あらすじ
〔ゴンクール賞受賞〕殺し屋、売れない作家、軍人の妻、がんを告知された男。彼らが乗り合わせたのは偶然か、誰かの選択か。パリ発の航空機がニューヨークに向けて降下をはじめたとき、異常な乱気流に巻きこまれる。乗客は奇跡的に生還したかに見えたが。先読みできない衝撃のエンタメ小説! 解説/斜線堂有紀
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3ヶ月前の自分が目の前に現れたら。
あるいは、3ヶ月後の世界で自分に会ったら。
「私」の人生をどう分かち合うべきなのだろう。
多くの登場人物が出てくる群像劇のような作品だが、どのエピソードも読みごたえがある。みんな何かしら抱えていて、幸せとは言えずとも満足して終わっているように見える。
掛詞や韻などが目立つのが印象的。「禅なる死は単なる死ではない」みたいな、おそらく原書での言葉遊びを日本語で再現したのだろう訳文も楽しい。
ところで、アメリカの大統領は馬鹿にされすぎではないかw
Posted by ブクログ
やや根気がいったが、面白い。
ミステリかと思いきやSFで、宗教学で、そして哲学だった。
シン・ゴジラを思わせる作戦劇。途中ゴジラ好きのキャラクターも登場するなど、もしかしたら作者はシン・ゴジラ観たのかしらと思ったり。
ラストについては、やはりシミュレーション仮説が正しかったのかなと私は感じた。
パソコンを終了し、最後にはブンッ、、、と。
恐ろしい。
Posted by ブクログ
なんかすごいものを読んだ。
一体どういう結末なんだろうと思って読んでたけど、異常事態が淡々と綴られていくこと自体を楽しんで読むのが正解だったのかな
各国の偉い人、どう考えてもモデルがいる(笑)
もう1人の自分がいたらいいのに、って割と昔から思ってたので私だったらこの異常を割とすんなりと受け入れてしまいそう。
それもそれで異常、かもしれない。
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中盤の、何が起こったかわかるところがめちゃくちゃ面白い。でもそこがピークで、残りは余韻だけな気も少ししてしまう。訳者あとがきにも書いてあったけれど、こういう事件があったらどうなるだろう、というの一本で遊び倒している。
終わりはきちんとあるけれど、ページ数も少ないし、最後の展開にあまり重きを置かれていないような感じがする。後半はずっとそんな感じ。思考実験としてすごく面白いし、創作物などでこういうシチュエーションを今後考える時に思い出される本だと思う。
Posted by ブクログ
異常事態の全容が明らかになった時、映画『シン・ゴジラ』を思い出した。人智を超えた事態が発生した時、人類はどう行動するのかをシミュレーションしているような内容だったのが共通しているからだろう。
一部の時点では、多分描写されている人物達には皆、後々重要な変化が訪れたりするんだろうなぁとうっすら予想しながら読み進めていたが、正直集中力が続かなかった。ピックアップされている人物が多すぎることに戸惑いがあったので。
二部以降は筆者の意図も理解でき、一部を読み流していたら面白さが加速していく波に乗れなかったな、とちょっと得した(?)気分になった。
重複者を日常へ戻すにあたり対策を講じる中で、宗教面にも配慮する場面があり、舞台が西洋圏ならではだなと感じた。もし日本でこの異常が起きても、宗教的思想からいきなり重複者を排除する方向にはいかない気がする。
パートナーや家族との関係性の揺らぎ、1つしかない戸籍や社会的立場をどちらの存在が得るのかなど、急に自分自身と物理的に向き合って答えを出さなければいけないという事態の残酷さや、意外な顛末を次々と目にすることになる中盤から後半は非常に読み応えがあった。
想像を裏切られる
「第一部のラストで思わず本を落とした」という小島監督などの帯コメントにひかれて購入。
SF読みなので一部のラストでめちゃくちゃ驚いたかというとそうでもなかったけど、その後の展開がすばらしい。
私を含む多くの読者が(なんで? どうしてこうなったの?)と期待するタネ明かしが本筋ではなく、(巻末解説にもあったが)それにどう立ち向かうかを作者は描きたかったのだ。そこが目ウロコでおもしろかった。そういう物語でもいいよね。
多岐にわたるジャンルへの作家の博識もすばらしいが、訳者のなめらかな翻訳がさらにすばらしい。
