あらすじ
孤独な生い立ちの20歳の主人公は、伊豆の峠で旅芸人の一行と出会った。花のように笑い、無邪気に自分を慕う踊子の薫や素朴な人々と旅するうち、彼の心はやわらかくほぐれていくのだった。淡く、清冽な初恋を描いた名作「伊豆の踊子」、「十六歳の日記」など初期の短篇5編を収録。
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Posted by ブクログ
「伊豆の踊子」は行間と空白に満ちていて、自分で埋めていくのがたまらなく心地よい。静かで、切なくて、胸が締めつけられる美しさ。一方、「死体紹介人」は……え、同じ人が書いたの!
死体を運ぶ話がこんなに不気味でいて、ページをめくる手が止まらないってどういうこと!この振れ幅が異常。
”美の極致に達したから次はわざと壊す”みたいな挑戦をずっと繰り返していたんだろうな、と震えた。
自らのスタイルを破壊し続けることでしか到達できない境地がここにある。
さすがノーベル賞……ただただ恐れ入る。正直、意味が掴みきれないところも多かったけど、それでも不思議と苦にならず、夢のなかを漂っているような読書体験だった。
巻末の語注や解説もありがたい。