あらすじ
親や学校、すべてにイライラした毎日を送る中2の百合。母親とケンカをして家を飛び出し、目をさますとそこは70年前、戦時中の日本だった。偶然通りかかった彰に助けられ、彼と過ごす日々の中、百合は彰の誠実さと優しさに惹かれていく。しかし、彼は特攻隊員で、ほどなく命を懸けて戦地に飛び立つ運命だった――。のちに百合は、期せずして彰の本当の想いを知る…。映画化決定! 大ヒット作が単行本になって登場。単行本限定の番外編も収録!
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Posted by ブクログ
読み終わった後は、色々な感情で胸がいっぱいになった。今までで一番心を動かされた作品だ。こんなにもメッセージ性がある作品を読むのは初めてだ。戦争は絶対に良くない、起こすべきでないものであるというのは読む前からわかっていたが、作中、戦時中の世界の景色、人間、生活を見て、過ごした百合の戦争に対する嫌悪感、忌避感をたっぷりと孕んだ数多くのセリフ、心の声を通して、戦争なんて絶対に異常だし、狂っているし、馬鹿げているという気持ちがありありと伝わってきた。そして、現代の若者の感覚を持っている私もまた、それに共感し、同じ感想を抱いたが、止むを得ず戦争は起こり、軍人たちもどこかでおかしいと思いながら、自分たちがやるしかないと思っているという気持ちもわかった。今まで持っていた、戦争はこれから絶対に起こしてはいけないものと言う認識に加えて、今在る生活は、過去の人たちが命をかけて繋いだ、心の底から願った、夢見た、喉から手が出るほど過ごしたいと思った平和な世の中なのだと感じた。軍人も、出来ることなら敵国の相手を傷つけたくないし、家族や友達、愛する人たちと共に過ごしたいとは思いながらも、それを口に出すとまわりから非国民であると思われるし、敵国をねじ伏せたいという思いよりも、母国の愛する人々を守りたくて、平和な世の中が欲しくて、また、後世に繋ぎたくて戦っている側面が大きいのだとわかった。最後、彰が特攻する場面で、特攻せずに海に堕ちたのは、敵国の相手もまた、守りたい人達がいてその人たちを守るために命を張って戦場に出ていることを考えたからで、それほど彰にとって守りたい人たちの存在は大きなものだったのだと思う。途中までは、百合から見て軍人や特攻隊の人たちは死んでまで戦争に勝ちたいのは理解できないという認識であった。しかし、その人たちの後ろには家族や友人がいることや、板倉が特攻隊から逃げたいと本音を言うシーンを通して、軍人たちも本当は戦争なんてしたくない、同じ「死にたくない、生きたい」と思っている人間なのだと認識し、だからこそ行くしかないと決意して戦場に出る軍人たちを見て苦しくなっていったのだと思う。特攻前最後の夜に、彰と百合が、百合の咲く丘で話すシーンでは、2人はこんなに想いあっているのに、彰は特攻に行かなければならないと言う切なさがまざまざと伝わってきた。暗い夜の丘で、百合の濃密な甘い香りに包まれながら静かに煌めく星の灯りだけに照らされて語らう情景に、今までにないほど入り込んでしまった。まるで自分もそこにいるかのように感じた。花の香りと、吹き抜ける夜風さえ感じるほどだった。特攻命令が出た夜、鶴屋食堂で彰の班の人たちがいつも通りに話し、冗談を言い会うが、いつもよりふしぜんなちんもくがうまれたり、沈黙が生まれると全員視線を落としたり何か物思いに耽るような描写は、心が痛くなった。また、ツルさんから寝床、食事を与えてもらって百合は心から感謝すると同時に、なぜそれと同じことをしてくれていた母親に感謝の言葉はおろか、反抗的な態度すらとってしまっていたのか、と後悔する百合を見て、自分もはっとした。寝床や食事、その他数えきれないくらいたくさんのものを両親から貰っているが、感謝はしているつもりでも貰い続けている中で当たり前だと感じるようになっているような気がする。親は子にそれを与えるのが当たり前と言えば、それは当たり前なのかもしれない。しかし、普通に考えたらそれは当たり前なわけない。それを生まれた時から与えられ続けているからといって、感謝する心が麻痺しているのかもしれないと思った。親は与えるのが当たり前だと思っていたとしても、子はそれを当たり前だと決して思ってはいけないと思う。それは親子の関係だけにとどまらず、他の人間関係にも当てはまると思う。いつもしてくれているからといって、段々と与えられている側の感謝が薄まっていっては決していけない。初めてそれをしてくれた時の感謝を忘れずに、その感謝を例え照れくさくても、相手に、自分は当たり前だと思っていない、とても感謝しているという意を伝え、見せ続けないといけないと思う。