あらすじ
日本復活のヒントがここに!
あのジョージ・ソロスを大儲けさせた“伝説のコンサル”初の著書
ヘッジファンドが見すえる中国の衰退、そして日本復活
資産運用業界の“黒子”に徹してきた私が、なぜ初めて本を書くことにしたのか。
それは、日本の方々に伝えたいメッセージがあるからです。
ひとことで言えば、日本は今、数十年に一度のチャンスを迎えているということです。
東西冷戦後の世界秩序を支えてきた「新自由主義」が崩壊し、勝者と敗者がひっくり返る“ゲームチェンジ”が起きているのだ――。マネーの奔流を30年近く見てきたコンサルタントによる初の著書。
感情タグBEST3
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わかりやすい。
世界システムが自由放任(レッセフェール)→大きな政府→新自由主義と変化して、現在。
システムを修正しながら今に至っているという物差しで見ると色々なものが理解しやすくなる。
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新自由主義の終焉とその後の世界秩序を「ゲームチェンジ」として描く一冊。著者はヘッジファンドの助言経験を背景に、米中対立やウクライナ戦争などを旧秩序崩壊の兆候と分析。国家主導の産業政策や経済安全保障の復活を予測し、日本にとっては数十年に一度の好機が到来すると説く。ただし、視点は米国寄りで、未来予測には不確実性もある。世界の変化を理解し、戦略的思考を促す羅針盤となる良書
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1990年代頃から失われた30年を新自由主義の時代だったという。日本は伸び悩み世界でも取り残された。その新自由主義の時代とは何だったのか、というのがこの本の大きなテーマになっている。著者は性的マイノリティとして日本の都市銀行勤務を辞め、自由なアメリカでコンサルタントとして人生を歩むことに賭ける。
新自由主義の時代の前は、経済が重要だった、新自由主義の後に来る時代は政治が重要となる。日本の失われた30年と中国の台頭、アメリカの覇権国家としてのずるさ、しかし日本はこれから復活し、中国は衰退し、アメリカの強さは変わらないという。
著者はコンサルタントとしてジョージ・ソロスを大儲けさせたようだ。この本は、新自由主義からゲームが変わる時代のこれからを、新自由主義を詳細に分析することで、世界情勢の重要なポイントを膨大に一回読んだだけではわからないほど濃密に説明してくれている。私は疎く一回読んで分からず、二回目抜き書きしながらようやく分かった。なぜ今世界がこうなっているのか、日本の失われた30年とは何だったのか、新自由主義時代とはどんな時代だったのか、これから世界がどうなるのかがよくわかる良本です。
Posted by ブクログ
面白くて一気読み!
経済学の本は難しそうでこれまで手に取ることはなかったのですが、ジンさんの本は投資コンサル目線で日本やアメリカ、中国の情勢を分かりやすく解説。
次はメモを取りながら読み直したい!
Posted by ブクログ
齋藤ジン。ジョージソロスに10億ドル儲けさせたコンサルだという。日本人で、トランスジェンダーで、ワシントン在住のコンサルという触れ込みは、インパクトがある。
本書を読んで、なるほど、アメリカでナマの政治的潮流のなかで生き抜いているコンサルだと思った。実は、「新自由主義」という正体がよくわからなかった。自由であることはいいことだと思うが、何かがおかしいなぁと思っていた。本書は、実にわかりやすく、歴史的な流れを大づかみにつかむことができる。さすが、著者のさばき方が実に上手いと感心した。
自由放任主義(レッセ・フェール)、自由主義、そして新自由主義と受け継いでいる。
齋藤ジンは、歴史的な潮流でものごとを明らかにしようとする。
18世紀(1700年代)のイギリスから始まった自由放任主義。「政府は何も手を出さず、個人や企業の活動を自由にさせるべきだ」という考え方だった。アダム・スミスが唱えた「見えざる手(かみのみえざるて)」という考えが基本になっている。これは、一人ひとりが自分の利益のために自由に競争すれば、結果的に社会全体にとって一番良い状態に自然と導かれる、という考え方だった。
20世紀初頭にかけて、世襲貴族による権力の乱用に対し、商人(ブルジョワ)たちが市場で自由に経済活動を行う社会を目指す中で台頭した。しかし、この極端な市場任せの体制は、世界中の経済活動が失速するなど、大きな経済危機や社会的な矛盾を引き起こた。特に1929年の世界恐慌がその象徴であり、市場の自己調整能力への信頼が崩れた。
齋藤ジンは「第一の地殻変動」として、自由放任主義の限界が露呈したことで「大きな政府」が登場したという。それが、ファシズム国家であり、スターリンによる全体主義的国家の誕生だった。大きな政府は、思想、人種まで口を出し、大量の殺戮を行なった。
そのような人権を無視する国家への反省から、個人の自由と権利を何よりも大切にするという考え方から、自由主義となった。 個人の自由(思想、言論、経済活動など)や、みんなが平等であることを重視する。政治の分野では、王様や独裁的政権などの強い権力に支配されず、国民が政治に参加し、自由を保障されるべきだという考え方が広がった。
齋藤ジンは「第2の地殻変動」として、オイルショックやインフレによって、「大きな政府」による国家介入が行き詰まった結果、自由主義から新自由主義が登場した。アメリカとソ連の対立という東西冷戦終結に伴う「大きな政府」から小さな政府への転換が行われた。
1970年代以降に世界的に広がったのが新自由主義だった。
レーガノミクス、サッチャーによる民営化などの新自由主義。それに加わったのがグローバリズム。多国籍企業の活躍が起こった。その結果、日本は失われた30年となり、中国が大きく躍進し、中国がアメリカに対立するようになった。
大きな政府では、国が年金や医療などの社会保障にお金をかけすぎていたり、色々な規制をしすぎていて、経済の活力が落ちている。だから、国や政府の役割をできるだけ小さくして、小さな政府によって、市場の自由競争をもっと進めるべきだと主張する。具体的には、規制を減らしたり、国営の会社を民間の会社に変えたり(民営化)することを進める。会社や社会の活動に口出しする「大きな政府」から、必要な手助けだけをする「小さな政府」に戻そうという考えだ。
本書での新自由主義は、「政府の意思決定や役割を縮小し、市場原理、民間企業や各個人の意思、判断、選択をより重要視するもの」として定義されている。政府の介入を最小限にし、市場に経済を任せることを基本とする考え方で、政治や政府ではなく、市場を主要な「裁定者」とし、個人の権利と選択を尊重する。あくまでも、マーケットが決めるという考え方だ。
さて、第3の地殻変動はどうなるのか?
