あらすじ
昭和のはじめ、瀬戸内海べりの一寒村の小学校に赴任したばかりの大石先生と、個性豊かな12人の教え子たちによる、人情味あふれる物語。文教場でのふれあいを通じて絆を深めていった新米教師と子どもたちだったが、戦争の渦に巻き込まれながら、彼らの運命は大きく変えられてしまう……。戦争がもたらす不幸と悲劇、そして貧しい者がいつも虐げられることに対する厳しい怒りを訴えた不朽の名作。(C)KAMAWANU CO.,LTD.All Rights Reserved
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Posted by ブクログ
「二十四の瞳」→12人の子供たちの目の数
→12人の子供たちの「思い」や「視点」に
筆者は重きを置いているのかなと想像。
教え子が夢を追えず、男子は生きて帰って来れるか分からない戦へ出かけなければならないという、戦争への怒りが非常によく伝わってきた。
戦後80年になった現在こそ、
当時のリアルを知る為に読むべき小説だと思う。
Posted by ブクログ
小豆島の漁村に師範学校を出たばかりの大石先生が赴任し、そこで12人の子供たちと出会いう。
彼らが卒業する頃には次第に戦時色も強くなり、男の子たちは戦地へと赴く・・・。百合の花の弁当箱や服や草履にこっそり明るい色をしのばす女の子たちの姿にやるせなさを感じる。そして、戦争によって家族が亡くなっても大っぴらには悲しめない、そのこと自体が許されない社会で、大石先生の息子が父親が戦死したことを「名誉」だと当たり前に感じている姿が怖かった。
疑問を抱くことすら出来ない社会が今もあることを忘れてはならないと思う。
Posted by ブクログ
岬 村 一本松 大石先生 自転車 一年生 落とし穴
岬を舞台にした、12人の子供達と大石先生の物語。
岬という舞台がとても美しく描かれることと相反して、
彼らに襲いかかる戦争が生み出す
苦しさ、ひもじさ、
身内、親戚、友達が死にゆく悲嘆。
それに対し一心不乱に戦い散っていく命、と
生きながらえる命。
小学校教師として、
彼らに夢を持たせたにもかかわらず
兵役に就く男の後ろ姿、それにやるせない感情を抱いた
大石先生には同情しかねない。
戦争の悲惨さ、
そして現在、我々が当たり前のように享受している
平和、裕福さ、それらを
ひしと感じた作品であった。
Posted by ブクログ
「不朽の名作」と裏表紙に記されているが、この小説は文学的価値が高いというよりは戦前から戦後に至るまでの当時の日本の生活や雰囲気、人々の思想などがリアルに描かれた歴史的資料としての価値が高い作品だと感じた。
私は、新人教師とその子ども達との心の触れ合いというのが主として書かれた作品だと思ってこの本を読み始めたため、主人公の新人教師である大石先生が作中、怪我や出産で教壇から離れる期間があること、授業を行っている場面がかなり少ないことなどから、「思っていたのと違った……」というのが正直な感想だった。
話が面白いか、登場人物の造形が素晴らしいか、文章そのものは優れているか、といった点では首を傾げてしまうが戦争の悲惨さや作者の抱く戦争に対する感情といったものはひしひしと伝わってくる作品だった。
なお、似たような設定であれば『兎の眼(灰谷健次郎)』の前半部の方が作品の出来としては圧倒的に高いため、新人教師と子ども達の心の触れ合いをテーマにした作品を読みたい方は、そちらをオススメします。
(両作品のテーマや主人公である新人教師の設定が類似していること、プロレタリア文学の要素を含んでいることなどから、おそらく『兎の眼』を執筆するにあたって、作者は『二十四の瞳』を参考にしていると思われる)