洗濯物と風呂掃除どっちがやるとか、こっちやったからこっちやれよとかいつも言っていて、それすらしない姉にとても腹立たしく思うが、自分の役割は果たしたからと変な頑固はやめて、親のために、出来る限りのことはするべきだと思う。百合の70年前の生活を通して、現代の普通の生活は本当に平和で贅沢で、70年前の人たちが、文字通り死ぬほど欲しかったものなのだと思った。戦時中の人々は、もし戦争がなければ、とどれほど思ったのだろうか。今の自分は、その思いに応えられるような自分であるだろうか。何か特別なことはできなくても、せめて平和な世の中は過去の犠牲があってのことで、極めて幸せであると言うことは決して忘れずに生きていきたいと思う。
話は変わるが、ラブストーリーとしてもめっちゃ良かった。死ぬとわかっている人へ想いを寄せる切なさがよく描かれていた。途中の、甘味処での会話もめっちゃ良かった。最後の手紙は感動した。百合が人目も気にせずわんわん泣くのもわかる。上でも書いたが、特攻前に百合の花が咲く丘での情景描写はすごかった。まるで自分もそこにいるかのように感じた。映像がまざまざと流れてきた。
Posted by ブクログ
感動。半泣きでした。
最期彰が船にぶつからないのがいいよね。
百合がいい子になってくのもいい。
板倉さん、許嫁とどうなったかねー。
寺岡さんの奥さんと娘気になる。
映画もいいよねー❤️
Posted by ブクログ
本を読んでここまで泣いたのは初めて。
戦争を経て平和になっている現代だからこそ、たくさんの人に読まれるべき作品。
個人的にとても素敵だと思ったのは、タイムスリップを終えてから自分という存在がその時代に間違いなく"居た"という事実があるところ。
この事実があることでメッセージ性の強い作品になっていたと思う。
今の日本があるのは過去の人々が繋いでくれたバトンの上で成り立っていることを忘れずに日々を生きたい。
Posted by ブクログ
反抗的な女子中学生の百合が大東亜戦争終戦前夜の1945年の真夏に突然タイムスリップしてしまう。そこで特攻隊員の彰に出会い、やがて否応なく訪れる「出撃」という別れ。
戦争という現実。
百合は、南の空へ『特攻』として死に往く彰を愛してしまい、もがき苦しむ。
彰は戦争という現実に直面するなかで『特攻』という使命を見出し、死することを決意する。その彰の悲しみ、憤り、そして愛を知る悦びと苦悩。
戦争の悲惨さを知らない世代に戦争というものを疑似体験させることができるいい作品といえる。
戦争は絶対に起こしてはならないし、ましてや巻き込まれてもならない。しかし、口先で反戦を訴えるだけでは決して国民は守れないし国土も守れない。
これが今の世界を生きる者の現実であると思う。
戦争にあらがうために「今、何ができるのか」を再考する機会を与えてくれる作品である。
以下の引用にある百合の決意が心に沁みる。
「私は今、あなたたちが守ってくれた未来を生きています。
あなたたちが願った、明るい未来を生きています。
素晴らしい未来を私たちに残してくれてありがとう。
あなたたちのことは絶対に忘れません。あなたたちの犠牲は絶対に忘れません。
あなたたちが命を懸けて守った未来を、私は精一杯に生きます」(352頁)
(あらすじ)novema.jp から抜粋
うだるように暑い夏の日、母親と喧嘩して家出した翌朝、目を覚ますと、そこは1945年、戦争の真っ只中だった。
そこで私が出会ったのは、特攻隊員の彰。穏やかで、あたたかくて、何度も何度も私を助けてくれた、強くて優しい人。
でも、好きになってはいけない。好きになっても報われない。だって、彰はもうすぐ南の空へ『死にに往く』んだから……
Posted by ブクログ
リアル本にて。
「考察する若者たち」で中高生に人気の小説として紹介されていたため、購入。
中学二年生で反抗期真っ只中の現代に生きる少女が、1945年にタイムスリップし、特攻隊に所属する青年、彰と出会い、恋に落ちる。
戦時中、しかも特攻隊が舞台ということで、少しハードルが高く感じられるが、実際読んでみるとすごく読みやすい文体で、分量も多くなく、読書筋力があまり要らない本だった。
個人的に、ラストシーンは腑に落ちなかった。百合は、彰たちの尊い犠牲の上に、現代の平和な生活があると気付いた。一方でら彰は、最後の最後、米兵の恐怖の表情を見ることで、相手にも家族があることに気付き、撃沈することなぐ、自分だけ海へ墜落する、という選択を取った。
すなわち、表面的には彰は日本軍に貢献していないことになる。この行為による効果の先に今の日本がある、ととらえるべきか?
このモヤモヤが解消するかはわからないが、同様に読みやすいだろうので、続編も気になる。