あらすじ
旧制第一高等学校に入学した川端康成(1899-1972)は、1918(大正7)秋、初めて伊豆に旅をして、天城峠を越えて下田へ向かう旅芸人の一行と道連れになった。ほのかな旅情と青春の哀歓を描いた青春文学の傑作「伊豆の踊子」のほか、祖父の死を記録した「16歳の日記」など、若き川端の感受性がきらめく青春の叙情6篇。
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Posted by ブクログ
文章も構成も確かに美しい。複雑でないものを陳腐というのは浅薄だが、しかし、画期的とまでは言えない気がする。伊豆の踊り子以外の篇を未だ読んでいないので、悪しからず。
薫に投影される、無垢で潔白な女性像というのは、愛情とか神秘を描くのに一役買っているのかもしれない。しかし、時代背景の理解が浅いのかもしれないが、気持ち悪いと感じてしまった。『草枕』の女は神秘的でエロティックで不快感も感じなかったが、それだと温度のある愛情を表現できないから、やりたいことは成功してるのかもしれない。
というのが今の自分のファーストインプレッションで、文学を味わい、学んでいく過程で変わっていく価値観かもしれません(という予防線)。
Posted by ブクログ
「十六歳の日記」。
冒頭の祖父尿瓶(しし)のシーンも凄い。
が、数え16歳=満14歳が、100枚の原稿用紙を大きなテエブルに据えて、自分ー祖父ー手伝いのおみよ、で話しているシーンが壮絶。
祖父は半ば痴呆が進んでいるのか、果たせなかった野望を、大隈重信に頼めばなんとかなると言い張る。
おみよは馬鹿にして笑う、が、ある瞬間ふっと黙ってしまう。凄絶な記録文学だ。
語り手は淡々と「見ている」……盲目の人を見るという視線の非対称性は、今後、鑑賞用の女を探し求める川端の人生のテーマにつながっていくのだ。
愛惜と観察。
時間の区別なくししと食事の要求と。苛立ち。
スケッチとは、単に思ったことを書くのではない、意思によって「それ以外」を捨象する。
という点で14歳時点から書き手だったわけだ。
あとは、川端自身のあとがきも興味深い。
岩波文庫入りしたのは1952年で、もちろん代表作「伊豆の踊子」も「雪国」も刊行され、さらには全16巻の全集(1948-1954)を刊行中。
権力獲得期間で、着々と大家への道を作っている段階だ。
14歳で書く → 単行本収録時、27歳で( )に書き加える → 50歳を超えて文庫化でまた目を通す。
この繰り返しのしつこさもまた、川端。
■「十六歳の日記」
初読。
■「招魂祭一景」
既読。
■「伊豆の踊子」
既読。
■「青い海黒い海」
既読。
■「春景色」
既読。
■「温泉宿」
既読。
◆川端康成自身の「あとがき」
初読。