おかげで様々な文体ジャンルを含む物語をすらすらと読めた。
(アンドレの日常だけ、興味が持てなくて一瞬、放り出そうとしたけど)。
そして、ブレイクはそれでよかったのか、なみたいなアレもありますが、総じて楽しい読書体験でした。
Posted by ブクログ
そうとう厄介な作品だ。
が、読み終わってみると、それなりの満足感がある、とも言える。
本書は、巻末の、あとがき、解説の世話にも大いになった。ご丁寧に、それらも、ここまでは第一部を読んでる途中の人へ、とか ここから先は結末に触れているなど、読者が頼ってくるだろうことを想定して書いているところも面白い。それだけ、厄介な、というか、途中で放り出したくなる序盤なのだった。
とにかく第一部は我慢して読んでみること。そして第二部は、あくまで建付けにすぎず、核心は第三部にある、と我慢に我慢が必要な作品だ。
訳者あとがきで、この先注意、とある先に書いてあることではあるが、これは先に知って読んでもよかろうと思う。それは、作者がウリポという実験文学集団というものに所属しているということ。
ウリポ(Oulipo)とは、Ouvroir de littérature potentielle (潜在的文学工房)のことで、1960年に作家レーモン・クノーと数学者フランソワ・ル・リヨネによって創設され、作家だけでなく、数学者や言語学者も参加する珍しい文学集団。作者のエルヴェ・ル・テリエは1992年からメンバーとなり、後には会長も務めている。「潜在的文学」、それは、まだ存在していない文学の可能性のことで、それを探求する集団ということらしい。
なので、本作も、起承転結といった、一般的で分かりやすいストーリー展開を見せるでなく、目に見えて分かりやすい主人公がいて、その敵対者や協力者がいて、紆余曲折の冒険を経て作品としてのひとつの結末に辿り着くという体裁も取っていない。群像劇とも言えるが、それともちょっと違う。
むしろ、ひとつのシチュエーション、とある出来事を体験した個々人が、それぞれ経歴や国籍、性別、年齢、おかれた人生のどの局面であったかによって、どのように反応し、それぞれどのような結論に落ち着くかを並べてみたという、まさに実験的な作品となっている。
なので、第一部の、個々の人物の人生を眺めつつも、全てを記憶しておく必要も、どうやらなかったということだ(もちろん、全ては覚えられないし)。むしろ、気になる人物の、気になる行動、発言があれば、それを記憶の片隅に置いておくくらいで十分。気にならない人物は、ある意味、自分の人生においても、ご縁のなかった人のようなもの、そんな人の人生は知ったことじゃないと、割り切るくらいでほどよい。
もちろん、個々の人物の行動を、メモを取るようにしっかり記憶しておいてもよい。著者も、それぞれに人物に託したテーマ、それぞれの個人が己の人生における問いが用意されていることにも気づけるだろう。
例えば、アラカンの建築家アンドレは「老い」だし、世界的有名人のスリムボーイは「名声の裏の孤独」だろうし、「後悔」や「生と死」の問題を抱えた人物もいれば、徹底的に自己にこだわる犯罪者ブレイクもいる(否が応でもブレイクは目立つ。第一部でも冒頭だし、第三部でも一人だけ特異な行動を取る)。
ややこしいのは、第一部では、第三部でその帰着を描かれる人物と、そうでない人物が混在している点だ。ご丁寧にハヤカワepi文庫にはピンクの登場人物表が挿入されていて、16人もの登場人物の名前と職業が記されている。この人物たち全ての人生が語られ、全員が事態の解決、あるいは結末に関与してくるかというと、半分だな。一覧の後半、軍の関係者や、事態解明のための学者たちは、むしろ関係ないとも言える。そこが、本作のやっかいなところ。
結論、本作は、とある事態に遭遇した時、人はどのように行動するか? どのような選択をするか? の人間標本のような作品。
その事態を好機と捉えるか否定するか、そこに人生の新たな選択、可能性を見出すかは、ひとそれぞれということ。ある意味で、人生の選択を描いた作品とも言える。
この文学的実験は、なかなか壮大であり、一つの創作の手段ということでは大いに学ばせてもらった。
一人の主人公を設定し、その人物が動き出す様を自由に描くことで創造の翼が羽ばたくこともあれば、とあるシチュエーションという枠をハメることで、その中に、被検体として多くの人物を放り込むことで生まれる反応を観察するかのような手法でも、物語は生まれるのだ。
面白い!!
