あらすじ
銀座の有名カッフェー「ドンフワン」でトップを張る女給君江は、うぶで素人のような雰囲気ながら二股三股も平気な女。そんな彼女の身辺でストーカーのような出来事が起きるが、君江は相も変わらず天性のあざとさで男たちを悩殺し、翻弄していく。しかし、にわかにもつれ始めた男女関係は思わぬ展開を呼び……(「つゆのあとさき」)。荷風が女給の身の上話を聞き取った小品も収録。(解説・川端康成、谷崎潤一郎)
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Posted by ブクログ
銀座のカッフェーで働く女給を主人公にした小説。わたしは以前に『濹東綺譚』を読んだことがあるが、女給は花柳界とはちょっと異なるものの、永井荷風にこういう世界を描かせると一級品であると感じる。なかなかおもしろかったのであるが、しかしどう評価するかは難しい。巻末に併録された谷崎潤一郎による「『つゆのあとさき』を読む」では「何の目的も、何の主張もそれ自身のうちに含んでいない冷めたい写実的作品」と評していて、この表現にかんしてはやや言いすぎているきらいがあるが、たしかにストーリーらしいストーリーがないというか、ともすれば君江の日記ともみなせるような作品で、根柢に流れているなにか特別な主張のようなものはない。尻切れトンボとまではいわないまでも、小説として完全に成立しているともいいがたく、清岡鶴子は突然留学を決め、村岡は手紙を送りつけてくるが、それぞれどうなるかわからないうちに物語は終わってしまう。清岡進もいつのまにか出てこなくなり、それまでほとんど絡んでこなかった川島金之助がいきなり出てきたと思ったら、置手紙で自死をする意志を告げたところで物語は終了。消化不良というよりも、呆気にとられてしまう。全体的におもしろいことは事実だし、永井荷風の筆力だからこそこの中途半端な内容で一流の小説に仕立て上げることができたというのはわかるのだが、もうすこしどうにかならなかったのかという思いもある。