齋藤ジンは、2021年以降、新自由主義的な世界観に支えられてきた既存システムは信認(コンフィデンス)を失った。根幹世界観へのコンフィデンスが崩れた以上、パラダイムシフトが発生するという。
アメリカにおけるトランプ現象、イギリスにおけるブレグジット、欧州における極右や自国中心主義の台頭、米中対立、ウクライナ戦争などは、それは「新自由主義への反乱」であるという。
そして、一番大きなことは、アメリカは覇権国家であるために、常にルールを変えてきた。現在のアメリカにとって、一番重要なのは中国の存在なのだ。2001年に中国が、WTOに入ることで、大きく変化した。アメリカも中国に投資をしてきた。それが、中国が世界の工場になったことだ。中国が、民主主義国家になると楽観的に思っていたが、習近平体制の中国となり、アメリカを脅かす存在になっている。そのことが、貿易戦争となり、関税の引き上げがトランプの課題となった。つまり、アメリカにとって中国は投資対象でなくなったのだ。一方で、アメリカでは富の分配が寡占化し、大多数の国民からの信任を失った。ニューヨーク市長選挙での急進左派のマムダニが社会主義的政策で勝利したのが新自由主義への反乱とも言える。
今の大きなパラダイムの変換は、米中対決の中で、日本の位置が大きく注目されることになる。つまり、アメリカの覇権国家を維持するために、日本がその補完的な存在として、復活することが可能な時期に来ていると齋藤ジンはいう。新自由主義とグローバリズムの価値観を変える時期となっている。
アメリカが中国依存から脱却し、信頼できる国で生産する流れの中で、日本という存在が重要となる。日本は、それに応えるというポジションが確保することになる。
齋藤ジンは「失われた30年」は贅沢な実践という。アメリカの持つ人口動態と技術革新性が、中国の少子高齢化問題より優位にあるとしている。EUは、国も民族も言語も違う人々がフェアと感じるバランスを撮ることが難しいとしている。また、ウクライナ戦争からアメリカ抜きにEUが機能しない。
ドイツは、ロシア産のエネルギー供給に依存し、中国需要をとりにいくビジネスモデルが破綻している。アメリカ人は、野球場で起立して国家を斉唱し、涙するというジョークがある。そして、日本人三人の活躍を応援している。トランプへの圧倒的支持、そして創造的破壊は、アメリカたる所以だ。
齋藤ジンの視点は、アメリカが覇権国家として君臨し続ける状況の中で日本がどう振る舞うのか?そのことを問いかけている。今の高市戦略は、そのあたりをよく考えて、トランプにお任せという感じなのかなぁ。それにしても、ポスト新自由主義が、具体的にどうなるかわからないが「大きな政府」にふれるだろうと率直に言っているのは、好感が持てる。
Posted by ブクログ
今年一番の新書
2025年7月に読みました。
10月の高市総理誕生と日経平均5万円越えの展開を、1年前の出版時に想定していたような内容でした。
Posted by ブクログ
30年後に読み返したい。
ここ5年くらいで世界の行方を描く本が多くなった感がありますが、それだけで「見えてきた」もしくは「確度が上がった」ということなのでしょうね。人の世は人が織り成しているということを改めて認識させられる内容でした。
一種の暴露本としても良いのかな?
井の中の蛙状態のジモティータイプの日本人に対する世界の常識についての啓蒙書としても良いのかな?
それとも、ようやく受容、消費できるようになったから出てきた戦略的な教育書でしょうか?
陰謀論的なエンタメ本とは思えませんでした。
私の中のジャンルの仕分けに迷います。
「後悔のない、好きなポジションを取れ!」というメッセージは受け取りました!
