あらすじ
「ぼく、おまえをずっと大切にするから、今後ともひとつよろしく頼むよ」ようやく手に入れることが叶った恋人との同棲生活。仲睦まじく二人で迎える初めての正月に、貫多の期待は高まるが、些細な事柄に癇の虫を刺激され、ついには暴言を吐いてしまう。あやうく垂れ込める暗雲の行方は――。待望の〈秋恵〉シリーズ最新作。
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Posted by ブクログ
とるに足らない痴話喧嘩。ありふれた睦言に由無し言が赤裸に綴られる。いつものように身勝手な爆発が始まり侘びしく哀しい悔恨慙愧に帰結する。4つの短編がいずれもこのワンパターンに終始しているにもかかわらず飽きさせないのは磨き上げられた秀逸な筆力のなせる技。見事というほかない。ただ淡々と流れる何気ない男女の日常風景に夫婦のあり方、他者を思う心を深く見つめ直すこともできた。得体の知れない力に圧倒された。
Posted by ブクログ
匂いに過敏な北町貫多の物語。連作4話。西村賢太「寒灯」、2011.6発行。自分本位で、一緒にいる女性に対する思いやりがなく、些細なことで暴言を吐き怒声をあげる男。これでは共同生活はできません。
Posted by ブクログ
NHK週刊ブックレビューで紹介されていたので読んでみた。
他の人のレビューを見たら、シリーズ物らしい。
主人公は性格がクズな人間だけど、初めて同棲する相手を見つけた。
そのことに浮かれていたが、だんだん本性がでて、相手が去っていくという話。
主人公の性格はホント読んでいて理解出来ないレベルでダメだし、若干の不快感さえ覚えるのに、最後まで読むのは文章の上手さだと思う。
ただ、短編の連作だと思うけど、一冊の本としてみると、これで終わり?って思ってしまった。
最後まで書ききらず、読者に想像させる小説(教科書でいうと羅生門とか)はあんまり好きじゃないので・・・
Posted by ブクログ
ようやく出来た彼女 秋恵と同棲を始めた貫多。
その約1年の同棲生活を綴った短編集。
秋恵の実家に借金をし、秋恵のレジ打ちのパート収入で生活。
自身は固定収入にならない小説を書き、陶酔する作家の高額な古本を買う。
言ってみれば、秋恵に食べさせてもらっているのだ。
だからと言って彼女を大事にするかといえば、まったくその逆、自分の欲望通りに扱うのみ。
引っ越したマンションの管理人に言いがかりをつけられたと怒り、
それを丸く収めようとした秋恵の常識的な態度にキレる。
帰宅した秋恵の肩先に付いていた香りから、彼女に疑いを抱き、
後日、自分に付いた他人の整髪料の匂いに気付かぬ彼女にキレる。
大晦日、年越しそばの出汁が薄かったというだけでキレる。
キレたら最後、ありったけの屁理屈を彼女に浴びせまくる。
どうしてそうなるのか、私には全然理解できないけど、
出てくる出てくる言葉の数々・・・ボキャブラリーの多さには感服。
決して笑う場面じゃないんだけど、笑ってしまった。
第144回芥川賞受賞「苦役列車」も読んでみようと思う。
この作者は私小説を書くので、この主人公はこの作者なんだろう。
ああ、想像しただけでも、うっとおしい。
そして、秋恵さんは最後には出ていくのだが、すごい人だと思う。
食べさせて、尽くして、キレた貫多をなだめ、悪くないのに謝る。
実在する女性なんだろうけど、今は幸せになっているかな。