あらすじ
非情と外道がこの家の規律だった。1945年、東京。関東最大級の暴力組織、水嶽(みたけ)本家の一人娘・綾女(あやめ)は、父の訃報に呼び戻され「組長代行」となることを余儀なくされた。戦後混乱期を牛耳るヤクザたちの熾烈な抗争、利権を貪るGHQ、それらを利用しようとする大物議員。流血も硝煙も権力の策謀も懼れぬ究極の「悪女」と化した綾女が、最期に目にするものは。一気読み必至の超弩級ピカレスク・ロマン。(解説・末國善己)
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Posted by ブクログ
戦後焼け野原となり、秩序も治安も乱れ切った東京の街を取り仕切ったのは、GHQでも警察でもなく、やくざたちだった。
原爆で焼き払われた広島の戦後動乱期を描いた仁義なき戦いを彷彿させる傑作。吉田茂や鳩山一郎、山口組三代目に美空ひばりなど、仮名を使っているがモデルまるわかりの実残の人物が出てきて、実際の事件も扱われるなどしているので、リアリティがあって、なんというか朝日芸能のヤクザ記事を少し高尚な小説にした感じ(誉め言葉)
もはや歴史の範囲になる、昭和混乱期の話だと思っているが、安倍や麻生はここに出てくるヤツらの末裔だし、安倍襲撃事件の根本、統一教会も根っこ勝共連合というこの時代のヤクザや右翼や政治家たちの生み出したものだし、そこに関連する裏金疑惑の萩生田は自民党の要職にカムバック…この小説で描かれたディストピアな日本は今にも十分通じているのかもしれない。
Posted by ブクログ
好き嫌いわかれるだろうけど、個人的にはこの結末しかないんじゃないかと思った。というか、この結末じゃないと納得できないかもしれない。でも、なんだかな、なんにも言えなくなっちゃう。戦後の日本で、望まないままヤクザのトップになった綾女の立場で、いったいなにが正解だったんだろうね。なにがただしいと言えたんだろうね。
Posted by ブクログ
昭和20年8月15日、信州から東京に帰る途中の駅舎で玉音放送を聞く水獄綾女(23歳)
関東を牛耳る水獄組4代目の父の危篤の知らせに渋々ながら帰宅する途中だった
「あの狂った家には戻りたくない」
そう思っていた綾女だったが、子分の青木家が自分を庇い惨殺された現場を目にし、水獄組の跡目として生きて行くことを決める!
美人で優しく教師として働いていた綾女が自分に流れるヤクザの血を呪いながらも、ヒロポンを打ち、血にまみれたヤクザの世界にどっぷり浸かっていく
戦後復興期の血塗られたヤクザの抗争と並行に実在の人物(吉田茂・鳩山一郎・美空ひばりなど…)をモデルにしたと思われる登場人物に大物政治家とのやり取り、GHQとの駆け引きなど当時の裏社会も興味深くページをめくる手が止まらなかった
そして、壮絶なラストには度肝を抜かれた…
ー 聖女か、悪女か、獣物か
かなりグロテスクな描写が続くため苦手な人は要注意!
Posted by ブクログ
戦後の日本の闇社会のプリンシパルを
極道大河小説風に
極道の家系に生まれるも 教室の道を選んでいた女性が、父親の死により突如「組長代行」を担うようになる
彼女は血筋の才覚か、時代の本流に乗り
経済・政治・外交の闇世界のトップとして走り続ける
なかなかの獣ぶり
ビマキさんの好みの死に方ではないと思うけど
抗争やら闇討やら拷問やら犠牲者多々
参考文献からすると 極道非道の数々は
ある程度史実として読んで良いのでしょうか?
猟奇でも狂気でもない本気の極道
Posted by ブクログ
長浦京『プリンシパル』新潮文庫。
終戦後の東京を舞台に関東最大の暴力組織のトップとなった女性を主人公にしたピカレスク長編小説。
長浦京の作品を読むのは『リボルバー・リリー』『マーダーズ』『アンダー・ドックス』『アキレウスの背中』に続き5作目。『リボルバー・リリー』と『アンダー・ドックス』は非常に面白かったのだが、『マーダーズ』と『アキレウスの背中』は凡作と駄作だった。どうやら、長浦京は作品により当たり外れの振り幅が激しいようだ。
さて、本作。タイトルの『プリンシパル』からして、強く華麗な女性の生き様が描かれるのかと思ったら、次々と男に色目を使い、組織のためと言いながら、身内にまで残虐な行為を繰り返す、ヒロポンに溺れた醜悪な悪女が描かれたことに、がっかりした。特にラストが良くない。
終戦を迎えた昭和20年、関東最大級の暴力組織、水嶽本家の一人娘である綾女は、父の訃報に疎開先から東京に呼び戻される。水嶽本家が他の暴力団から狙われていたことから、綾女は青池家に匿われる。その夜、青池家を暴力団が襲い、地下に逃された綾女以外は女子供関係なく惨殺、または瀕死の重症を負う。
青池家の無念を晴らすため、綾女は高等女学校の教師を辞め、水嶽本家の組長代行を務めることを決意し、青池家を襲撃した暴力団に容赦無く復讐を果たす。
本体価格1,050円
★★★