あらすじ
破滅まで46時間。
人類絶滅を阻止したければ
殺人の謎を解け。
フィナンシャルタイムズ、サンデータイムズ、ガーディアン、オブザーヴァーなどイギリス高級紙がこぞって絶賛。
「ヤバいくらい独創的」――M・W・クレイヴン(『ストーンサークルの殺人』ほか)
突如発生した霧により、世界は滅亡した。最後に残ったのは「世界の終わりの島」、そこには100名を超える住民と、彼らを率いる3人の科学者が平穏に暮らしていた。沖には霧の侵入を防ぐバリアが布かれ、住民たちはインプラントされた装置により〈エービイ〉と名づけられたAIに管理されていた。
だがある日、平穏は破られた。科学者のひとり、ニエマが殺害されたのだ。しかも住民たちは事件当夜の記憶を抹消されており、ニエマの死が起動したシステムによってバリアが解除されていた。霧が島に到達するまで46時間。バリア再起動の条件は殺人者を見つけること――。
果たして「世界の終わりの島」に隠された秘密とは? そして真犯人は誰なのか?
人格転移タイムループ館ミステリ『イヴリン嬢は七回殺される』、海洋冒険ホラー歴史ミステリ『名探偵と海の悪魔』に続く鬼才スチュアート・タートンの第3作。特殊設定メガ盛りで読者に挑戦するポストアポカリプス犯人捜しミステリ!
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
おもしろかったです!いろいろな要素が混然一体となった物語に感じました。なにしろ、作者のタートンさんは3年かけて書き上げられたそうですから。わたしは事件を追うミステリーを主に楽しみました。
だから「あらすじ」は、翻訳者の三角和代(みすみ・かずよ)さんの「訳者あとがき」のはじめの所がよいと思いました。一部抜粋です。
「・・・閉ざされた島を舞台にしたクローズドサークル・ミステリー・・・未来×タイムリミットものだ。探偵に課された使命は―――人類を救いたければ、四十六時間で殺人事件を解決せよ。」(「人類」から「せよ」まで傍点強調)(P419)
SF的特殊設定の小説ですが、テクノロジー世界が滅んだあとの終末なので、古風でなつかしい感じです。だいたい「探偵」のエモリ―さんは、シャーロックホームズファンという設定ですし。
そんなSF的特殊設定は、凝りつつも、サラっと書かれています。そのなかでも「AI」の使い方がおもしろかったです。
この物語の中でAIが担っている役割は、AIなんかなかったころの小説にも、あったんじゃなかろうかと感じました。
こんな風に思わせるところがすごいところですね。
作品紹介には「特殊設定SF犯人捜しミステリー」なんて書いてありますけど、他の視点からみても楽しかったです。
ひとつは「寓話的」なことです。終末世界ですし、教訓・風刺があるようです。
「神話の世界」も伝わってきます。舞台はギリシャの島で、登場人物には「ヘファイストス」という名前の人がいて、いかにもギリシャ神話っぽいかな?
そして「聖書」のアダムとイブも連想してしまいます。
「神と人」をイメージさせる、いかにも欧米人が好きそうな感じです。
わたしは「島の住民を三人の科学者が率いる」ところに興味をもって読んだのですが、この三人はどうなんですかね?
それに比べて、島の住民たちはいいですね。わたしも混ぜてほしいです。こんな老人介護島があったら行きたいです。
デストピア小説っぽいですが、島の住民について知れば知るほど、わたしも含め、ぼんやり日本人を連想してしまいました。なんだか、わたしは「特殊設定?」、とだんだんおもえてきてヘンな感じです。
そうなると「特殊設定」と「普通設定」の境目がぼやけて「霧」がかかったみたいです。未来なのに昔にもどりまた未来にいる、グルグル回っているような不思議さがありました。
Posted by ブクログ
4.6くらい。
イヴリン嬢は楽しく読めたが、海の悪魔は挫折した。これは面白いと聞いたので読んだら面白かった。最初はちょっと読み辛かったが。
最初は猿の惑星のような、エモリー達は猿で長老が人間、とか(身長差があるので)、長老が機械?いやエモリー達が機械?とか、考えていたけど、エモリー達は人造人間だった。HGウェルズのタイムマシンみたい。
名付けが結構意味深。
ニエマ→エニグマ?
エモリー→メモリーで記憶?