Posted by ブクログ
3.5くらい
読むのに時間かかった。物語の加速パートに入るまでが長い…人間も多くて誰だっけとなる。
シミュレーション仮説というのがどうも腑に落ちなくて、そこも読みにくいポイント
でも重複者それぞれの人生の選択が面白くて、特にスリムボーイは好き(対面の場で寿司を食べながらお互い見つめ合うシーン面白いし、なくした片割れとの出会いみたいにしっくりきててよい)
あとソフィアの父親による性暴力が明るみに出たところも、ちょいきついもののよかった。
終わり間際の俯瞰した状態で登場人物たちの様子が描かれるところ、映画みたい。
で、まさかの三便目…大統領の撃墜指示。ヒェ〜3があるなら4や5もあるのでは…これから全部落としていくん??と思ったけど、読み進むと、ミサイルが飛行機に達する1秒前、爆発までの時間がどんどん間延びして…この波動がこの世に存在するありとあらゆるものに作用するとあり、何気ない世界の日常の一コマが断続的に続いたあとに文字がバラバラになっていくのだけども、これってミサイルが重複し、ありとあらゆるところで爆発したってことなの??それともマッハ4の波動がありとあらゆるものを一瞬波紋のように揺らして、そしてまた元の日常に戻っていくの??
このラストシーンあたりの数ページは映像が明確に浮かんで美しいなと思い、面白かったけど、ラストも含めてわりかし難解でした。
Posted by ブクログ
同じ人々が突如現れたら、国家として人類としてどう対峙するか。
これがテーマの小説だ。
小説というべきか、ドキュメンタリーのようにも思える。
もともとの世界にずっと存在していた人たちをマーチ(3月)、3月時点から分岐して突如6月に現れた人たちをジューン(6月)と分類する。
言葉は便利だ。同じ人間ですら分類できる。
しかし、当事者にとっては残酷だ。
自分は、ずっと一人と思っていたのに、1号、2号とつけられたようなものだからだ。
一人の息子を前に合理的な判断を選び、共存を模索するマーチとジューンもいれば、
たった3か月の空白のために身を引き、新たな生活を始めるジューンもいる。
過去は思い出として共有はできるが、現在の共存は難しい。
ミステリーとして始まり、SFへ向かい、そして最後は文学的に終わる。
理不尽なこと(=異常)はいつだって起こり得る。
一人の理不尽なら、その人が乗り越えていくしかない。
しかし、多くの人が同時にその理不尽を背負った時、そこに国家が入る。
国家が入るということは、ルールが入るということだ。
ルールは、多くを救うことはできるが、
すべてを幸せにすることはできない。
それでも、よりましな答えを探し続けるしかない。
Posted by ブクログ
異常事態を見抜けるか?とか、あらすじ検索禁止という帯のSNS受けを狙った文句がミスリードすぎる。これはシミュレーション小説で、実際に読むことに意味があるのであって、ネタバレは読書体験を損なわないし、ミステリやSF的になぜこんなことが起きるかを推理するものでもない。
私はSFを、科学で現象を解明するものを期待していたから、終盤に差し掛かりどうやらそんな話ではないらしいと分かって少し落胆した。
それでも内容は面白く一気読みしてしまったし、「3機目」の悍ましさもいい。
Posted by ブクログ
もう一度読めば絶対に評価は変わるのだけど、1回目だと晦渋なストーリーに喰らってしまった。
とはいえこれは、ワットダニットミステリ的な一本道を期待してしまった故の読みづらさであり、本著のテーマは寧ろミステリでもSFでもなく、自らの“重複者(ダブル)”が現れた後の11人の人物それぞれの参差錯落な内面であり、生の選び方である。
これに加えて、登場人物それぞれの属性に合わせた文体や語彙レベルの緩急、詩、メール、新聞記事、聴取記録など形態の異なる執筆方法、小説『異常』の入れ子構造など、実験小説(?)としてのメタ的な遊び心がこれでもかと詰まった1冊だった。
そうした、ある意味では人物と技法の“るつぼ”のような本著が、殺し屋ブレイクの物語から語り始められる展開はなんとも渋い。