Posted by ブクログ
「新自由主義の下で、日本はまさに最大の敗者となった。」
日本は失われた30年で敗者だとは思っていたが、最大の敗者であるという筆者の感想にはとても納得がいった。
「現在のグローバル化した社会とはまるで別世界でしたが、ほんの30年前の話です」
テクノロジーの変化が、社会に影響を与える力がどんどん強くなっていっていると思う。私が留学をしていた2014年はスマートフォン、SNSが席巻する時代で、個人が情報を発信することが当たり前の時代になってきた。それにより、グローバル化が進んだと思う。
日本ではコロナ化でビジネス、仕事のビジネス化、DX化が一気に進み出した気がしている。今までは「商慣習」で「リモートなんて。ビジネスはやっぱり対面でしょ」という雰囲気が、「対面で会うのは効率が悪いんで、リモートで」という雰囲気に大きく変わったと思う。
それも、LTE/5Gの通信技術の進歩、映像通信技術の進歩の影響である。
そしてこの「ポスト新自由主義時代」では生成AIの波が大きく影響してくると思う。サムアルトマン氏の警告から引用すると
「アルトマン氏は、AIが民主主義に及ぼす潜在的な影響や、選挙戦で特定の意図をもって偽情報を発信するのに利用されるのが心配だと話した。こうしたことから、AI企業を免許制にするなど、新機関による規制方法をいくつか提案した。」
この未来はすでに現実のものになってしまっていると思われる。
「新自由主義が世界を席巻したスピードが早すぎた。」
これには激しく同意するし、AIが今まで以上に世界を席巻するスピードが早く、大規模言語モデルによって人々の意識のベクトルを統一することも可能になる。
「インかアウトか、その差が非常に大きい。 ーーー インかアウトかの二択」
間違いなくこの世界になる、個人的に次の30年は、AIに使われるAIインの世界か、AIを使う側のAIアウトの世界にもなりうると思う。そしてその両者の格差は年々拡大していくと思われる。
「アリストテレスの幸福論では、人生の最終的な目的は幸福になること」
私は既に幸福のQoLのテッペンに達してしまったので、この幸福を維持していく方向に人生を切り替えている。
・米を作って精米したての新米を土鍋で食べる
・豚を育てて下ろしたての豚肉のしゃぶしゃぶを食べる
・ニワトリを育ててその卵で卵かけご飯を食べる
・獣を罠で捕まえて、その獣の肉を燻製にして食べる
・球場で応援しているチームが勝っているのをみながらビールを飲む
・大戦争で全ての物流が止まっても上記の生活を維持出来るオフグリッドハウスの構築
・上記の技術のオープンソース化
次の5年では上記を堅める方向性となる。
「しかしハイテク産業の場合、労働集約型の産業ではなく、知識、資本集約型なので、過剰生産をしても、不動産関連で失った雇用を埋めることは出来ない。これが社会不安のタネとなる」
間違いない。次の5年、AIは間違いなくロボット、自動車に適用される。そうなると、単純労働のパイはどんどん少なくなっていく。日本は人不足なのでいいが、そうでない国は「人余り」が次の社会問題になる。そうなると戦争をして人を使うしか、雇用を産む方法がなくなってしまう。私は次の10-20年内に、上記による世界大戦が発生すると見込んでいる。
「ルイスの転換点」「産業革命の際、工業化が進む中で、農村から都市部への労働供給が拡大し、都市部の第二次産業の賃金は下がったものの、農村からの労働供給が出尽くしたあと、都市部の賃金が急速に上昇した現象」
この本を読んで一番勉強になった部分。
「これからの日本は、効率性を高めないと人手不足で社会が回らない時代」
私の事業では、この悩みを抱えている会社から多くの相談がくる。ただ、大きな会社であればあるほど、上記の悩みは次の10年だと見据えている。というのも最近の60, 70代は元気で、まだ現役で働いている。その世代が抜けたあと、日本の労働力不足は一気にやってくると思われる。
私の会社では、その労働力不足をロボットで補うために、ロボット開発の支援をデジタルツインでサポート出来る様な体制の支援に努めている。その会社を2030年までにバイアウトして、上記の幸福論で述べた様な守りの幸福を固めていきたいと思う。
「彼らの基本戦略は中国とマラソン競争をして、中国が自らの弱さによって潰れるのを待つアプローチ」
私は最近台湾の企業とビジネスを行っているが、よく聞くのは「中国企業はモノを作りすぎている」ということだった
モノを作りすぎると、そのモノの値段が下がり、国内ではどんどんデフレが進んでいる、とのことだった。
「日本の軍部のようにジリ貧論を嫌い、中国が台湾有事を仕掛ける可能性」
私には、上記が起こる可能性は分からないが、もし台湾有事が起こった場合の技術視点で持論を持っている。その持論の中で最悪なパターンを下記に述べる。
中国の技術的な優位性は「レアアース」に尽きる。レアアースがなければ、自動車からスマホまで、何も作ることが出来ない。そして中国が台湾を攻撃すれば、一番打撃を受けるのは半導体産業である。
レアアースを止め、半導体産業にダメージを与えると、世界のハイテク産業は一気に止まる。その影響が5-10年続くとすると、既存のデータセンターなどの修理が出来なくなり、資本力のないクラウドからサービスが停止していく。
世界の主要な国は一律で、とてつもないダメージを受ける。
痛み分けの時代になる。
その時代になった時に、強いのはそういったテクノロジーを使わない「衣食住」にfocusした一次産業であると思っている。
かなりのエッジケースであると自負しているが、Maximin modelに従い、私は上記のケースに備えた方向にシフトしていく。
「キッシンジャー外交における最大の敗者は台湾」
上記の地政学背景を全く知らなかった。学ぶべき部分だと思う。
「岸田総理のように歓待された日本の首相はいないと思う」
この主張も意外だった。私も一般市民と同じく、岸田首相は特に何もしていなかったと思うのだが、アメリカではその受け止め方が違うということに、私は自身の視野の狭さを思い知った。
「いずれは労働力の絶対数不足に直面する」
私は、その世界になったときに、ロボットとAIが労働力を補う一因になると思っている。
そうなると、世界的にはロボットとAIに職を奪われると思うので、今産まれる世代はとても大変な時代を迎えると思っている。
そして、平成の時代を謳歌できたことを誇りに思う。
適度にデジタル化され、適度に非効率で、留学がしやすかった時代に生まれて良かったと思いつつ、次の時代は楽観視できないなと、この本を読んで改めて思った。
また、私の周りでは、私の上記の「守りの人生」にシフトしていることに心の底から共感している人がほぼいないが、この本を読んで、私の方向性は間違ってはいなかったのだと再認識できた。
Posted by ブクログ
面白かったです。中世~近世の重商主義時代から筆を起こし新自由主義までの流れを分かりやすく説明していてなるほどと腑に落ちました。そして新自由主義の時代がいよいよ終わるのがここ数年の流れ。それが世界秩序が変わるという表題になっている。我々は好き嫌いに関わらずその流れは抗えないしそこをどうやって上手く生き抜くかというのが要旨だと思う。
Posted by ブクログ
ジョージ・ソロスの真骨頂は、転換点に全力を傾注する投資方法であること。
1992年 イングランド銀行にポンド売りを仕掛けたソロス・ファンド
当時の右腕が、スタンレー・ドッケンミラーであり、そのチームの一員にスコット・ベッセントさんが居た。
2011年 ベッセントさんはソロスファンドのCIOになり。
2012年 日本に円売りを仕掛けて大儲けする。その一躍を著者の齊藤ジンさんが担う。
⇒その後、ベッセントさんは日本ファンに!