ジェームズ・モリアーティの響きにもちょっと似てる。
ヘファイストス→ギリシャ神話の鍛冶の神
テイアー→ギリシャ神話の女神(ティターン族)
セト→カインとアベルの弟でノアの祖先
など、結構連想しやすい名前。
最後まで読むとナウシカ。
ミステリー部分はちゃんとしてて傷口の位置とか面白かった。記憶失ってるのにエービィーは教えてくれない、という設定も面白い。
信用できないAIだけど命令に忠実で自己破壊も出来るのが良かったな。反乱しなかった。
通常では無理な舞台設定をSFだから!未来だから!で実現してて面白かった。
創世記だったな。
ニエマとヘファイストスで父と子。神とキリスト。テイアーが精霊枠?
ニエマという神の死後というのも面白い。
ニエマと夫、ヘファイストスの父親、というか人類の父親の話が無かったな。その分エモリーの父親や祖父、アーディルが活躍していたが。
子供が与えられるという点で、エモリー達には性行為の概念が無いんだろうな。骨格も内内臓の数も違うだろうし。
ヘファイストスはこの島にたどり着く間に怪我で失ったとか?身体中傷だらけだそうなので、よくたどり着いたな。
映像で見てみたい。
面白かった。
Posted by ブクログ
初めて読んだ作家さん。特殊設定のミステリーを書く方なんだ。知らなかった。
初ということもあって、設定が新鮮で面白く、一気に読んだ。
クローズドでタイムリミットあり。SFかファンタジーのような世界。
登場人物たちの心の様子がしっかりと書かれていたし、風景は目に浮かぶよう。
読んでいる間ずっと幸せだった。
Posted by ブクログ
世界は黒い霧に覆われて滅亡した。その霧を防ぐバリアを張り巡らした島で三人の長老は100人以上の島民と暮らしているが……
度肝抜かれる特殊設定ストーリー!→
たまらなく好きすぎる!設定が!設定がたまらんのだよ!
正直「ミステリー」だと思って読むと消化不良が残るかもしれないが(関係者がほぼ全員記憶を無くしているので、事件も謎解きも全体的にふわふわしている)世界観を楽しんで読むなら最高に面白いと思う。
私はタートンのこの特殊設定詰め込み→
まくりの物語が大好物なので、今作も大満足。
過去二作が好きな人にはハマるのではないかと。
そして、読んですぐはハピエンだと思っていたんだけど、思い返すとハピエンではないよな、と真顔になったり(笑)思わず翻訳者さんのあとがきを読み直して笑ってしまった。ほんま、スチュ大丈夫?(笑)
Posted by ブクログ
鬼★5 終末ミステリーの決定版! 地球と仲間たちを大切にできてますか? #世界の終わりの最後の殺人
■あらすじ
90年前、巨大な陥没穴が大陸に現れ、大都市を飲み込んだ。その後、穴から黒い霧が流れ出して世界中を包み込んでしまう。世界は滅亡の危機に瀕していた。
最後に残された孤島では、100名ほどの住人と3人の科学者が住んでいる。その科学者たちの研究機関によって、霧を押し戻せるバリアをつくりあげていたのだ。
しかしある日、主任研究者であるニエマが殺害されてしまう。彼女の死によってバリアが解除されてしまい霧が徐々に孤島に迫ってくることに… バリアを再起動させるには犯人を見つけなければならない。
■きっと読みたくなるレビュー
鬼★5 終末ミステリーの決定版すね、今年を代表する翻訳ミステリーの一冊ですね。
世界の終わりを描くSFやミステリーって、他の作品でもちょこちょこあるんです。しかし本作には、他の作品にはない圧倒的な強みがいくつもあるんですよ! ぜひそれらをご紹介したいっ
○スケールの大きさ
時代背景としては、現代よりもある程度科学が発達した近未来。世界の終わりが来てもギリギリ孤島で生き残っていた住民たち。しかし本当の終わりが近づいてきた時、そこにいる住民たち、長老と言われる科学者たちはどんな生き様を魅せるのか。
物語が後半に近づくほど危機も差し迫ってくるのですが、追い詰められたにこそ人間性が現れる。昨今、世界的にSDGsが叫ばれています。我々は本当に、このひとつだけの地球で暮らし続けられるよう真剣に考えているのでしょうか。彼らの姿をみていると、きっと自身の思慮の浅さに愕然としてしまうでしょう。
