あらすじ
2004年の法人化により、日本の国立大学は自律と教育・研究の活性化を求められた。
だが、目標を達成したとは言いがたい。
原因は国からの交付金の先細りなのだろうか。
同様の改革を進めたドイツの国立大学は、厳しい予算下でも、複数校が競争しつつ世界大学ランキングの上位を占めている。
学長のリーダーシップなど、日本で礼賛されてきた英米モデルを見つめ直し、日独の明暗を分けた大学統治のあり方を比較検証する。
はじめに――なぜドイツと対比するのか
第1章 数字に踊らされる大学人
1 数値目標の広まり
2 ドイツの大学統制のゆるやかさ
3 数値指標は有効か
4 「メリハリ論」の特異さ
5 「外国」では大学予算が潤沢なのか?
第2章 古き良き「学者の共和国」から公的サービス機関へ
1 世界的潮流のなかの法人化
2 20世紀末における高等教育の課題
3 法人化はどこでつまずいたのか
4 経営管理の強化の必要性
第3章 「ゆるやかな目標管理」でうまくいくドイツ
1 ドイツの業績協定と日本の中期目標・中期計画
2 ゆるやかな目標管理
3 ドイツの大学における本部と学部の関係
4 自己規律が働くドイツの大学
第4章 多元的な評価軸の大学間競争を
1 大学コントロールの理論的整理
2 国際的に見た日本の大学コントロール
3 ユニバーサル段階の大学コントロール
4 日本の大学間競争の何が問題なのか
5 多元的な大学間競争
おわりに――大学・行政・社会の信頼関係に向けて
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Posted by ブクログ
ドイツの事例を引きつつ、法人化以降の大学改革を検証する。
はっきり言えば、文科省の打つ手はすべて失敗しているので、ドイツとの比較も何もない。しかしここでの書きっぷりからはドイツは比較的うまくいっているように見えて羨ましい。
産業界の要請を受けた政府の「選択と集中」ほど愚かな政策はない。学問や研究は金儲けの道具ではないというのに。寂しい話だ。
著者の提唱する「多元的な選択と集中」は検討に値する案だと思う。実行にはいろんな困難があるけど。しかし、優秀な人間がそろっっているはずの文科省はなぜ失敗続きなのかを、文春あたりに突っ込んでもらいたいもんだ。
Posted by ブクログ
2024年11月25日発行。日頃、国立大学運営の最大の癌は「中期目標・中期計画」と思いながら仕事してるが(=ブルシットジョブ)、本書はこのことを裏付けるような記述があり、一気読みした。
日本同様に財政難の中NPM的大学改革を進めてきたドイツは「高等教育において、厳密な目標管理は根本的に不可能」と判断し、「ゆるやかな目標管理」に転換して大学の自律を実現し成果を上げてきている。一方で日本の国立大学は、KPIを設定するなど管理の焦点を評価指標のレベルまで下ろして、“評価疲れ”以上に国力低下の遠因にもなってしまっている。
この日独の明暗が分かれた原因は「大学と行政の間の相互不信(p197)」にあるという。この点、共感できるが現場感覚としてこの解消には法人化20年以上の年月がかかると思う。それより、行政との信頼関係より「はるかに重要」な「社会からの信頼」を確保することに注力したい。