色々と繋がって見えてきて面白い。
「変な人には人並み外れた離れた能力がある」って思われているというのも、味のある言葉だと思った。
Posted by ブクログ
新書でずっと売れ続けている本書だが、本当に素晴らしい書籍だった。星6つレベル。
時代変化の本質をこれほど明瞭に捉え、個人の性的マイノリティの苦悩とアメリカに移った経験も踏まえて、今の日本人に勇気を与えてくれる。
あまり頁は割かれていないが、中国とロシアに対するアメリカの今の動きの予想がドンピシャすぎて、本当に斎藤さんの嗅覚というか先見の明には脱帽。
こういう逸材を受けいれられず、アメリカに追いやってしまった、日本のかつての社会は本当に残念でしかないが、本書を通じて、若い活力が活きる舞台が日本にも整う事を期待したい。
Posted by ブクログ
非常に学びのある本だった。以下、要旨と簡単な感想をまとめる。
第二次世界大戦後、アメリカは覇権国家として世界の主導権を握り、「カジノのオーナー」のように世界の勝者となった。そのもとで日本はアメリカの庇護を受けながら経済発展を遂げ、その後厳しく打ち負かされた。「失われた30年」と呼ばれる「負け組」状態になった。
しかし、今日本には新たにチャンスが訪れている。
現在、世界は新自由主義の時代を終え、新たな価値観へと移りつつある。経済よりも地政学の重要性が高まり、国際関係の構図も変化している。米中対立が冷戦状態にある今、アメリカにとって日本は極めて重要な存在である。
また、労働生産性の向上にも大きな「のびしろ」を持っている。日本は政・財・官の連携に強みを持っているので、サプライチェーンの再構築や将来の成長産業に上手にお金をつけてあげることができる。
こうしたことが、日本が今後の世界の中で「勝ち組」になる要素と考えられる。
他、「失われた30年」で格差は広がったが、他国ほどではなく、日本人が雇用を守ることで「みんなで貧しくなった」ということが良くわかった。日本的というか左翼的というか。耐え忍ぶ日本人という感じ。
アメリカの力の強さが良くわかった。今の日本の政治の裏には常にアメリカの影響があるのでは?と思うようになった。
Posted by ブクログ
ただの金儲けの自慢話ではなく、著者の実体験に基づく世界経済の流れがよく分かる良書。特に1980年代以降の新自由主義と日本の「失われた30年」の関係については非常に納得できた。
「トランプ関税」以降の米中対立関係についても言及されており実際どうなるかは分からないが興味深く読み進められた。
Posted by ブクログ
鵜呑みにしてはいけないが、本質をついていると感じる。
覇権国家米国の牙城はなかなか崩れない。
政府支出が大きな流れ。
米中対立は覇権争いなので続くし、米国が日本を必要としているのは自然なこと。
労働者の問題で、日本は賃金上昇が続くし、IT化まったなし。
Posted by ブクログ
副島氏の最新刊を読んだのですが、その中で紹介されていた本です。日本では新しく高市女氏が自民党総裁に選出されて、それ以来、特にゴールドの価格が急上昇しています、メディアでは円安のためと説明していますが果たしてそれだけなのでしょうか。
そう思っている私にとって、この本に付けられたタイトルは私の興味を惹くのに十分でした。今、世界は新自由主義からの構造変換を迫られているように思います、その「もやもや」としたイメージをこの本の著者である、斎藤氏は解説してくれているように思いました。
以下は気になったポイントです。
・新自由主義的な世界観とは、1930年代以降、世界システムの支配的な世界観となった「大きな政府」への挑戦として始まり、1991年のソ連崩壊を機に、新しく世界標準システムとして受け入れられるようになった「小さな政府」の価値観を指す(p6)
・既存システムが大きく変わるときは、それを支えてきた世界観、統治感も変化する、7世紀の大化の改新は、それ以前の豪族中心の統治感が揺らぎ、天皇を中心として、唐の律令制や儒教を応用した世界観への変化につながった、鎌倉幕府と武士の世、黒船来航と明治維新、昭和の敗戦、20世紀末の東西冷戦の終結も同じである、重要なポイントは、新しい勝者や敗者が生まれる点である(p9)
・今この瞬間、私たちの目の前で、次の30年を想定するであろう、新たなカジノのルールが書かれようとしている、同時に日本の社会・経済は「失われた30年」というデフレの常態から解き離れつつある、日本はすでに変わり出した(p11)
・新自由主義の三大要素は、1)大きな政府よりも小さな政府、2)政府や政治に代わる裁定者の役割を、市場に委ねる、ルールを決める、3)個人の権利と選択を尊重、政府・宗教・個人の生き方に干渉するものを最小化する(p21)
・小さな政府が瓦解する中で大きな政府に振れたが、そのパターンは、1)共産主義型の大きな政府、2)ニューディール政策に代表されるフランクリン・ルーズベルト型の大きな政府、3)日本の軍国主義を含んだ広義のファシスト型の大きな政府、経済・社会への政府介入を開始した(p25)
・新自由主義が世界に普及すると、マネーが効率的に流れることで、ビジネスコストが低下し、インフレが起きにくくなる、物価が安定し、結果として金利が低下する、投資リターンを得るまでの時間を長く設定できる(p35)
・人類史上、これほど短期間に経済構造と社会的価値観が劇的に変化した時代は無い、当然、ついていけない人、ついて行きたくない人もいるので、歪みが生まれることになる(p45)
・戦争の原因は大きく2つある、1)富の搾取、2)宗教戦争のような価値観を巡る争い、この2つは国家をして殺戮に駆り立てるものである、この2つで社会が分断すると、その対処は非常に難しくなる(p51)
・伝統的な価値観と新しい生き方の折り合いをどのようにつけ、双方が妥協しても良いというバランスをどのように構築するか、大事なポイントは、全ての市民ではないにせよ、一定数以上の市民がこれなら他者と共存できる、そう感じる均衡点を見つけ、それを正当化する世界観を打ち立てることである(p61)
