あらすじ
法はいかにして文明を構築したのか? なぜヨーロッパの法が世界を席巻したのか? 古代のハンムラピ法典から、現代の国連法まで、4000年に及ぶ法の歴史を紐解く決定版。
「ルール」はいかに世界を変えたか
マフィアの掟、宗教の法、チベットの慣習法……
国家の法にとどまらず、これまで見過ごされてきた〈共同体独自のルール〉にも光を当て、
法の役割を捉え直す。
古代のハンムラピ法典から現代の国連法まで、
4000年に及ぶ法づくりの歴史を俯瞰した、法人類学の決定版。
■ ■ ■
法はたんなる規則の集まりではなく、
秩序と文明をつくりだす手段にほかならない。
人間社会がなぜこのような形になったのかを知りたい人にとって、
必読の一冊だ。
――ラナ・ミッタ―(オックスフォード大学教授)
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Posted by ブクログ
ハンムラビ法典から現代の国際法まで人類と法の4000年の歴史を綴った一冊。
個人的に面白かったのは中世アイルランドの法の約半分が地位に関して言及しており、あまりにも細かく言及しているのでその中にはプロの屁こき師という身分についても述べられていたこと。ここまで詳しく身分について述べているのは実際には整然としていない多様な社会的関係に法によって秩序をもたらそうとした試みであることが興味深かった。
法はそれぞれ独自のものがあるが、それを成分化することは独立のしるしだと著者はいう。古代文明国の周辺国も次第に法の効力を認めて法が広く広まって行ったことを考えると面白い。
少し、私はこの本を読むには知識不足で難しいところが多々あったので、もう少し世界史・宗教史・民俗学の知識を身に付けてからもう一度読み直してみたい。
Posted by ブクログ
法を生み出したメソポタミア、インド、中国の法の起源と大目的を記述。
・メソポタミア:紀元前4千年紀にはウル第3王朝に「ウルナンム法典」既に現代に続く「決疑法形式」を採用。さらにハムラビ法典に。基本的な法令のほかは特殊ケースを定めており一般的ケースは定めていない(慣例・常識による御成敗式目に同じ。)、また、考古資料からは法令としてどの程度採用されていたかは不明。一方エジプトは法がない社会。王が寛容を示し、神の言葉として立法し、人民の正義の実現を大目的。
・インド;ヴェーダはあったが、義務や祭儀、2世紀のクシャナ朝で「マヌ・シャーストラ(法典)」が成立。バラモンが立法し、主にバラモンとクシャトリアの義務、食事、冠婚葬祭、セックスを含む生活全般の規律、刑罰、司法手続などだが、家族法、財産法、契約法なども規定。ダルマ(宇宙の秩序)の実現が目的。
中国;懲戒と刑罰の秩序。皇帝が立法し、法により、官僚、経済、社会等の統制を図る。民事も刑法によることになるため、民事上の争いの多くは実際は訴訟せずに解決。均分相続が原則であるが、均分相続に反すると刑罰の対象。唐律により体系化が完成。
ローマ:法は市民が正義を求めるための道具であり、十二表法以来時代とともに市民の手により変遷、ユスティニアヌスのローマ法大全により固定化を図ったが。
ユダヤ教:聖書と口伝からラビが体系的なトーラーを編纂
イスラム:クルアーン等の類推や慣行からカーディーやウラマーが規範を編纂。立法は神であり、解釈立法。
中世ヨーロッパ:教会法(ローマ法)やサリカ法典(部族法)などがあったほか、イングランドではコモン・ロー
中世には、世界各地で「法の支配」が浸透することにより、権力の制限、正義の保証、取引の安定が生み出されいった。皇帝が法の外に立ち「法による支配」が精緻化した中国を除いて。裁判制度は普遍的にみられ、神判、誓約、拷問による自白の強要などから証拠、尋問、陪審員制などへの移行がみられた。浩瀚な
な事例をひいているが聊か煩雑。
近代以降は弁護士とはいえ人類学から記述するものではないと思う。人類学の視点からの統一的記述か?
・国民国会の成立によりプロイセン大法典等の編纂、さらにナポレオン法典等の成文法、一方イングランド・ウエールズ(スコットランドは異なる)でコモン・ロー。世界の欧米化により、徐々にヨーロッパ法が広まる。
・例外:イスラームのシャーリア、チベット遊牧民の血讐、アルジェリア山岳民のカーヌーン、ユダヤのダイヤモンドシンジケート、マフィアのオメルタ