あらすじ
日本復活のヒントがここに!
あのジョージ・ソロスを大儲けさせた“伝説のコンサル”初の著書
ヘッジファンドが見すえる中国の衰退、そして日本復活
資産運用業界の“黒子”に徹してきた私が、なぜ初めて本を書くことにしたのか。
それは、日本の方々に伝えたいメッセージがあるからです。
ひとことで言えば、日本は今、数十年に一度のチャンスを迎えているということです。
東西冷戦後の世界秩序を支えてきた「新自由主義」が崩壊し、勝者と敗者がひっくり返る“ゲームチェンジ”が起きているのだ――。マネーの奔流を30年近く見てきたコンサルタントによる初の著書。
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Posted by ブクログ
ヘッジファンド相手にコンサルティングをする著者が、アメリカを中心とした、これまでの、これからの経済変化や、その渦中の日本における立ち位置を記した著書。2026年になってから読んだが、著者の想定に沿って変化しているように感じ、現時点での展望を知りたいと思った。
本書の自分メモ。
①小さな政府と大きな政府の変遷。そして今小さな政府から大きな政府へと振り子が揺れ出していること。カウンターエリート達の台頭。世界の構造が大きく変わるとき、勝者と敗者が入れ替わり、日本はカジノのオーナーであるアメリカから勝ち馬の席を用意されていること。
②著者の経歴の紹介。バブル期の日系銀行に入行した著者が、当時の銀行のビジネスモデルに疑問を抱き、渡米し成功をおさめてきたこと。
③新自由主義的な競争体制に移行する中、日本は終身雇用制度という、一見労働者に優しい制度を歴史的に実施していたために、その制度のせいで失われた30年を生み出してしまったこと。人口動態はデフレ圧力だけではなくインフレ圧力にもなるということ。
④サプライチェーンから中国を追い出し、中国外しを始めた。中国は既に魅力的な投資対象ではない。新興国(中国)が覇権国家(アメリカ)に挑戦する過程で台湾有事はあり得る。
⑤日本の人口減少はインフレ圧力となる。失われた30年に雇用を守られ続けた「ゾンビ社員」達が退職し、労働力不足に陥っている。正規雇用の伸びが非正規雇用の伸びをこえ、インフレ圧力である賃金上昇も始まっている。中国がアメリカのメインの敵であるため、強い日本は冷戦時よりさらにアメリカにとって必要不可欠となっている。
⑥本書まとめ
一回で理解するのは個人的になかなか難しかったので、これからの時折ページをめくることにしたい。
Posted by ブクログ
新自由主義の終焉とパラダイムシフト
・新自由主義の限界: 1980年代以降、市場原理主義、規制緩和、民営化を柱としてきた新自由主義は、極端な格差拡大と中間層の没落を招き、社会の分断を決定的なものにした。
・「小さな政府」から「大きな政府」へ: 効率性のみを追求するシステムがパンデミックや地政学リスクに対して脆弱であることが露呈し、国家が経済に強く介入する「産業政策の復活」が世界的な潮流となっている。
・株主資本主義の修正: 利益至上主義から、従業員や地域社会、環境を重視するステークホルダー資本主義への移行が不可欠であると説く。
地政学と経済の融合(ジオエコノミクス)
・グローバル化の変容: 安価なサプライチェーンを追求する「オフショアリング」から、同盟国・友好国で経済圏を完結させる「フレンド・ショアリング」への転換が進んでいる。
・資源と技術の武器化: 半導体、蓄電池、重要鉱物などが国家安全保障の直結事項となり、自由貿易よりも「経済安全保障」が優先される時代に突入した。
・米中対立の構造化: 単なる貿易摩擦ではなく、民主主義対権威主義という体制間の生存競争として長期化し、世界経済はブロック化の兆しを見せている。
テクノロジーと通貨の変革
