あらすじ
※このコンテンツは、2008年11月に配信を開始した電子書籍の表紙を新たにし、文庫版解説と追記を加えたものです。本文内容に変更はありません。
名探偵は、せつないホームレス
マンションで親子三人が惨殺された。一人残された美少女が心を開いたのは、デカ上がりのホームレス探偵! 傑作書き下し長篇
現住所=代々木公園の西門そば。仕事=リヤカーでの廃品回収。主食=焼酎。煙草=原則として路上で調達。ホームレスで元刑事の椎葉明郎は、かつて指導した女性刑事・吹石夕子に雇われる。日当は二千円。依頼は、事件の真相解明。両親と次女の一家三人が殺された事件だ。物証からは犯人像が浮かばず、怨恨でもなさそうだ。では犯人の狙いは何か。その夜、外泊していた長女は事件に関係があるのか? モテない女性刑事とホームレス探偵の捜査の行方は……。
解説 池上冬樹
単行本 2003年10月 文藝春秋刊
文庫版 2006年10月 文春文庫刊
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Posted by ブクログ
表紙に惹かれ手に取りました。お恥ずかしながら初めての作者さんでしたが、2021年ご逝去とのこと、続編を待ち望むことは叶わないんだな、というのが読後の最初の感想でした。面白かったー!
ハードボイルド、の言葉が裏表紙にありましたがそこまで硬すぎず、かといって本格ミステリでもなかったと思います。筋としては殺人事件の新犯人捜し、なのですが、超推理や謎解きはあまり複雑に無くて、椎葉という主人公の人生をなぞるような場面が私は読んでいて心地よかった。ブレない諦念、というんですかね…30過ぎにしては人生悟りすぎでは、と思わなくもないけれど、元妻との境遇の対比が(暗に元妻が悪く描かれているような気がしなくもなかった)ラストにつながっているんですかね。きっと椎葉は幼い頃から孤独に慣れさせられすぎていて、一人でいる自分に違和感は無いのでしょう。それでもまるっきり誰もの存在がない世界観で生きるには寂しがりすぎて、ホームレスという特殊な社会は息がしやすかったのかもしれない。
椎葉が座間味まで無事たどり着いて、トメさんの遺骨をご親族にお渡しできて、その後 暖かくゆるやかな時間が過ぎていく島で、無理せず暮らしてほしいと親のように願ってしまいます。
Posted by ブクログ
探偵役が「ホームレス」というミステリも
なかなか珍しいのでは(^ ^;
ま、ホームレスと言っても、主人公(?)の椎葉は
「元優秀な刑事」なわけですが。
で、このホームレス椎葉氏が、ひょんな偶然で
後輩の女刑事に「発見され」て、
日給二千円で助手として雇われるというお話(^ ^
確か警察官は基本的に二人一組で行動するはずが、
件の女刑事は常に一人で独断専行してたり、
長いことホームレスで「準寝たきり」の椎葉氏が
暴漢に襲われると鋭い柔道技で撃退したりと、
内容的にはかなりファンタジー入ってると思います(^ ^;
でも、刑事部屋の描写とか、細かいところが
変に(失礼!!)リアリティに満ちあふれていて、
全体的には何となくリアルな印象かな(^ ^
椎葉氏の「鋭い推理」が外れたりするのも
スーパーマン過ぎなくて良い(^ ^
せっかく格好付けてハードボイルドな台詞を言っても、
今どきジョシコーセーに「普通にしゃべれないの」
と一蹴されてしまったりするのも笑える(^o^
とにかく樋口氏お得意の「洒脱な会話」は健在で、
結構なページ数ですが全く長くは感じなかった。
むしろもっと読んでいたかったような(^ ^;
あえて気になる点を挙げてみると、
いかにも「意味ありげ」に出てくる椎葉氏の元妻が、
結局何もなくほったらかしなのは...
若干いかがなものかと(^ ^;
もしやシリーズ化を目論んでいて、
次作への伏線になってるのかも知れませんが(^ ^
とにかく、とても楽しませていただきました(^o^