【感想・ネタバレ】世界秩序が変わるとき 新自由主義からのゲームチェンジのレビュー

あらすじ

日本復活のヒントがここに!

あのジョージ・ソロスを大儲けさせた“伝説のコンサル”初の著書
ヘッジファンドが見すえる中国の衰退、そして日本復活

資産運用業界の“黒子”に徹してきた私が、なぜ初めて本を書くことにしたのか。
それは、日本の方々に伝えたいメッセージがあるからです。
ひとことで言えば、日本は今、数十年に一度のチャンスを迎えているということです。

東西冷戦後の世界秩序を支えてきた「新自由主義」が崩壊し、勝者と敗者がひっくり返る“ゲームチェンジ”が起きているのだ――。マネーの奔流を30年近く見てきたコンサルタントによる初の著書。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

「新自由主義の下で、日本はまさに最大の敗者となった。」
日本は失われた30年で敗者だとは思っていたが、最大の敗者であるという筆者の感想にはとても納得がいった。

「現在のグローバル化した社会とはまるで別世界でしたが、ほんの30年前の話です」
テクノロジーの変化が、社会に影響を与える力がどんどん強くなっていっていると思う。私が留学をしていた2014年はスマートフォン、SNSが席巻する時代で、個人が情報を発信することが当たり前の時代になってきた。それにより、グローバル化が進んだと思う。
日本ではコロナ化でビジネス、仕事のビジネス化、DX化が一気に進み出した気がしている。今までは「商慣習」で「リモートなんて。ビジネスはやっぱり対面でしょ」という雰囲気が、「対面で会うのは効率が悪いんで、リモートで」という雰囲気に大きく変わったと思う。
それも、LTE/5Gの通信技術の進歩、映像通信技術の進歩の影響である。
そしてこの「ポスト新自由主義時代」では生成AIの波が大きく影響してくると思う。サムアルトマン氏の警告から引用すると
「アルトマン氏は、AIが民主主義に及ぼす潜在的な影響や、選挙戦で特定の意図をもって偽情報を発信するのに利用されるのが心配だと話した。こうしたことから、AI企業を免許制にするなど、新機関による規制方法をいくつか提案した。」
この未来はすでに現実のものになってしまっていると思われる。

「新自由主義が世界を席巻したスピードが早すぎた。」
これには激しく同意するし、AIが今まで以上に世界を席巻するスピードが早く、大規模言語モデルによって人々の意識のベクトルを統一することも可能になる。

「インかアウトか、その差が非常に大きい。 ーーー インかアウトかの二択」
間違いなくこの世界になる、個人的に次の30年は、AIに使われるAIインの世界か、AIを使う側のAIアウトの世界にもなりうると思う。そしてその両者の格差は年々拡大していくと思われる。

「アリストテレスの幸福論では、人生の最終的な目的は幸福になること」
私は既に幸福のQoLのテッペンに達してしまったので、この幸福を維持していく方向に人生を切り替えている。
・米を作って精米したての新米を土鍋で食べる
・豚を育てて下ろしたての豚肉のしゃぶしゃぶを食べる
・ニワトリを育ててその卵で卵かけご飯を食べる
・獣を罠で捕まえて、その獣の肉を燻製にして食べる
・球場で応援しているチームが勝っているのをみながらビールを飲む
・大戦争で全ての物流が止まっても上記の生活を維持出来るオフグリッドハウスの構築
・上記の技術のオープンソース化
次の5年では上記を堅める方向性となる。

「しかしハイテク産業の場合、労働集約型の産業ではなく、知識、資本集約型なので、過剰生産をしても、不動産関連で失った雇用を埋めることは出来ない。これが社会不安のタネとなる」
間違いない。次の5年、AIは間違いなくロボット、自動車に適用される。そうなると、単純労働のパイはどんどん少なくなっていく。日本は人不足なのでいいが、そうでない国は「人余り」が次の社会問題になる。そうなると戦争をして人を使うしか、雇用を産む方法がなくなってしまう。私は次の10-20年内に、上記による世界大戦が発生すると見込んでいる。