○「わたし」という視点の存在
物語は三人称視点で綴られているのですが、「エービイ」という一人称視点(わたし視点)も存在します。この「エービイ」は登場人物の頭の中におり、登場人物にも読者にも語り掛けてくるんです。
なお住民も長老(科学者)たちの頭に中にも存在し、語り掛け、指示するし、時には嘘もつくんです。この「エービイ」が何なのか良くわからんし、どう物語に絡んでくるのかっつーのが読みどころだし、引き込まれちゃうポイントなんですよね。特に終盤、ラストはもう必見ですよ、見逃せません。
○綿密なストーリーと謎解き
序盤はこの不可解な世界観に巻き込まれながら読み進めることになる。ニエマの殺害事件が起き、住民も読者も困惑の一途をたどるのですが… とある情報がだされてからは一気に物語が動き出して、謎解きミステリーが爆進するんですよ。これがすげー気持ちいいの。
また謎解きとしても中途半端じゃないんです。探偵役のエモリーが現場検証、聞き取りなど行い、犯人、動機、方法を解き明かしていく。単発でなく二重三重にもパワフルに謎解きを展開させていくのは流石でしたね。
さらに後半に入ってくると、数ページにひとつは魂に響くような重い文章がでてくる。読み込むほどに味わい深く突き刺さってくるんです。
○住民たちが鬼熱すぎて泣いちゃう
島の住民たちの絆がめっちゃ熱いんですよ。もうまもなく災厄が近づいているというのに、自分のためでなく、みんなのために行動できる人々。
特に本作の主役は探偵役のエモリーにきゅんきゅんしちゃう。彼女は好奇心旺盛で父親にはいつも諭されたりしているんですが、誰よりも家族想い、仲間想いのいい奴なんです。
またエモリーの父親セトも渋くて好き。偉ぶることをせず謙虚、真面目で一生懸命、家族のことを誇りに思っている。この二人の関係性を感じられるだけで胸が熱くなってくるんすよね。
○それで、この世界って何なの?
独創的な世界なんすよね…。幻想的なんだけど、SFっぽい冷たさも感じる。研究者たちは悪意が見え隠れするし、常に圧迫感があるんですよ。住人たちは奇妙な点も多いし、長老と呼ばれる科学者たちも各々で価値観が違って不思議さ満点。
この世界は何なのか、さらに彼らの行動の意味が理解できたとき… きっとあなたは生命というものを感じることができるでしょう。
■ぜっさん推しポイント
いま私は生きている。
私には価値があるし、みんなにも価値がある。頭脳明晰な人、力がある人、絵が描ける人、音楽を奏でる人、料理ができる人、ひとりひとりに個性がある。
それぞれの価値を持っている個が集まることで、より元気で力強い集団になっていき、より大きな課題も解決していくことができるのです。――ふと日々を振り返ると、自分のことばかり優先してたような気がして反省させられました。
Posted by ブクログ
最初は話の流れを把握するのに苦労しましたが、徐々に全体像がわかってくるにつれて引き込まれていきました。しかし、SF色が強く何でもありなので、ミステリー好きには「そりゃないでしょ」という点が多々ありました。
Posted by ブクログ
突如発生した黒い霧によって世界が滅亡。わずかに残った100名ちょっとの人々は「世界の終わりの島」と名付けられた孤島で暮らしている。島の「長老」として君臨する三人の科学者。
そしてある夜、長老の一人であるニエマが殺害される。そして住民は皆その夜の記憶を抹消されている。
SF色の強い、ある種の特殊設定なミステリでしょうか。あからさまに島に秘密があることを示唆されてってのがいかにもなSFっぽさがあって好き。最後に一気に真相が明らかになるのも気持ちの良いカタルシス。面白かったです。
ちょこちょこと「え?そんな話だったっけ?」みたいなものがないでもなかったんですが、自分が読み逃していたのか・・
Posted by ブクログ
ポストアポカリプスかと思えば、いやポストアポカリプスなんだけどこれは解放と言えるのかニエマの自己満足じゃないの!?
人間に絶望したから自分が作った新種族に譲ろう!ってなる??
