【感想・ネタバレ】ヤンキーと地元 ――解体屋、風俗経営者、ヤミ業者になった沖縄の若者たちのレビュー

あらすじ

生まれ故郷が嫌いだと吐き捨てるように言った、一人の若者。その出会いを原点に、沖縄の若者たちをめぐる調査は始まった。暴走族のパシリとなり、建設現場で一緒に働き、キャバクラに行く。建設業や性風俗業、ヤミ仕事で働く若者たちの話を聞き、ときに聞いてもらう。彼らとつき合う10年超の調査から、苛酷な社会の姿が見えてくる──。補論を付した、増補文庫版。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

打越正行さん、逢ってみたかった人。

沖縄の若者、特にヤンキーと呼ばれる人達の縦断研究をまとめたもの。

私は社会学や民族誌に対して、失礼じゃないか?上から目線なんじゃないの、安全圏からコミュニティを覗くような行為って何だか偉そうと常々思っている。
思ってはいるが、読んでしまうのである。
やはり自分の知らない世界の人たちが何を考えどうしてその行為をするのか、が気になるから。

打越正行さんの対象への観察の仕方がかなり特異で、打越さん自身が沖縄の若者達のパシリとなって、コミュニティに思い切りダイブして内側から観察する方法である。
誰にでもできる方法ではないし、下手するとコミュニティの関係性に巻き込まれてしまうような気もするのだが、更に打越さんのすごいところが、しっかりと客観視しながらその場にパシリとして居る事である。

沖縄での独特の一度入るとなかなか抜けられない人間関係のシステム、女性への扱い、ごく限られたコミュニティの話かも知れないが、記憶に残る書籍になった。

0
2025年09月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

本書は、パシリという役割を担った調査者が、地元で生きるヤンキーたちと共に生活を送りながら、彼らの生きる地元・沖縄社会とそこで営まれている人間関係を詳細に描いたものである。

パシリと聞くと、雑用とか、利用されているとか、いじめられているとか、そんなイメージが浮かんでくるため、パシリとして調査するなんてそんなことできるのか?と思われる。だが、著者はパシリとしての役割を担うからこそ見えてくる世界があるとして、調査としてのパシリを肯定的に位置付けている。
通常調査は、外部から観察するか、内部で観察するかの2つが考えられる。前者はアンケートが挙げられそうだ。後者はインタビューや参与観察などが挙げられるだろう。だが、著者は観察するのではなく内部にいながら当事者になっているのだ。そうすることで、観察するのではわからない世界を描き出すことに成功している。ただし、当事者になることの問題についても念頭においた上で、独自の調査のあり方を生み出している。

このように文字通りこれまでにない調査方法によって生み出された本書は、沖縄のヤンキーという内地に住む我々では接することがないような者たちについて伝えてくれる。そして彼らが、どのように暮らし、そこで人間関係を構築し、何を考え行動しているのかを詳細に伝える。さらに、ヤンキーたちとの関わりを記述することで、彼らの住む地元とは何か、沖縄とは何かを教える。

自分の知らない人たちを知るヒントを得るためでもいいし、沖縄を知るためでもいいし、これから調査を行うためでもいいし、ノンフィクションに興味があるためでもいい。どんな理由でも、一度は読んでみる価値があるだろう。

0
2025年01月02日

「ノンフィクション」ランキング