「ルイスの転換点」「産業革命の際、工業化が進む中で、農村から都市部への労働供給が拡大し、都市部の第二次産業の賃金は下がったものの、農村からの労働供給が出尽くしたあと、都市部の賃金が急速に上昇した現象」
この本を読んで一番勉強になった部分。

「これからの日本は、効率性を高めないと人手不足で社会が回らない時代」
私の事業では、この悩みを抱えている会社から多くの相談がくる。ただ、大きな会社であればあるほど、上記の悩みは次の10年だと見据えている。というのも最近の60, 70代は元気で、まだ現役で働いている。その世代が抜けたあと、日本の労働力不足は一気にやってくると思われる。
私の会社では、その労働力不足をロボットで補うために、ロボット開発の支援をデジタルツインでサポート出来る様な体制の支援に努めている。その会社を2030年までにバイアウトして、上記の幸福論で述べた様な守りの幸福を固めていきたいと思う。

「彼らの基本戦略は中国とマラソン競争をして、中国が自らの弱さによって潰れるのを待つアプローチ」
私は最近台湾の企業とビジネスを行っているが、よく聞くのは「中国企業はモノを作りすぎている」ということだった
モノを作りすぎると、そのモノの値段が下がり、国内ではどんどんデフレが進んでいる、とのことだった。

「日本の軍部のようにジリ貧論を嫌い、中国が台湾有事を仕掛ける可能性」
私には、上記が起こる可能性は分からないが、もし台湾有事が起こった場合の技術視点で持論を持っている。その持論の中で最悪なパターンを下記に述べる。
中国の技術的な優位性は「レアアース」に尽きる。レアアースがなければ、自動車からスマホまで、何も作ることが出来ない。そして中国が台湾を攻撃すれば、一番打撃を受けるのは半導体産業である。
レアアースを止め、半導体産業にダメージを与えると、世界のハイテク産業は一気に止まる。その影響が5-10年続くとすると、既存のデータセンターなどの修理が出来なくなり、資本力のないクラウドからサービスが停止していく。
世界の主要な国は一律で、とてつもないダメージを受ける。
痛み分けの時代になる。
その時代になった時に、強いのはそういったテクノロジーを使わない「衣食住」にfocusした一次産業であると思っている。
かなりのエッジケースであると自負しているが、Maximin modelに従い、私は上記のケースに備えた方向にシフトしていく。

「キッシンジャー外交における最大の敗者は台湾」
上記の地政学背景を全く知らなかった。学ぶべき部分だと思う。

「岸田総理のように歓待された日本の首相はいないと思う」
この主張も意外だった。私も一般市民と同じく、岸田首相は特に何もしていなかったと思うのだが、アメリカではその受け止め方が違うということに、私は自身の視野の狭さを思い知った。

「いずれは労働力の絶対数不足に直面する」
私は、その世界になったときに、ロボットとAIが労働力を補う一因になると思っている。
そうなると、世界的にはロボットとAIに職を奪われると思うので、今産まれる世代はとても大変な時代を迎えると思っている。

そして、平成の時代を謳歌できたことを誇りに思う。
適度にデジタル化され、適度に非効率で、留学がしやすかった時代に生まれて良かったと思いつつ、次の時代は楽観視できないなと、この本を読んで改めて思った。

また、私の周りでは、私の上記の「守りの人生」にシフトしていることに心の底から共感している人がほぼいないが、この本を読んで、私の方向性は間違ってはいなかったのだと再認識できた。

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2025年11月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

面白かったです。中世~近世の重商主義時代から筆を起こし新自由主義までの流れを分かりやすく説明していてなるほどと腑に落ちました。そして新自由主義の時代がいよいよ終わるのがここ数年の流れ。それが世界秩序が変わるという表題になっている。我々は好き嫌いに関わらずその流れは抗えないしそこをどうやって上手く生き抜くかというのが要旨だと思う。

