ

前から読んでみたいという思いはあったものの
なかなか手が伸びなかったが
今回やっと手に取ってみた

難しく感じる感情はあったものの
一人の男性の半生を読んだと思うと色々感じさせられた

どこに行っても何をしていても
見られていてそれが当たり前で
そのことを何とも思わないことが当たり前で
過去はその都度変更していって
それに対しても何も感じないことが当たり前で
普通に暮らしていきたかったらすべてのことを受け入れることが当たり前で…

最近
発売された本で最近読んだ本を思い出した…

この物語が書かれたのはだいぶ前だけど
最近読んだ本は最近書かれたもの

なんだか怖くなる…

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2025年11月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ディストピア系のSF小説。
物語の設定はすごく面白い。過去を改変する真理省で働く主人公、行動や言論の統制など面白い要素が多い。
ストーリーはあまり盛り上がり所がなくてやや退屈に感じた。ただその退屈さがこの話の世界観をよく表していている。
あとは新しい用語が出てきた時にあまり説明されないまま物語が進んでいくから少し分かりにくい。
面白いとは思うけど個人的には合わなかった。ラストはかなり良かった。

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2025年09月20日

Posted by ブクログ

作者の念密さ、用意周到さ、徹底的な設定が、読んだ人が未来こうなる可能性があるんだ、警鐘をならしているんだと思わせている。どっちかというと徹底的なディストピアの再現という感じがした。

ただストーリー中に出てきた本の内容のターンが本当に難しく、文字は理解できるし読めるんだけど内容を深く理解しきれなかった気がする。

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2025年09月13日

Posted by ブクログ

外国のSF小説で評判が良さそうだったため読んでみた。
真実とは何かを考えさせられるような内容だった。

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2025年09月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ちょっと読みにくい!
前半は眠くてなんとか読んでた!
後半はやばい!これからどうなるのー?
って感じ
とりあえず名作らしいので読んでみた
前に読んだからあんまり細かいところは覚えてないけど、結局主人公は本当に洗脳されたままだったのかな
すごい苦しい世界だったのは覚えてる
また読む機会があったら読もうと思う

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2025年08月21日

Posted by ブクログ

二重思考とかの定義はなるほどと思って面白かった。自分の読解力のせいもあるけど、全体としてふーんって感じだった。ウィンストンが本を読むところは目が飛ばしてた気がする。

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2025年08月20日

Posted by ブクログ

私の読解力の無さといったら終わりだけども
なかなか周りくどい文章が多く感じられた。
特に、ウィンストンが本を読み始めた箇所が苦痛だった

電気羊よりかは読みやすく、理解しやすい
内容は現代社会と当てはめられる部分が多いことや、世界観の作り込みが素晴らしいなと
あと人間の汚い部分の心理をついてて
なかなかよかった。

歴史は人間の記憶の中にあり
改ざんする事によって歴史も都合よく変わるって場面は戦慄。
どこかの大陸国家を連想したよね

難しいっちゃ難しい。

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2025年08月12日

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