【感想・ネタバレ】願わくば海の底でのレビュー

あらすじ

東北地方沿岸部のとある高校。そこで起こるささやかな謎の中心には、いつだって彼がいた。校舎が荒らされた前夜に目撃された青い火の玉。プールサイドで昼食を取っていたとき、話しかけてきた同級生を水中に突き飛ばしてしまった女子生徒の真意。テーマ不明の、花瓶に生けられた花の絵。そして、高校卒業後大学に入学するまでの何者でもなかった二〇一一年の“あの日”以来、私たちの前から姿を消してしまった彼自身──。これは大切なものほどなくしてしまう悪癖に悩まされ、それでも飄々と振る舞う青年が歩んだ、高校生活三年間の軌跡を辿りなおす物語。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

器が小さくて、臆病で、残酷。他人から憎まれ、疎まれ、嫌われながら、恐らく1番傷ついていた菅原晋也に深く感情移入してしまった。
東日本大震災で行方不明になってしまった彼の記憶が、生き残った彼の周りの人々の人生に織り込まれ、浄化されていくのが切ないが妙に現実的だと思った。彼に対して、もっと複雑な感情を抱いていたはずの人たちも、罪悪感と後悔と苛立ちに疲れ、やがて彼を記憶の底に沈めてしまうのかもしれない。
それでも目を閉じて彼を思い出す、その幕間の一瞬に、愛されたいと願っていた菅原晋也という人間に対する祈りが少しでも含まれていたなら救いだと思う。今年読んだ中では1番好きです。

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2025年07月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

会えなくなってもずっと忘れられない人っていますよね。 いまどうしてるかな、会いたいな、って。


美術部の仲間や顧問、同級生から語られる高校生の菅原晋也という人物は、飄々としていて掴みどころがなく しかしなぜか憎めない そんな存在でした。

高校から美術を始めたにも関わらず、美大に現役合格してしまう菅原晋也。

彼はある人にとっては嫉妬の対象であり、またある人にとっては淡い恋心を抱く異性であったり…。

そんな菅原晋也本人は、「大事な物ほど持ち帰るのを忘れてしまう」という悪癖に悩まされる ごく普通の高校生でした。

第三者から語られる菅原晋也の姿には いつも「日常の謎」がセットとなっていて、ほろ苦青春 日常系ミステリーの雰囲気で話は進んでいきます。




ささやかな日常を根こそぎ奪い去っていった『あの日』を迎えるまでは…。

大切な人との突然の別れ。
東日本大震災の行方不明者数は2500人を超えます。

年月は人の心を癒すのでしょうか。
行方の知れない人との「別れ」は、何年経てば生きているという希望に区切りをつけられるのでしょうか。

最終章で解かれた謎は あまりにも辛いものでした。

牙を剥いた自然の脅威に 人は為す術もないのでしょう。

菅原晋也はあの日 どこで何を思っていたのかな

共に過したあの場所で、
一緒に青春を謳歌するはずだったあの場所で、
今日も穏やかな海を眺めて。

何度でも思いだそう。

そしてあなたは願わくば…


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2025年11月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

東北地方沿岸部のとある高校に菅原晋也は居た。何故か大切にしている物を忘れてしまう悪癖があり、それに悩んでいた。どこにでもいる普通の男子高校生、菅原を中心としたちょっとした出来事。だが、美大へ合格して進学するはずだった菅原は居なくなった。あの震災に巻き込まれて…

飄々として、どこか憎めない菅原。美術の才能があって、これからを期待されていたのに、津波によって全てが無くなった。菅原の同級生・本郷藍と後輩の小野寺宗平が菅原の最後の姿を追った先に待ち受けていた真実が、あまりに切なかったです。

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2025年05月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「もしかしたら」という望みを持ち合わせ続ける辛さが身に沁みました。生きていて欲しいのに、そうじゃないと分かった時、悲しみはもちろんあるけれど、少し安心感もあったのかな。心苦しいけど、消化もできないけど、よかったって、何とも表現できない感情。残酷だけど、温かい気持ちにもなる。

個人的に「空っぽのロッカーで」が好きでした。言ってしまえば、超他人の佐藤美咲が思いを馳せるエピソードを書くってすごいと思いました。他の章より短いのに、非常に心に残りました。

額賀澪さんは、どこか掴みどころがない、目を惹く儚い人物の描き方が本当にうまいと思います。
菅原晋也という人物が、非常に心に刻まれた感覚があります。菅原晋也が、何を思って、何を感じたか、菅原晋也自身の口から聞けないもどかしさ。彼の人となりをもっともっと知りたくなっています。何かのタイミングで、菅原晋也という人物を思い出してしまうんだろうと思います。

額賀澪さんの作品は4作目です。共通して感じたのは、私はハッピーエンドが好みなのですが、額賀澪さんの作品はあまりスッキリしない終わり方をするなあと感じでいます(あまり良い言い方が思いつかずすみません)。でも、少しモヤっとするけれど、心に残る、忘れられない作品を描く額賀澪さんの作品が大好きで、ハマってしまっています。

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2025年05月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

後輩くんの立場を思うとどうしようもなかったとは言えとても辛い本を読んだ気がする…。 最終章を読んだら前4章が吹っ飛んでしまったぐらいには…。

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2025年09月26日

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