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2025年10月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

非常に学びのある本だった。以下、要旨と簡単な感想をまとめる。

第二次世界大戦後、アメリカは覇権国家として世界の主導権を握り、「カジノのオーナー」のように世界の勝者となった。そのもとで日本はアメリカの庇護を受けながら経済発展を遂げ、その後厳しく打ち負かされた。「失われた30年」と呼ばれる「負け組」状態になった。
しかし、今日本には新たにチャンスが訪れている。
現在、世界は新自由主義の時代を終え、新たな価値観へと移りつつある。経済よりも地政学の重要性が高まり、国際関係の構図も変化している。米中対立が冷戦状態にある今、アメリカにとって日本は極めて重要な存在である。
また、労働生産性の向上にも大きな「のびしろ」を持っている。日本は政・財・官の連携に強みを持っているので、サプライチェーンの再構築や将来の成長産業に上手にお金をつけてあげることができる。
こうしたことが、日本が今後の世界の中で「勝ち組」になる要素と考えられる。

他、「失われた30年」で格差は広がったが、他国ほどではなく、日本人が雇用を守ることで「みんなで貧しくなった」ということが良くわかった。日本的というか左翼的というか。耐え忍ぶ日本人という感じ。

アメリカの力の強さが良くわかった。今の日本の政治の裏には常にアメリカの影響があるのでは?と思うようになった。

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2025年10月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ただの金儲けの自慢話ではなく、著者の実体験に基づく世界経済の流れがよく分かる良書。特に1980年代以降の新自由主義と日本の「失われた30年」の関係については非常に納得できた。
「トランプ関税」以降の米中対立関係についても言及されており実際どうなるかは分からないが興味深く読み進められた。

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2025年10月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

前に読んだ本の要約を掲載します

1) 全体要約(本文)
『世界秩序が変わるとき』。新自由主義の長期的優位が揺らぎ、政治の裁量復権・ブロック化・価値観対立の深刻化が同時進行する中で、米中対立(冷戦化とホットスポットのリスク)とグローバル・サプライチェーン再編が進む。これにより、日本にはリショアリングや労働市場の構造的変化、AI導入の加速を追い風にした再起機会が生じうる、という骨子です。

2) 章立て(本文)

