あらすじ
第一次大戦後、イタリア北西部にある村。貧しい家に生まれた、石工の弟子、ミモ。村の城館に住む侯爵家の娘でありながら自立を望むヴィオラ。出会うはずのなかった二人は惹かれ合い、時に反発し、両大戦間の激動の時代を生き抜いていく。
ゴンクール賞&日本の学生が選ぶゴンクール賞受賞作!
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Posted by ブクログ
ゴンクール賞。イタリアの20世紀前半激動史を背景に、軟骨無形成症の境遇で彫刻家への道を目指す主人公とパトロン家の少女とが、お互いの人生で交差する時間を大切に描いた作品。ミケランジェロ作品と並び賞されるピエタを頂点とする彫刻家パートがとても面白かった。彼女との接点での一番素敵なクライマックスは、フラ・アンジェリコの受胎告知を見せるシーン。2人の奇特な人生が絡み合う頂点の輝きを感じ取れた。もう一つの頂点は、彫刻家としての矜持を果たした授賞式のシーン。全体に反ファシズムへのメッセージが強く込められている佳品。
Posted by ブクログ
主人公が彫ったピエタは素晴らしい。素晴らしいのだが、何故か皆、少し違和感を覚える。最後に解き明かされるその秘密。そこに至る数多くの伏線。作者のJ.B.アンドレアの構成の才能は素晴らしい。
近代イタリアの歴史や事件を織り交ぜながら、文化遺産の解説までしてくれるので現地を旅しているようだ。権力者と貴族たちの謀略に抗う貧しき人々。目まぐるしい展開は、豊かに描写されている登場人物たちの動画のよう。読者は彼らのうちの誰かのファンにさせられてしまう。エンタメ&教養小説とも言えるが、ジェンダー問題など、現代的価値観もしっかり反映されている。
翻訳は素晴らしく、とても読みやすい。
惜しいのはタイトルが原題の直訳であること。もう一捻り欲しいところ。
Posted by ブクログ
読み慣れていなくて何度も戻ったりしながら読む。
(訳自体はとても読みやすい)
彼女がどうなってしまうのかが気になって、ページをめくる。聡明で好奇心旺盛で、自分の信念に忠実で。
でも、女性ゆえ不遇、批判される人生を送り、誤解されるというか輝けない、思い通りに生きられない。
イタリアのファシズム含め時代の暗さと反動の芸術性の対照さも見られる。
彼女が最後にミモに送った手紙がユーモアがあって悲しくてとてもいい。ミモとの友情?愛情?時にねじれたりもするけど、ヴィオラはミモを唯一の理解者と思い時に甘える。そんな関係にミモは自信をつける、そだててもらう。
いつも出てくるオレンジやネロリの描写が香ってくるようなポイントとして明るい印象となる。
彼は、残りの余生どのように生きたのか、濃すぎる半生(前半)に思う。彼女をずっと思いながら。関係ないけど、修道院の臨終の場面が質素過ぎる。