あらすじ
【電子限定版】書き下ろし番外編「男の無駄は無駄である」収録。●SF作家・阿蘇芳秀(あすおうしゅう)の小説が、待望の映画化!! 盛り上がる周囲をよそに、秀の野望は相変わらず、大河(たいが)を担当に戻すこと。そんな中、秀は新旧二人の担当と、迷惑をかけた新人作家・児山(こやま)への謝罪を兼ねた忘年会に出席する。そこで秀が知ったのは、熱い愛読者でもある児山の想いと、担当たちの仕事への献身──。初めて言葉に色がつき、胸に響き始めた理解と怖さは、秀の霞んでいた視界をこじ開けて!? ※口絵・イラスト収録あり
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Posted by ブクログ
今回は、大河と秀の大人カップルのお話……
って、読んでる方にはよくわかると思うんですけど、この大人カップル、一番情緒的には子供だと思うので、そんなに大人な関係! というのはまったくなくて。(主に秀)
それでも月日は流れて、真弓と勇太は20歳の成人式を迎えた。
人よりゆっくり大人になっている秀がようやく周りに目を向け始めて、世界が“広がった”から、勇太が成人しても、思いの外、穏やかに受け入れている。
で、問題はですね。
前作からようやく秀が書いている小説がどのような話なのかが明かされつつあるのだけれど。
それはどうも、普通に読んだらとてつもなく救いようのない話のようで、そういうものは一部の人を引き付けるけれど、一部の人には厭われる。
それに秀が気づいた。
「自分の書いたものが人を傷つけるかもしれない」
ということに。
なんというか、大体、暗くて重いものを書く人って、自分もそういうものを読む人なので、自分の心を抉られることに喜びを見いだせるということがわかっていて書いているのだと思っているんですけど。
秀はそういう自覚もなく書いていた……のだとしたら、気づいたらショックだよね……
でも、新しく秀の担当についた久賀が秀に言ったことがすっごく痛くて。
「書いたものは人を傷つけます」
って。
そうなんだよ……そうなんだよね。
どんなものであれ、人を傷つけることを意図していないものでさえ、例えば事実を述べただけのはずの新聞記事でさえ、存在した瞬間に人を傷つける可能性が存在し得るわけです。
つらい……
つらいな……
ただそれを秀は知らなくて。
気づいてなくて。
見てなくて。
それと向かい合わされたのが今でよかった。
そして、それと向き合わせることができるようになったのは、仕事とプライベートを切り離すことができてからだっていうのが、またちょっとしんどいんですけど。
それはそれで、秀にとっては必要なプロセスなんだろうな……と思わせてくれる話でした。
もうずいぶん前から読み続けているシリーズなので。
秀の成長と、大河との関係性の変化が嬉しくもあり、寂しくもあり。
そして、この巻で終わったかと一瞬思って、心臓が止まりかけたんですけど、そうでなかったようで何よりです。
まだ、私がこのシリーズの最終回を読む覚悟ができていない……
次の作品が楽しみです。