新自由主義の揺らぎと「反乱」

歴史的振り子:小さな政府 ↔ 大きな政府

欧州統合・グローバリズムの加速と反動

格差・分断・ポピュリズムの力学

米中対立シナリオと台湾リスク

サプライチェーン再構築と日本の相対優位

人口・賃金・AI導入:日本のチャンス条件

3) 各章の詳細(本文)
第1章 新自由主義の揺らぎと「反乱」

一連の政治・地政学的な激変は、個別事象ではなく新自由主義への広範な反発として説明できる。

新自由主義の前提は「小さな政府」「市場を裁定者とする」「個人の選択と能力を尊ぶ」という三本柱。

1990年代以降の急速なグローバル化・デジタル化が、価値観・経済構造を短期間で劇的に変え、社会に「ひずみ」を蓄積させた。

既存システムの信認が揺らぐ局面では、勝者・敗者が入れ替わる可能性が高い。

日本は新自由主義フェーズで出遅れ、長期停滞を経験したが、振り子が戻る局面では相対的な機会が生まれる。

第2章 歴史的振り子:小さな政府 ↔ 大きな政府

大恐慌を経て、世界は多様な「大きな政府」へと揺り戻し(共産主義型/ニューディール型/ファシズム型)を経験。

政府介入の度合いは、経済危機・戦争・社会分断の深さに応じて拡大・縮小を繰り返す。

現在は市場主導一辺倒の限界が露呈し、産業政策・補助金・規制で政治が再び前面に出る局面。

市場が万能という前提が外れ、国家間の制度競争・補助金競争が企業意思決定を拘束する。

「政治が最終的にわかっている」という認識が広がれば、政策依存度はさらに高まる。

第3章 欧州統合・グローバリズムの加速と反動

単一市場化・共通通貨導入は裁量的介入を減らし、効率・平準化を志向した。

だが、人工的制度への文化・言語・民族・宗教の「土着的価値」の逆襲が発生。

英国の離脱や欧州でのナショナリズム台頭は、制度統合に対する反動として理解できる。

急進的な統合のスピードが、社会の順応能力を上回り、政治的反発を誘発。

結果として、欧州でもブロック内外の再分配・移民・主権問題が再燃。

第4章 格差・分断・ポピュリズムの力学

富の集中(特にデジタル産業)は雇用創出を伴いにくく、分配の歪みを拡大。

再分配に消極的な制度下では、格差拡大が標準的帰結となり、社会的亀裂が累積。

分断は「富の搾取」と「価値観対立」の両面から進行し、政治的過激化を招く。

民主的プロセスを通じた急進的勢力の台頭は、制度の正統性危機と裏腹。

分配の正義と経済効率の両立条件が未解決で、政策選好が二極化。

第5章 米中対立シナリオと台湾リスク

覇権国と新興国の競合の帰結は、戦争・譲歩・冷戦の三択に整理できる。

当面は冷戦が基本線だが、地域的ホットスポット(台湾)での有事可能性は無視できない。

接近阻止・領域拒否戦略の成立により、限定的な軍事行動でも計算が複雑化。

金融制裁・決済網の遮断は既に準備され、経済戦の即応性は高い。

若年層の雇用・社会不満が外部指向的な政策を誘発するリスクがある。

第6章 サプライチェーン再構築と日本の相対優位

新自由主義の信認低下で、政治主導の再編(リショアリング/友好国志向)が前提条件となった。

グローバル最適から安全保障最適へと、設計基準が移行。

国境・関税・補助金の壁が上がり、「広い庭に高い壁」の時代へ。

新自由主義期の最大受益国は逆流コストが大きく、逆に出遅れた国に相対的利益が生じうる。

日本は再編の受け皿になり得る領域が拡大し、製造基盤再評価の機会が生まれる。

第7章 人口・賃金・AI導入:日本のチャンス条件

労働人口制約が恒常化し、企業はホワイト化・省人化・IT投資を迫られる。

賃金上昇が不可逆的となれば、低生産性部門の見直しと自動化が加速。

社会的合意形成が進めば、雇用調整や部門統廃合への抵抗は低減。

AIは労働生産性のボトルネックを補う代替投資として正当化されやすい。

外からの先端技術の受容が、国内制度との整合性の下で前進しやすい環境が整う。

4) 各章の要約(本文)

第1章:新自由主義の三本柱に対する信認低下が、各地の政治変動を貫く説明原理である。社会の適応限界を超えた変化が「ひずみ」を生み、制度の再編を促している。

第2章:危機のたびに国家は介入度を上げ下げし、現在は政策主導の時代へ回帰している。市場万能論の剥落が、企業の意思決定を国家政策に結び付け直している。

第3章:統合の加速は効率を高めたが、土着的価値観の逆襲を招いた。スピードの過剰が政治的反発・離脱運動を誘発している。

第4章:高収益だが雇用吸収力の小さい産業構造が格差を拡大し、分断と過激化を引き起こした。分配と効率の両立条件は未解決のままだ。

第5章:米中は基本的に冷戦的競合だが、台湾での有事リスクは残る。経済・金融の制裁ツールは既に高度に整備されている。

第6章:サプライチェーンは政治最適へ再編され、日本には受け皿としての相対優位が生じうる。出遅れが逆に利点となる局面がある。

第7章:日本では人手不足が構造化し、賃金上昇・IT化・AI導入が不可避の流れ。社会合意の下で生産性向上の投資が加速しやすい。

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2025年10月30日

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