・世界が金融積極主義を追求し、事実上の通貨切り下げ競争に走っているとき、日本だけが慎重な金融政策運営を実施すれば、円高・株安によって日本が大負けするのは明白であった(p111)
・今まさに世界は、再びアメリカを地殻変動の震源地とする、統治観の大転換のただ中にいる、この3度目の転換は、過去二回と同様、この先数十年の世界のあり方を規定することになる、これからの数年間は、歴史家たちが、数十年後に「あの時が日本の転換点だった」と位置付ける時期に相当すると考える(p119)
・アメリカが態度を変える2つの条件、1)経済政策の基本的前提(世界観、統治観)をアメリカが大きく変化させる、2)競合国のGDPがアメリカの50%近くに迫る(p131)日本の経験を鑑みると、中国はすでにアメリカからの容赦ない圧力を引き出す2つの基準を満たしている、これは今、歴史の転換点を迎えていると考えるに足る根拠があることを意味している(p134)
・日本の場合は、全員が10%の賃金カットを受け入れる代わりに誰のクビも切らない、失業率を上げない、という形をとった、しかし企業は損切りが済んでいないので新しい成長局面に入ることができない、一方、毎年全社員が10%の賃金カットを受け入れているので、毎年アウトプットプライスも下落し続けて、その結果として日本は長期にわたるデフレ、ないしはディスインフレに陥った、1999-2022年まで、ベア上昇率がゼロ(p140、202)日本は経済効率を犠牲にして、雇用の維持を図ることにした(p144)これは、日本人はデフレを、つまり「失われた30年」を選択したと言える(p145)
・活力が低下した村では稼げないので、村人は別の村に出稼ぎに行く、そのことは、日本からの海外直接投資が2000年代半ば以降、顕著に伸びていることで確認できる(p141)
・新興国が覇権国家にチャレンジする場合の解決方法は3つしかない、1)覇権国と新興国が戦争で勝敗を決する、例として、大日本帝国による真珠湾攻撃はこのパターン、2)覇権国が新興国にその座を譲る、またはひざまづく、例として、第一次対戦後に大英帝国がアメリカに、1980-1990年台に日本がアメリカにとった態度、日本は構造協議と称する、幾多の経済弱体化要求を飲み、国内の生産能力を海外に移転した、3)冷戦、例として、第二次世界大戦後の米ソ冷戦、である(p176)
・アメリカは一度ある国を自らの覇権を脅かす国として認識すると、相手が潰れるまで決して、その手を緩めることはない、大日本帝国は熱い戦争で、ソ連は冷戦で敗れた(p178)
・中国のGDP統計は少し特殊で、他の主要国が総支出ベースのGDPデータを用いているのに対して、中国は全ての経済部門の付加価値に基づく総生産ベースで統計を作成している、理論上は両者は一緒になるが、中国の場合、両者の算出方法にギャップがあり、それは拡大している、2010-2016年の中国の公式GDP成長率は、毎年1.8ポイントも過大評価されていた可能性がある(p183)
・台湾有事の際、米国のインド太平洋軍が中国に負ける可能性が示唆されている、主な理由は、中国が余りにも多くのミサイルを配備しているので、実際に軍事衝突が発生した場合、米軍は第一列島線の西側では身動きが取れない可能性が高い(p186)
・ロシアはエネルギーが豊富にあるので、直接売ったり必要なものとバーター取引ができるので、G7諸国によるロシアのドル決済からの隔離はそれほど効いていない、しかし中国はエネルギー輸入国なので、ロシアのようにいかない、中国が外国に売るものは製品なので、基本的にはドル決済が多くなる、資本勘定の自由化に踏み切る覚悟がないので、中国はドル決済にチャンレンジする日がいつ頃到来するのかは全く見通せない、人民元の国際決済比率は5%以下、外貨準備としては2%しか保有されていない(p189)
・日本の失われた30年は、ゾンビ社員が退職するまで待った30年であった(p195)ゾンビ社員を抱えていたコストをオフセットするため、氷河期世代の学生を非正規雇用にすることで労働コストを抑えた(p200)最大のインプットコストである賃金が上昇するようになれば、デフレは終わるはず(p201)
・アメリカは強い日本を必要としていて、その度合いは冷戦期を上回る、ソ連が敵の場合、舞台はヨーロッパであったが、今度の敵は中国なので、舞台は東アジアである、アメリカは強い日本というパートナーなしには、有効な対アジア政策を遂行できない、それは誰がアメリカの大統領になろうとも同じである(p205)
・新自由主義の時代には、企業経営者にとって「必要なものを、必要な時に、必要なだけ」調達する「ジャストインタイム」が理想的なサプライチェーンであったが、このビジネスモデルは通用しなくなり、万が一に備えた「ジャストインケース」のサプライチェーン構築を迫られている(p207)
・日本企業は国内において、生産設備投資と人材投資の両方を再開している、雇用調整(クビキリ)を許されなかった日本企業が生き残りをかけて、海外に生産設備を移転し、国内での人的投資を抑制し続けたのが「失われた30年」だとすれば、その逆流が始まっているのは明らか(p208)
・ゾンビ社員の雇用維持装置として主たる働きをしてきたのが、中小企業のサービス業である、日本のサービス業の生産性はアメリカの6賭け程度、しかし逆に言うと、日本のサービス生産性がアメリカの8賭けまでいけば、10ポイントも生産が上がることを意味する(p214)
・低賃金で人が雇えなくなると、賃金を払える企業(例えばイオン)が、払えない企業(例えば、いなげや)を淘汰する時代になる、最終的に利益を確保し、賃金を払えることができる企業だけが生き残ると、その業界は適正化し、そこで働く従業員も毎年給与が上がることになる(p215)
