あらすじ
菊野脩ら小学五年生三人は、自分たちが住む地域を流れる川を、夏休みの自由研究の課題に選んだ。そこにはそれまで三人が知らなかった数々の驚きが隠されていた。少年たちの行動をとおして、川という身近な自然のすばらしさ、そして人間とのかかわりの大切さを生き生きと描いた感動の傑作長篇。
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Posted by ブクログ
【動機】
川端裕人さんにて未読だったため
【内容】
小学五年生の少年たちの川をめぐる一夏の冒険。
鳳凰池にやってきたペンギンの家族たちを中心に巻き起こる様々なできごとと、少年たちのアイデンティティの話。
【所見・まとめ】
この作者の小説が大好きで、当時大学の学部を決めたのも『リスクテイカー』という小説を読んだことがきっかけ。
本小説もとても面白かった。
ドキッとしたのはタイトルにもなっている「川の名前」の概念。
自分がどこに立っているのか、どこから来てどこへ行くのか、そしてどこに帰るのか、そんなことを考えたことは一度もなかった。
普段使用している住所が人間が作ったもので、街とか番地でしか自分の居場所を表現できないとか、気にしたこともなかった。いわんや、自分がどの川の流域にいるなんて、をや。
自分がいかに好奇心が欠如しているかわかる。考えているつもりでも、欠けている。自分のことについても、周りの環境についても。
川は海となり、世界へつながる。
自分がどこのカワガキなのか、わからない。わからないまま旅をしているのかもしれない。
これまで獲得したと思っていたアイデンティティと居場所は本物か?自然か?そんなことを考えてしまう小説だった。
Posted by ブクログ
とんでもないことをしでかす小学5年生がいたもんだ。
あまりに危険で、あまりに常識はずれだが、羨ましさを感じるところもある。一つの川の近くに暮らす人々、それを取り巻く人々。あるものは、ペンギンを保護しようとする。あるものは、ペンギンをお茶の間の話題のタネにショービジネスのネタにする。また、あるものは保護するでもネタにするでもなく、真剣に向き合い、自分の生まれや未来について、世界について思いを馳せる。
川は同じなようで刻一刻と変わり続けている。そして、自然の中に生きる人間もそうである。ペンギンという小さな存在が、人生を大きく変えていく。
世界に出ようとするということは、自分の足元を固めることでもある。この本に出会えて、自分の足元をしっかりと見つめることの、大切さを知った。