あらすじ
各界の天才が一堂に会していたウィーンで、天才とは程遠い負け犬だったヒトラーは、ユダヤ人絶滅を「善」とする主観を形成した。彼の過剰な健康志向・潔癖症の根もウィーンにある。だが現在ウィーンからヒトラーの行跡は消されている。それをあぶり出すべく、ウィーンと関係の深い哲学者が怪物の青年期を様々な視角から追う。
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Posted by ブクログ
哲学者である筆者が、自身の人生において意味が深いウィーンを舞台に、同じくそこで青年期を過ごしたヒトラーの足跡や心情を、数々の場所をキーワードにして考察した本。
芸術家を志したが、ウィーンという都市にことごとく拒否された頃のヒトラーの惨めさが、生々しく伝わってきた。
ただ、特段、ヒトラーだからというエピソードは無く、才能と努力を否定された一人の青年の姿があるだけ。
この男が、並外れた何かを持っているとは、このウィーン時代を見る限りは、到底思えない。
筆者も最後に書いているが、人間が何を駆り立てるか、そして、その行動に対する、運命の符合の奇妙さというものを、これほど思わせてくれる人生も、確かに無い。