・岸田政権が非常に素晴らしい功績を上げた、世界の転換期とは新しいルールが書かれる時だ、と言うことを明確に理解した上で日本の存在感を高めることに尽力した、30年以上ワシントンにいるが、岸田総理のように歓待された日本の首相はいない、ワシントンや国際金融市場の評価は素晴らしい(p248)具体的には、防衛費の倍増、反撃能力の保有、日米韓関係の再構築という結果を出した、自衛隊をアメリカ軍と「共に戦う」実際の軍隊に変質させるというワシントンでの演説は、ポスト自由主義の日本は真の意味で、アメリカの軍事パートナーになるとの強い意思表示と受け止められた
(p249)
2025年10月8日読破
2025年10月10日作成
Posted by ブクログ
読んでて面白い。むっちゃ仕事できる人でトランスジェンダーってよく見るけど、システムを疑ってるからと書いてあった。みんなそうなのかな。説得力ある感じで岸田さんが褒めてあった。政治って難しいねえ。俺は舛添さんだいすきだしなあ。
Posted by ブクログ
失われた30年が人生の大半であった私にとって、今後の日本へ前向きな予想を立てている方の本は、読んでいて気持ちがいい。
勉強になりました。
今後の日本についてあまりポジティブには考えてこれない日々を送って来ましたが、前を向いて頑張って行こうと思わせていただきました。
Posted by ブクログ
経済の話は少し難しく感じました。中国の変遷の章はわかりやすかったです。
筆者の世界情勢を読むセンスは素晴らしいと思いました。
従業員を切らない選択が、経済的観点では正解でないということは分かりますが、岸田政権への評価、ホワイト大企業への収束、移民労働者の受入れあたりはまだ理解できず、ちょっとついて行けていないです。
最近近所のお店がどんどん潰れて空き地のままになっていることが多く、個性的な個人経営のお店が成り立つような社会になるといいなと思うのですが…。
AIは少し使い方を学んでおこうと思いました。
Posted by ブクログ
ヘッジファンドやグローバルな機関投資家に情報提供する齋藤ジン氏の著書。
自分の出自などプロフィールについてが余計に見えるが、だからこそ内容に深みを感じた。
日本の金融危機をはじめに予見したとされ、政府の経済政策の分析などは、自分のような下流の人間が見てもエンタメ的に興味深かった。
ヘッジファンドという耳慣れしている言葉も、レバレッジをかけて投資を行う大口投資家(機関投資家)であることも当著を通じて理解できた。
多忙なヘッジファンドのオーナーから、「あの人が言うなら...」という人間関係を築くための、膨大な情報と仕組み理解に脱帽。
引き続きアメリカの覇権は続くとしながら、強い日本は復活するという齋藤ジン氏のヨミは心強い。
なぜ伸びるか、それは生産性が低いからであり、それすなわち伸びしろである。とくにトラック運送やサービス分野の生産性は他先進国に比べてひくく、実は経済大国で5位にはいる日本には期待がもてる。
とはいえ、生産性でどんなに伸びてもいつかは労働力の絶対数不足はやってくるので、外国人労働者を受け入れる必要はある。
さらに家計の金融資産の1000兆円が現預金につみあがっている。
他の国はインフレがあったので投資が進んだが、日本はこれから。
この生産性と現預金資産のポテンシャルは、日本にしかない。
▼2025年最新の世界GDPランキング
順位国名GDP(10億US$)
1位アメリカ合衆国30,507.22
2位中国19,231.71
3位ドイツ4,744.804
4位インド4,187.017 ↑
5位日本4,186.431 ↓
6位イギリス3,839.180
7位フランス3,211.292
8位イタリア2,422.855
9位カナダ2,225.341
10位ブラジル2,125.958
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トランプ政権下での日本のこれから、日本に住むものとしてのこれからについて考える良いきっかけとなった。ルールチェンジを繰り返しているアメリカは、これまではアメリカがグローバリズムという枠組みのカジノのオーナーであったから。それがこれからも不変であるとするならば、日本のこれからは期待できるのであろう。
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おもしろかった。あまり表で語られないようなお金の話もあって良い本でした。
ただ、次に日本が良くなるのは、アメリカがマネーゲームのディーラーの地位を存続できればなので、そこが怪しいような気もしました。
ただ、アメリカが世界のお金のディーラーという前提が崩れなければ、確かに、2位の国をたたくために、3位の国に肩入れする構造で、これから日本は伸びるっていうのは確かになと思います。
Posted by ブクログ
派遣国アメリカの都合というか事情次第で世界中の国々の趨勢が左右されて来た事という事が、様々なデータや著者の分析に基づく見解が正しかったという事実をもとに説得力ある形で述べられている。この100年、特に第二次対戦後の30年単位での日本経済の盛衰が、アメリカの戦略によってもたらされたものだと納得させられる。
同じ時代を生きながら、著者の様な歴史を踏まえて時代の動き、流れを、大局的に俯瞰的に捉えることが出来る人は、やはり稀有なのだろう。でないと、大物投資家も納得する的確なコンサルタントとして名を馳せる事は出来ない筈。
Posted by ブクログ
あの意見を持ったのは、私が世界で最初です、の圧がすごい。
それだけで、そういう世界で生きてこられた強さを感じまくって、
出世はほどほどでいいやな僕にはガッツリ刺さる。
・小さな政府で市場に任せてきた新自由主義は終わった
・市場も地政学で動く時代になりつつある。
・ルールの変わり目ことチャンス。
・日本は労働需要に追いついてないのたから給与アップ物価アップ、市場価値アップしかない
・不動産がGDP30%の中国、もはや若年失業率の高さを吸収するのは軍と戦争。台湾有事不可避。
ってことらしいです。
ってことはこの本出て1年。
現金比率は上げておくで良いんですかね?
