あらすじ
「バーチャル世界」で格差を埋める人々が急増
「パラサイト・シングル」「希望格差」「婚活」などの言葉を世に出した、
稀代の社会学者による現代日本社会の実像
私の分析は楽観的なものではない。格差は広がるだけでなく、固定化し、経済的に行き詰まりをみせている。しかし、様々な意識調査で、平成期に人々の生活満足度は上昇している。特に格差拡大の被害を最も受けているはずの若者の幸福度が上昇している。その秘密は、人々がリアルな世界ではなく、「バーチャル世界」で満足を得る方法を見いだすようになったからと考えている。バーチャル世界に意識を向けさえすれば、平等で希望に溢れた世界を体験することができる。
バーチャル世界は、人によってその内容は異なる。ある人はペットとの関係に、ある人はソーシャル・ゲームの中での活躍に、ある人はアイドルの推し活に、幸せを見いだしている。バーチャルな世界の広がりが、日本社会にとってよいことなのかどうかは、現時点では判断できない。それでも、リアルな世界で格差が広がる中、格差を埋め、人々に幸せを供給するプラットホームとして機能していることは確かなようにみえる。
(本書「まえがき」より抜粋)
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
格差が生まれるメカニズムとゲーム・アニメ等オタク趣味の立ち位置を知りたかったところ、まさにどんぴしゃの内容が書かれておりホームラン本であった。
経済が衰退した日本では格差が固定化し、個人が一定以上の努力してもその格差を覆すことができない上に世代を超えて格差は持続する。昭和的な幸福な人生像を描くことは困難である。
現在において格差を埋め合わせるのがバーチャル世界である。
パチンコ、ゲーム、ネットにより努力が報われる体験を得つつ、同じ趣味の仲間から肯定的評価を得る。
本書では格差が広がる中で日本人の幸福感が右肩上がりに増加しているのはバーチャル世界で格差を埋めているからだと主張している。
とすれば、ゲームやアニメなどで現実逃避せず、努力し続けろというありがちな主張はあまりにも酷ではないだろうか。「日本国民よ、結婚・出産し人口を増やし、経済成長のために懸命に働け。」というのは強者の理論であり、ほとんどの人が報われずより不幸になるだけだろう。
「日本が衰退して何が悪いか!」
この言葉が著者の意思を反映しているかは分からないが、僕は共感を覚えずにはいられない。
Posted by ブクログ
・平成時代の4つの負のトレンドー経済停滞、男女共同参画停滞、少子高齢化の進行、格差社会の進行、一方で、生活満足度の上昇
・工業時代に適応した、日本型雇用システムと生物役割分業型家族とそれにより形成された価値観とそれを支える制度が昭和の経済成長と格差の縮小を齎した。
・結果グローバル化・脱工業化に適応できなかった。とりわけグローバル化にさらされないL企業。
・戦後の昭和期ー一億総中流、平成期ー希望格差社会の発生、令和期ー格差の固定化
・バーチャル(パチンコ、推し活、ネットゲーム、キャバクラ、ペット等)で格差を埋める時代。かつては現世が負でも宗教(マルクス主義の革命を含む。)が来世を肯定したが、宗教がだめになりバーチャル。
・経済停滞・人口減少の時代(平安後期、江戸後期、現在)はバーチャル文化の時代
・現世でもバーチャルでも希望を持ていない人は、原理主義宗教、ポピュリズム、自己実現犯罪
・幸せに衰退 徐々に生活水準が下がっても、リアル又はバーチャルで万ゾックしていれば、それなりに満足。正規雇用者と正規雇用者カップル、正規雇用者と結婚した女性はリアルでの満足、非正規雇用でも、ある程度の生活は維持でき、バーチャルで満足。生活に本当に困らなければリスクを取らない。
Posted by ブクログ
この60年、色々変化が速くて、この先も、どんなふうに変化していくのか、全くわからない。
子どもの頃、当たり前に思ってたことが、今では時代遅れになっている。それも、化石レベル。
読後、「幸福に衰退」の意味がわかり、納得。が、昭和生まれは余計に心細くなってきたかも。