でも、クラムのみんなには幸せでいて欲しい。
そして、エービイ自分を殺させてクラムを解放するって1番人間くさいのでは。
Posted by ブクログ
近未来の世界を描いたミステリー。私にはSFと言うよりファンタジーの世界を感じた。
世界の終わりの島を舞台にしたクローズドサークルミステリー。壮大な構成に相応しく内容も今までにないスケール。ここで各人の脳にプログラミングされたエービイが狂言回しの役をするのも今までにない取り組み、何度も読み返したい作品だった。
Posted by ブクログ
こんな特殊設定、よく思いついたなと。世界の終わりが迫っているというだけなら、そういう話はほかにもありそうなのだが、読んでいるうちに、疑問に思うことが出てくる。
この島では、百年以上も生きていて老人にもなっていない長老三人がいて、島の住人は長老を崇拝している。住人は決まった消灯時間でどこにいようと必ず眠りに落ちて、朝になると体が汚れていたりケガをしていたりする。まるで記憶がなく、催眠術のようだ。
そして60歳で必ず死を迎え、亡くなると子どもが補充されるようにどこかから連れて来られて、決まった人数に調整されている。もうすべての住人が本当に人間なのかもわからない。
その中で最たるものが、AIがすべての人の脳に語りかけてきたり会話できたりする点である。このAIは形はなくて、自分の脳の中にあるのだが、作成者の意図に反する言動はしないので、必ずしも正しい指示ではない時がある。
とまあ、こんな世界で起こる殺人事件なんてどうやって解決するんだ。みんな記憶もないのに、と思いきや、記憶抽出器なるものが出てくる。便利そうに聞こえるが、果たしてどうなのか。
SFとか好きな人向けに思える。
Posted by ブクログ
触れると命を落とす謎の霧が地球を覆い、世界は滅亡した。最後に残った人々は、霧を防ぐバリアに守られた世界の終わりの島で平穏に暮らしていた。そこには3人の科学者と100名余りの住民がおり、エービイというAIシステムに管理されていた。ある日、科学者のニエマが殺された。しかもシステムによってバリアは解除され住民たちの記憶は消されていた。霧が到達する48時間以内にバリアを再起動させるには犯人を見つけなくてはならない。とんでもない設定のタイムリミットSFミステリ!
まず状況設定の説明に150ページくらい費やす。これが正直分かりにくいので理解に時間がかかる。エモリーという住民が探偵なのだが、一人称で書かれてるが〈わたし〉って誰?と思うや、AIのエービイだったりする。そしてようやくその後事件が起きる。
そこからのストーリーがまたややこしい。誰が犯人なのかって、殺した本人も記憶がないわけで。さらには科学者の3人以外は人間ではないことがさらりと明かされる。最後までどんでん返しで真相がわからない。ラストのあり方には賛否ありましょうが、ミステリやSFというより人間性とは何かという話なのか。そう感じる読後感でした。なかなか読み応えありました。もはや事件の真相なんてどうでも良いくらいですね。
Posted by ブクログ
特殊設定ミステリー。
文明が黒い霧によって滅んだ後の世界。孤島で生き残った人たち。その中で殺人が起き、霧から島を守るバリアも停止してしまい、それを再稼働するためには犯人を突き止める必要がある…とのこと。
特殊すぎて設定を飲み込むのに時間がかかるんですが、犯人探しとバリア復活って別に関係なくないですか??と首捻りながら読み進めるので、物語の世界に入り込むのに時間かかりました。
文明世界を知らず閉ざされた世界で平和に生まれ育った島民たちが探偵役なので、なんというか危機感が薄い。もうすぐ霧が迫ってくるのに寝ちゃったの!?(眠らされるケースもありますが)みたいなそれも特殊設定なのでしょうが、イライラハラハラしながら読み進めました。
他の方も書かれてましたが設定が特殊すぎて犯人推理は激ムズなのでドキドキハラハラを楽しんだ方が良い気がします。最初は文明社会の生き残りの3人の科学者(技術を持ってるので長老と呼ばれている)がどうにも傲慢で好きになれなかったのですが最後まで読んでいくうちに彼らにも事情があったのかと思えるようになりました。皆んなが幸せハッピーエンドではなかったけど救いのない結末ではなくてほっとしました。
Posted by ブクログ
イギリス各紙が絶賛したという「特殊設定」ミステリ。
突如発生した謎の霧により、世界は滅亡。ギリシャのある孤島にのみ、霧の侵入を防ぐバリアが張られ、「世界の終わりの島」となった。ここに、100名を超える住民と、彼らを率いる3人の科学者が暮らしていた。だがある時、科学者の1人、ニエマが殺され、バリアが破られた。霧が島に侵入するまでの時間はわずか。バリアの破壊はニエマの死によって発動されていたらしい。ならば、ニエマを殺した犯人を見つければ、バリアを再起動できるのか・・・?