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田中渓氏がオススメしていたので。著者はアメリカの大手ヘッジファンドのアドバイザーとして活躍するエコノミスト。ややアメリカに肩入れし過ぎている感はあるが、アメリカが今後も覇権を握り続ける理由、その中での日本の復活の兆しについて、納得感のある解説だった。
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すごくわかりやすく丁寧簡潔に書かれていると思った。
新自由主義の時代が終わりに近づきポスト新自由主義の台頭から、今後どのような政界情勢になっていくのかといったことが流れるように書かれている。
新自由主義の定義①小さな政府②最低基準を市場にゆだねる③個人の選択と権利を尊重するといった基本的なことから、新自由主義を代表する経済システムの提言であるワシントンコンセンサス、新自由主義の象徴である覇権国家の米国と、その寵児で恩恵を受けてきた中国、波に乗り遅れた村社会の日本など、各国の歴史と関係性を簡潔にわかりやすく解説してある。
ただ米国寄りの意見であるがゆえに少し贔屓目で見ている部分もあるのではないかということと、日本という国における格差の実態や氷河期世代の誕生といった部分の掘り下げが少し弱いかなと感じてしまうため、国内でのポピュリズムの台頭がアジテーションされたものであるかもしれないが、すこし楽観が加わっているように感じる。
とはいえこれから日本は失われた30年が終わり経済成長が見込めるらしい。
これからの未来は明るいのか、それとも単なるこじらせたファシズムに沈んでいくのかどうなのか。
Posted by ブクログ
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米国ではドナルド・トランプが大統領選に勝利し(しかも二度)、英国はEUから離脱、そしてロシアはウクライナを侵略。
2010年代後半以降、世界は大きく変化しているように、感じています。
その動きの根底には何があるのか、今後の世界はどうなっていくのか。
そのヒントを得たいと思い、世界情勢を扱った書籍を探していました。
この本の著者は、プロの資産運用者に対して助言をする、コンサルタントとのこと。
これまで“黒子に徹してきた”という著者ですが、ある思いがあり、初めての著作として、本書を世に出すことにしたと言います。
その思いというのは、「世界は大きな変革期を迎えている。日本は数十年に一度のチャンスを迎えている」というもの。
本書は全6章で、構成されています。
序盤では、これまでの世界情勢がどのような変遷をたどってきたのか、主に経済的な視点で説明されています。
本書を読む前は正直、経済は市場に任せるべきで、歴史的にもほぼ一方通行で自由化が進んできたのだと思っていました。
近現代になっても、国による経済への介入が行われてきたこと、そしてその理由を読んで、今後も同様のことが行われる可能性があるのだと、認識しました。
中盤では、日本がなぜ「失われた30年」を経験することになったかが、説明されています。
その上で、米国の政府や金融関係者が現在、中国をどのように見ているかが書かれています。
「敵」や「ライバル」と定めた国への米国の対応は戦略的で、これまでのところ成功している。
そのターゲットになった日本は、限られた選択肢の中で「失われた30年」を選んだ。
判断が遅かったとはいえ、米国政府は一丸となって、対中国の戦略を展開している。
このような状況と理解しました。
「中国は日本と同じ道を選ばないだろう」という、著者の見立てにも信憑性を感じたので、今後の動向をウォッチしていきたいと思います。
そして終盤は、今後の世界はどのようになっていくか、その中で日本は何をすべきか、について。
米国における日本の重要性が高くなり、それに応じて経済の面でも優遇される。
この章を読む前は、「それだけでは、日本の未来はおぼつかない」と思っていました。
しかし、これまで日本が採用してきた政策や特性が、今後は“強み”になると聞いて、なんだか元気が湧いてきました。
全体を通じて、アメリカという国が世界に与える影響を、高く評価し過ぎているのではないか?と感じる部分はありました。
しかし、金融をはじめとする世界のシステムが、米国主導で定められてきたことを踏まえると、あながち過大評価とは言えないのかも知れない、と思い直しました。
本書が出版されたのは、2024年12月。
それからある程度の月日が経ってから読みましたが、その期間に起こった出来事を振り返ると、「著者の見立てに沿って読み解くと、理解しやすいことが多いな」と、感じました。
巨額の資金の運用に長年、携わってきた人の情報収集力と洞察力というのは、相当なレベルの高さなのですね。
とはいえ、国際情勢においては不確実なことが多いのも事実。
今後も関係する書籍を探して、勉強していきたいと思います。
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経済の予想をする本はたくさんあるけど、とても納得感が高くて一気読みした。
世界の振り子は、「レッセフェール(小さな政府)」→「ルーズベルト型(大きな政府)」→「新自由主義(小さな政府)」とシステムが変わってきて、また大きな政府に振れようとしている。
新自由主義の流れに乗れずに「失われた30年」を耐えた日本だが、次の新しい世界システムでは追い風が吹くだろう。