・デジタル敗戦への警鐘: 日本のIT競争力の低迷を指摘し、DX(デジタルトランスフォーメーション)が単なるIT導入ではなく、社会構造そのものの作り直しであることを強調する。
・通貨覇権の行方: 中央銀行デジタル通貨(CBDC)の台頭や暗号資産の普及により、米ドル一強体制が揺らぎ、価値の交換手段が多様化する可能性を示唆している。
日本が直面する課題
・失われた30年からの脱却: 安い賃金を前提としたビジネスモデルを捨て、高付加価値化と賃金上昇の好循環を生み出す必要がある。
・「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の呪縛: 過去の成功体験を捨て、新しいゲームのルール(環境、人権、デジタル)に適応できない企業や個人は淘汰される。
今後の個人的な指針
市場や成長神話を無条件に信じる姿勢を捨て、国家・政治・地政学を含めて世界を立体的に見ることが重要だ。職業や投資においては、単なる効率やコスパではなく「この分野は国家が守るか」「長期的に必要とされるか」を基準に選ぶべきだ。個人としては、特定の組織や制度に依存せず、複数の収入源・スキル・居場所を持つことがリスク耐性を高める。変化を嘆くより、ルール変更を前提に学び続け、柔軟に立ち位置を変えられる者が、これからの世界で生き残る。
Posted by ブクログ
米国は中国との覇権国争いにおいて、太平洋地域で日本に強力なパートナーとなってもらわないと困る。だからこれから日本にはかつての米ソ冷戦時代前半(朝鮮戦争から1970年代まで)のようなチャンスが訪れる。準備せよ!というのが本書の概略。
斎藤氏によると、覇権国争いの結末は以下の3つのいずれかに帰結する:
①戦争で勝敗を決する(事例:太平洋戦争)
②覇権国に跪く(事例:ポンド覇権をドル覇権に譲った第一次大戦後の英国、1980年代の日米貿易摩擦における日本)
③冷戦(事例:米ソ)
斎藤氏は、今回の米中関係は③を志向しつつ、台湾有事で①に転じて米国が勝つシナリオを想定している。しかし、米国が中国より強い根拠が明確に示されていない(あるいは根拠として弱い。まして米国はいろんな紛争に戦力分散させすぎだし、グローバルサウスだけでなく同盟国からも反感を買いすぎ。自ら脱・米国の機運を撒き散らしている)。
米国が戦略上、「強い日本」を欲していることはよく理解できたが、本書には軍事面とAIの情報が含まれていない。イアン・ブレマー氏の多極化シナリオにも触れていない。あくまで金融セクターから眺めた主張である。
一般的に覇権が移動する際、まず生産拠点が世界No.2の国に移動し、そこからの流通網が広がり、最後に資金が大量にNo.2側に流入する。中国は途中まではこの道を進んできた。「世界の工場」と呼ばれ、「一帯一路」に着手し、「AIIB」や「BRICS新通貨」でドル覇権を切り崩そうとしてきた。しかし中国は躓き、「世界の工場」は東南アジアに分散しつつある。AGI開発競争で米国に先を越されてしまうと、戦争で主導権を取られるどころか、ロボットが生産も担うようになるため株式市場も中長期的にはどうなるかわからない。少なくとも労働市場は崩壊するだろう。生産拠点も金融セクターも覇権国の必須条件から外れる可能性すらある。つまりデータセンターと生産ロボットの量産化以降はおカネの需要すらなくなってくる可能性がある。中国も苦しい状況にある。
だからこそ、米ソ冷戦時代の中国がそうであったように、両陣営苦しいからこそ、それを逆手に取って日本がキャスティングボードを握るシナリオも読んでみたかった(齋藤さんは米国の金融セクターの方なので無理な話か)。歴史において日本は、米国より中国に従ってきた期間の方が遥かに長い。「米国が強い」という前提のみで進めるのではなく、多極化や中国覇権、ひいてはその先のインド覇権、あるいはAIが人類を統治するような世界線も想定しながら、今後も国際政治を観ていこうと思う。