あらすじ
「うつ病」の治し方や復帰方法を説明した書籍は数多くありますが、うつ病の人が本当に知りたい「復職後の働き方」を説明したものはありません。本書では、復職を「ゴール」とするのではなく、復職の先の「巻き返し方=働き方」を、著者の実経験をとおして紹介しています。
現在も「うつ病」と闘いながら仕事を続けている著者が贈る、仕事と生活を充実させる小さな工夫が詰まった1冊です。「うつ病」に悩む方はもちろん、家族や職場の周囲に「うつ病」の方を抱えている方にお薦めします。世の中は上昇志向の強い人間ばかりではありません。少し気弱だけど普通に働きたいと願う方にも役立つ仕事術となっています。
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Posted by ブクログ
うつ病による休職から復職と、その後の仕事の進め方などを、具体的にどのようにしていくか書かれた本。
復職に関するノウハウは、あまり参考図書がないのだけれども、この本は復職を視野に入れ始めた人に見て欲しいと思う。
一度うつになったら、以前のような仕事の作業状態には戻れない、ということを念頭に入れて、それではそれを何で補うか、心構えや、不安、怒りの逃し方、現場で混乱しないための作業フローの作り方や参考書、iPhoneなどのアプリなどを紹介しています。
何より、ご本人が乗り越えてきた不安や怒りや悲しみを、読者も併走する気持ちで読むことで、自分の不安は自分だけのものではないと感じることができる。復職の際に必ず役に立ってくれる友人のような存在になる本です。
Posted by ブクログ
2012年2冊目。
207頁。
三省堂神保町店で購入。
著者は未だ抗うつ薬を服用しながら仕事をされているということで、他のうつ病について書かれた書籍にはない生々しさ、うつに苦しむ方の叫びのようなものが感じられた。
その一方で、現実問題として、うつを抱えたまま仕事をし、賃金を得なければならないという状況下での、日常の行動やメンタルコントロールといった部分で勉強になることが多々あった。
特に今後は、
1.月に1度、最低1時間は一切の情報を遮断する時間を設ける
2.セーフティーネットとして、最低限の貯蓄をする
3.GTDを日常生活において活用できるよう、以前読んだ関連書籍を再読する
を意識して行いたい。
≪本文引用≫
p.3
私は、2007年の夏に「うつ病」と診断され、2回、休職と復職を繰り返しました。今なお寛解(症状がほとんどなくなったものの、完全に治癒したわけではない状態のこと)には至っておらず、抗うつ薬を服薬sなければ、極度の抑うつ状態に囚われ、身動きが取れなくなってしまいますし、睡眠薬を飲まなければ寝つけない不眠状態となってしまいます。
p.10
本書は、中小企業に勤めていて特別スゴイ経歴も特技もない、ごく普通のサラリーマン、しかも「うつ病」というハンディを抱えたサラリーマンが、ビジネスを進めるうえで実行している小さな工夫を扱ったものです。
p.42
1か月に1度、1時間でもよいので、家族とも会わず、何も見ず、何も聞かず、一切の情報を遮断する時間と空間を確保するだけです。
イメージとしては、座禅に近いでしょう。
p.51
「備えあれば憂いなし」というのは本当です。一定のお金があることは、身近ですぐ行動に移すことができる一種のセーフティーネットだと私は思います。
p.74
私はこういった「気分に的を当てたコンテキスト」を維持しておくという工夫は、健康な方にも有効だと考えています。たとえば「@喧嘩したとき」なんてコンテキストはどうでしょう?
p.114
先に「大逃げ」を打っておけば、「1日くらい休んでも何とかなる」と思うことができます。
p.159
今自分にできること。頑張ればできそうなこと。
そういうことを積み重ねていかないと、
遠くの大きな目標は近づいてこない。
と、シアトル・マリナーズのイチロー選手は『イチロー 262のメッセージ』(ぴあ)の中で言っています。
p.182
ワークとライフは、どちらに比重を置くべきだというような捉え方ではなくて、「ライフの一部にワークがある」と考えた方がニュートラルではないかと私は思っています。
仕事であれ、プライベートであれ、バランスなどという二者択一的で矮小な視点ではなくて、「クオリティ・オブ・ライフ」という大きな視点で考えてみてはいかがでしょうか。
p.200
過酷な競争の中で戦い、賃金を得ていく以上、復職はゴールではありません。その先が重要なのです。
Posted by ブクログ
「小さな工夫をすることで、過酷なビジネスの現場でも、平常心を保ち、心を守り、高いパフォーマンスを発揮しつつ、楽しく笑って生活することは可能です(P.203)」
ここに著者の想いがすべて集約されていると思う。
ぼくらは過酷なビジネスの現場から逃げられないということ。
過酷な状況に人は耐え続けることはできないということ。
それでもちょっとした工夫で、人は幸せに生きていけるということ。
本書にはその「小さな工夫」が紹介されている。
うつ病の人でもそうでない人でも、「あるある」と思える事例とそれへの対応策=小さな工夫はきっと役に立つはず。
もちろん「明日使えるテクニック」も大事なのだが、私が本書を好きな理由は「自分も幸せになれそう」と思わせてくれる著者の等身大の文章だ。
「それでも明日、職場へ向かうすべての人へ。」というコピーがすべてを物語っている。