世界のゲームオーナーであるアメリカは、新自由主義で大きくなった中国を牽制するため、地政学的に強い日本を望んでいる。
Posted by ブクログ
前に読んだ本の要約を掲載します
1) 全体要約(本文)
『世界秩序が変わるとき』。新自由主義の長期的優位が揺らぎ、政治の裁量復権・ブロック化・価値観対立の深刻化が同時進行する中で、米中対立(冷戦化とホットスポットのリスク)とグローバル・サプライチェーン再編が進む。これにより、日本にはリショアリングや労働市場の構造的変化、AI導入の加速を追い風にした再起機会が生じうる、という骨子です。
2) 章立て(本文)
新自由主義の揺らぎと「反乱」
歴史的振り子:小さな政府 ↔ 大きな政府
欧州統合・グローバリズムの加速と反動
格差・分断・ポピュリズムの力学
米中対立シナリオと台湾リスク
サプライチェーン再構築と日本の相対優位
人口・賃金・AI導入:日本のチャンス条件
3) 各章の詳細(本文)
第1章 新自由主義の揺らぎと「反乱」
一連の政治・地政学的な激変は、個別事象ではなく新自由主義への広範な反発として説明できる。
新自由主義の前提は「小さな政府」「市場を裁定者とする」「個人の選択と能力を尊ぶ」という三本柱。
1990年代以降の急速なグローバル化・デジタル化が、価値観・経済構造を短期間で劇的に変え、社会に「ひずみ」を蓄積させた。
既存システムの信認が揺らぐ局面では、勝者・敗者が入れ替わる可能性が高い。
日本は新自由主義フェーズで出遅れ、長期停滞を経験したが、振り子が戻る局面では相対的な機会が生まれる。
第2章 歴史的振り子:小さな政府 ↔ 大きな政府
大恐慌を経て、世界は多様な「大きな政府」へと揺り戻し(共産主義型/ニューディール型/ファシズム型)を経験。
政府介入の度合いは、経済危機・戦争・社会分断の深さに応じて拡大・縮小を繰り返す。
現在は市場主導一辺倒の限界が露呈し、産業政策・補助金・規制で政治が再び前面に出る局面。
市場が万能という前提が外れ、国家間の制度競争・補助金競争が企業意思決定を拘束する。
「政治が最終的にわかっている」という認識が広がれば、政策依存度はさらに高まる。
第3章 欧州統合・グローバリズムの加速と反動
単一市場化・共通通貨導入は裁量的介入を減らし、効率・平準化を志向した。
だが、人工的制度への文化・言語・民族・宗教の「土着的価値」の逆襲が発生。
英国の離脱や欧州でのナショナリズム台頭は、制度統合に対する反動として理解できる。
急進的な統合のスピードが、社会の順応能力を上回り、政治的反発を誘発。
結果として、欧州でもブロック内外の再分配・移民・主権問題が再燃。
第4章 格差・分断・ポピュリズムの力学
富の集中(特にデジタル産業)は雇用創出を伴いにくく、分配の歪みを拡大。
再分配に消極的な制度下では、格差拡大が標準的帰結となり、社会的亀裂が累積。
分断は「富の搾取」と「価値観対立」の両面から進行し、政治的過激化を招く。
民主的プロセスを通じた急進的勢力の台頭は、制度の正統性危機と裏腹。
分配の正義と経済効率の両立条件が未解決で、政策選好が二極化。
第5章 米中対立シナリオと台湾リスク
覇権国と新興国の競合の帰結は、戦争・譲歩・冷戦の三択に整理できる。
当面は冷戦が基本線だが、地域的ホットスポット(台湾)での有事可能性は無視できない。
接近阻止・領域拒否戦略の成立により、限定的な軍事行動でも計算が複雑化。
金融制裁・決済網の遮断は既に準備され、経済戦の即応性は高い。
若年層の雇用・社会不満が外部指向的な政策を誘発するリスクがある。
第6章 サプライチェーン再構築と日本の相対優位
新自由主義の信認低下で、政治主導の再編(リショアリング/友好国志向)が前提条件となった。
グローバル最適から安全保障最適へと、設計基準が移行。
国境・関税・補助金の壁が上がり、「広い庭に高い壁」の時代へ。
新自由主義期の最大受益国は逆流コストが大きく、逆に出遅れた国に相対的利益が生じうる。
日本は再編の受け皿になり得る領域が拡大し、製造基盤再評価の機会が生まれる。
第7章 人口・賃金・AI導入:日本のチャンス条件
労働人口制約が恒常化し、企業はホワイト化・省人化・IT投資を迫られる。
賃金上昇が不可逆的となれば、低生産性部門の見直しと自動化が加速。
社会的合意形成が進めば、雇用調整や部門統廃合への抵抗は低減。
AIは労働生産性のボトルネックを補う代替投資として正当化されやすい。
外からの先端技術の受容が、国内制度との整合性の下で前進しやすい環境が整う。
4) 各章の要約(本文)
第1章:新自由主義の三本柱に対する信認低下が、各地の政治変動を貫く説明原理である。社会の適応限界を超えた変化が「ひずみ」を生み、制度の再編を促している。
第2章:危機のたびに国家は介入度を上げ下げし、現在は政策主導の時代へ回帰している。市場万能論の剥落が、企業の意思決定を国家政策に結び付け直している。
第3章:統合の加速は効率を高めたが、土着的価値観の逆襲を招いた。スピードの過剰が政治的反発・離脱運動を誘発している。
第4章:高収益だが雇用吸収力の小さい産業構造が格差を拡大し、分断と過激化を引き起こした。分配と効率の両立条件は未解決のままだ。
第5章:米中は基本的に冷戦的競合だが、台湾での有事リスクは残る。経済・金融の制裁ツールは既に高度に整備されている。
第6章:サプライチェーンは政治最適へ再編され、日本には受け皿としての相対優位が生じうる。出遅れが逆に利点となる局面がある。
第7章:日本では人手不足が構造化し、賃金上昇・IT化・AI導入が不可避の流れ。社会合意の下で生産性向上の投資が加速しやすい。