島民の1人のエモリーが探偵として謎に迫っていく。
冒頭には登場人物が挙げられていて、これらの人々がある「計画」に重要な役割を果たしているという。読者としては行きつ戻りつしてリストを確かめながら先に読み進めていくのだが、ほどなく、あることに気づく。リストには記されていない、語り手の「わたし」がいるのだ。これが何かというと、村人の脳内に直接働きかけることができる「エービイ」という存在で、AIのようなもの。村人はインプラントによりエービイに管理されている。強圧的というよりは相談相手のような感じだが、就寝時間になると寝かされたり、60歳までと定められた寿命が来ると死に至らしめられたり、となかなかの管理ぶりである。
実は、ニエマが殺された夜、島民すべての記憶がエービイによって消されていた。
さて、この異常な状況の中で、エモリーは真相にたどり着けるのか。
トリッキーな条件が重なるクローズドサークルもの、といえばよいのか。
読み方は人それぞれなのだろうが、個人的にはミステリとして読むのは比較的早い段階であきらめた。この特殊設定では「何でもあり」だろう。この世界ではこうなんだ、ふーん、そうなるのか、と物語の流れに身をゆだねるしかない。
「世界の終わり」というのは、孤島の名前と、実際に世界が滅びそうであるという時間的状況とを掛けている印象である。
終末世界を描くSF部分の設定はどうかといえば、終盤に近付くにつれて、「村人」についてのある秘密が明らかにされていく。
「長老」と呼ばれる科学者たちと村人との間には、明らかな差異があり、村人を支配しているエービイも、実は、科学者たちは完全に支配しているわけではないことが見えてくる。そこに人種差別の暗喩を見ることも可能だし、人類への風刺のように見ることも可能だろう。殺人事件の真相も含め、どこか『風の谷のナウシカ』を思い出させる設定である。
個人的にはSFが苦手なのもあって、いまひとつの読後感。
ただ、物語世界の構築はすごいと思うし、そもそもこのストーリーをどのように考え出したのかには若干興味がある。
ハマる人にはハマる作品なのではないか。
Posted by ブクログ
まず惹かれたのはタイトル。
世界の終わりに起こる最後の殺人って?という興味。
そして次に設定。
未来×タイムリミット。
探偵に課せられたのは、
人類を救うためには46時間以内に犯人を見つけなければならないということ。
この二つの要素から興味をそそられ手に取ったが、一言で言えば難解。
世界が霧に飲み込まれ、人類が滅亡した後、
唯一残された島には122人の人間が暮らしていた。
島の外は有毒な霧に覆われており、島を守るバリアが唯一の生命線となっている。
そんなある日、三人いる長老の一人、ニエマが殺害される。
彼女はバリアの維持に不可欠な存在であり、
彼女の死によってバリアは解除され、霧が島に迫り始める。
霧が到達するまで残された時間は46時間。
この世に生まれた時から自分達の頭の中で話しかけてくるエービイという存在。
そのエービイは「犯人を見つけなければ、島は滅びる」と告げるが、
事件当夜の記憶はすべて消されており、誰も真実を知らない。
島の中の人間の中でどちらかというと異端児の様な扱いのエモリーは、
島の秩序というかルールに疑問を抱いていた。
彼女は断片的な記憶と住民たちの証言を手がかりに、事件の真相を探り始める。
冷静に俯瞰して見れば小難しいことは一つもない。
だが文章のせいか、翻訳のせいなのかわからないが、
頭を悩ませるというか描写に理解が追いつくのに時間がかかるとこが多々あった。
だが、進むにつれ明らかになっていく島の謎。
そしてエモリーたち人類の生き残りに秘められた秘密。
長老と彼女らの違い。など、その設定は秀逸。
そう、この世界観はかなり好きである。秀逸な世界観。
その分、見せ方という点で乖離が生まれてしまったのか、
それともただ単に自分の頭が追いつけていないだけなのか。
読み終えた後の読後感にはスッキリというかモヤモヤが残っていた。
理解したい。この物語を理解し、歓喜したい。
こういった本の場合、二度目が必要である。
気づけば、また頭のページから捲っていた。
Posted by ブクログ
凝った構成でとっつきにくいところがあるけど、掴め出すとなるほどと感じられてくる。扉の登場人物一覧の職業を見て「?」と疑問を持つけどそれもなるほど、と。ではそのなるほどがピッタリとハマるほど気持ちがいいかというとそこまではいかない感じがもどかしい。語りの構成が物語上複雑になっていて、小説の語りとしての視点が揺れる(全てを見ることができる視点が二つある)のも入り込みづらさの一因かもしれない。それが狙いでもあるのかもしれないけど。
分かりづらさはあるけど面白くは読めました。なんとなく風の谷のナウシカ漫画版みもある。
Posted by ブクログ
SL 2025.5.16-2025.5.19
スチュアート•タートン特殊設定第3作。
百年以上生きている長老、消灯時間になると必ず眠る村人、60歳で必ず死を迎え、子どもが補充されて人の数を調整する。語り手は人々の頭に宿るAI。表面に見えるこれらの世界だけでも特殊だけど、真相はさらに複雑。殺人事件の謎解きも丁寧で、探偵役のエモリーをはじめ登場人物たちの心情がこまやかに描かれる。
人間とは、人間性とは。考えさせられる作品でもある。