あらすじ
自己責任ではない!
その貧困は「働けない脳」のせいなのだ。
ベストセラー『最貧困女子』ではあえて書かなかった貧困当事者の真の姿
約束を破る、遅刻する、だらしない――著者が長年取材してきた貧困の当事者には、共通する特徴があった。世間はそれを「サボり」「甘え」と非難する。だが著者は、病気で「高次脳機能障害」になり、どんなに頑張ってもやるべきことが思うようにできないという「生き地獄」を味わう。そして初めて気がついた。彼らもそんな「働けない脳」に苦しみ、貧困に陥っていたのではないかと――。「働けない脳=不自由な脳」の存在に斬り込み、当事者の自責・自罰からの解放と、周囲による支援を訴える。今こそ自己責任論に終止符を!
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Posted by ブクログ
『貧困と脳』は、子どもや女性、若者の貧困問題を長年取材してきた著者が、自身の脳梗塞によって高次脳機能障害を負った経験をもとに、「脳に障害が起きるとはどういうことか」を当事者の視点から詳細に描いた一冊である。
本書の大きな特徴は、高次脳機能障害がもたらす変化を、抽象論ではなく極めて具体的に説明している点にある。障害によって脳内のワーキングメモリが著しく低下すると、現状を把握する力や判断力、自己決定力が弱まり、簡単な会計ができない、会話のスピードについていけない、自分の状況を言語化して説明できないといった問題が生じる。これは能力や努力の問題ではなく、「脳の機能が物理的に制限されている状態」であることが、実感をもって伝わってくる。
特に印象的なのは、福祉制度との相性の悪さだ。健常者であっても煩雑で分量の多い福祉関連書類を、高次脳機能障害を抱える当事者が把握し、熟読し、記入することはほぼ不可能に近い。その結果、本来最も支援を必要としている人ほど制度にアクセスできず、支援からこぼれ落ちてしまうという構造的な問題が浮き彫りにされる。
では、脳機能障害を抱える人に対して、どのような支援が望ましいのか。本書は、特別な専門知識よりもまず「姿勢」の重要性を示す。当事者は常に強い不安を抱えているため、その不安を増幅させるような言動を避けること。情報量を適切に削減・補完し、理解を助けること。そして、周囲に対して当事者の状態を説明する力を、支援者が補完していくことが求められている。
読み終えて、自分自身がこれまで「脳機能障害のある人に会ったことがない」と思い込んでいたことに気づかされた。しかしそれは、見えていなかっただけで、実際にはすでに出会っていた可能性が高い。もし無意識のうちに、理解のない言動や小さな迫害をしていたのだとしたら、そのことに対して申し訳なさを覚える。本書は、社会の中で当たり前とされている「理解力」や「自己責任」という前提を静かに揺さぶり、今後どのように他者と向き合うべきかを考えさせてくれる一冊だった。
Posted by ブクログ
衝撃的だった。
福祉でカバーされない、グレーゾーンが売春や犯罪の餌食になるとは、知ってたけれど、生来の障害ではなく後天的にも「脳が不自由な人」にいつでもなりうるということが怖くなった。
脳機能障害は50歳以上ならかなりの確率で身近な問題だし、外傷によってもあり得る。
認知症でも同様のことが起きるから、この先を考えてしまう。
ただ、ずっと調べているけれど、良い対策がない。成人後見人などは正直使えないし、自分の認知機能が衰えたときにどのように、自ら福祉にアクセスしたり、お金を管理すればよいのだろう。少なくとも、犯罪からは守りたいが、合法的な保険、高額商品の売り込み、ほぼ詐欺のようなリフォームや古物商の営業からはどのように身を守れば良いのだろう。。。。
不自由な脳
・集中できない
・短期記憶障害
自分ができること>できないこと ⇒できることに集中して、必要なサポートを受ける
適度な依存 少し助けてもらうだけで、プラスではなく掛け算でできることが増える
一人でできることが減る=人に頼らないといけない
だが、家族やパートナーも本人を心配するがゆえに、助けどころか追い詰めてしまうこともある。
答えがない、けれど自分ごととして考えていかないといけない。
著者が高度脳機能障害を経験しているからこその内容で、「我々」という言葉を使っているのが印象的だった。