あらすじ
普通の人間にとって実践可能な人生の真の生き方とは何か。明治27年夏期学校における講演「後世への最大遺物」は、人生最大のこの根本問題について熱っぽく語りかける、「何人にも遺し得る最大遺物――それは高尚なる生涯である」と。旧版より注・解説を大幅に拡充し、略年譜を新たに付した。「デンマルク国の話」を併収。改版(解説=鈴木範久)
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Posted by ブクログ
内村鑑三の講演を文章にしたものだそうで、わかりやすく、内容がスッと入ってきました。私がこの本を読むのは2度目です。
2回に分割して読んだので、感想を書くのは『デンマルク国の話』だけにします。
ここからネタバレになりますが、『デンマルク国の話』はダルガスというユグノーの男が、第二次シュレースヴィヒ=ホルシュタイン戦争に敗れたデンマークを立て直すために奮闘する話でした。
ダルガスは剣で失ったものを剣で取り返そうとはせず、不毛な国土を田園にして補うという考え方の持ち主でした。具体的に彼がどうやってデンマークを発展させたかは実際に本を読んでもらうとして、ダルガスの思想、彼を取り上げた内村鑑三の考えは今の日本にも多く通ずるところがあると思います。
P82の「戦いに敗れて精神に敗れない民が真に偉大なる民であります。」の部分はまさに端的に彼の思想を表していると思います。解説によると、彼がこの講演をしたのは1911年で、日本による朝鮮併合の一年後でした。彼が日本によって併合されて国土を全て持ってかれた朝鮮を思って、書いたということです。よく朝鮮併合後にそんなことできるなと思います。
敗戦したとしても、そこから国家、民族の精神を失わずに国運振興に励めば敗戦による損失を補うことができるということで、奇しくもこれは1945年に敗戦した日本にも当てはまることにもなりました。
終戦後の人々が読んだら大いに勇気づけられると思いましたが、文科省がこの内容を教科書?に1947年に入れてたってことで、そりゃそうかってちょっと恥ずかしいです。
初めて、少しですが長く感想書くので拙く、恥ずかしいですが、頑張りました。ありがとうございます
Posted by ブクログ
明治時代に活躍した聖書学者であり思想家の内村鑑三氏による講義録2編。
「後世への最大遺物」では有用な遺物として金、事業、思想を順に挙げている。しかし誰でも後世に継げる最大の遺物として「勇ましい高尚なる生涯」を挙げる。ユーモラスな語り口とともに、日本人の精神をキリスト教的思想を以って説く様が印象的。
その流れは「デンマルク国の話」にも繋がり、デンマークのダルガスの事業を例にとって信仰と不屈の精神の大切さを説く。
内村氏34歳の講演というから視座の高さと鍛錬された胆力に驚かされる。一方、急に「源氏物語」に激高しディスりだす場面は狂気じみていて氏の人間らしさがあって個人的に好みのパート。
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美しき地球に生まれたからには記念として
金銭、事業、思想、文学、教育を残すべし。
個人に少なくとも共通してできることとしては、勇ましい高尚なる生涯
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後世に何を残していけるのか?を熱く語ったものと、デンマークの国民性を伝える2編の講演が読めます。より人間としての高みを目指すことが、結果的に後世に名を残すことにつながるのだなぁというのが、私なりの解釈です。
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最近、ようやく外の世界に対して何か作用を起こしたいと考えるようになってきた。今まではそんな余裕はなかった。自分個人の欲求を満たすことが精一杯だった。けれど次はその延長線上で何かを成したいと考えるようになってきている。より強めで具体的な思いと共に。
そんな時にちょうどある人がこの本をおすすめしてくれたため、これだ!と思って10秒後にはポチっていた。
後世への最大遺物は金、事業、思想(文学)、勇ましい高尚なる生涯の4つ。どれも崇高なものだが、今は欲張って全て遺せるような生を歩んでいきたいと思っている。全てを達成するには時間が必要。だからあと50年くらい生きたい。
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孫泰蔵さんの冒険の書に、後世への最大遺物が紹介されており、その流れで、改めて手に取る。64歳の内村鑑三が31年前の講演(1897年@箱根芦ノ湖畔)を振り返る改版に附する序、から引き込まれました。講演を本に起こしたものですが、なんとも素晴らしい本であります。北海道農学校出身の内村鑑三が語る北海道開発案(デンマルク国の話)も捨てがたい内容です(今からでも、この案を生かす形で北海道を開発できないものでしょうか)、どちらも★四つであります。
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■ひとことで言うと?
信念を貫いて生きる姿勢こそ、後世への最大遺物である
■キーポイント
- 後世に遺せるもの
- お金・公的事業・思想(著述と教育):遺すためにはある程度の才能が必要
- 勇ましく高尚なる生涯=生き様:どんなに不遇な状況でも遺せる最大遺物
- 「勇ましく高尚なる生涯」の選択 → V.E.フランクルの「態度価値」に通ずる考え方
Posted by ブクログ
読書について、かつて私は興味のままに、片端から何でも読んでいましたが、ある時ふと何故かこんな風に考えました。
いい年をして、いつまでも「乱読」ではないな。
以降、もっぱら一番好きだった、近代日本文学を中心に読んできました。
だからこの手の本は、最近あまり読んだことがないのですが、知り合いの女性にとってもいい本だと勧められて、読んでみました。
なるほど、とってもいい本であります。
まず、筆者内村鑑三についてですが、氏に対する私の知識はほとんど皆無であります。
何となく知っていたのは、氏がキリスト教徒であることと、確か、何かの「不敬罪」と関係していたんじゃなかったか(本書を読んでいて少しずつ思い出してきたのですが、日露戦争時に反戦論を展開した方だったなとか)、という程度で誠にお恥ずかしい。
ただ、近代日本文学をまとめて読んでいて私は経験したのですが、それなりに歴史に名前の残っている人の作品というものは、好き嫌いは別として、やはりかなり優れたものであるということであります。だから、内村氏のこの本についても、一種「安心」し「期待」しながら読んでいましたが、それに違わぬいい話でした。
これは講演を文章にしたものであります。
二つの講演ですが、話としては、二つ目の「デンマルク国」(いわずと知れた「デンマーク国」のことですね)の方が具体的で面白いです。戦争に敗れ、国力が落ちてしまったデンマルク国が、いかにして国家を立て直すに至ったかを書いた話ですが、今読んでもとっても納得してしまいます。(少しだけ内容を書きますと、国を富ませるために最も大切なものは植林だという話です。)
でも今回は、一つ目の講演について、簡単に紹介してみますね。
これもとても面白い話です。
ある時、まだ青年だった筆者は、こうして世の中に、日本に生まれた以上、何とかして我が名を歴史に残したいものだと考えます。そして、親しい牧師さんに相談に行くのですが……。
というところで、えー、すみません、次回に続きます。
《第二回》
前回の続きであります。
内村鑑三の講演の文章であります。とっても面白いです。
筆者内村鑑三がまだ無名であった若き日、ある日青年内村はこんな風に考えます。
自分も一人の男子としてこの世に生まれた以上、何とかしてその名を後世に残したいものだ、と。
そして、既にキリスト教徒であった内村青年は、親しくしていた牧師さんに相談に行きます。
ところがこのことを打ち明けると、牧師さんからあっさり否定されてしまうんですねー。
「クリスチャンは功名をなすべからず」とか何とかいわれて。
うーん、と唸りつつ、内村青年は、しかし負けずに考えます。
これは私の言い方が悪かったのだ、名を残したいと言ったのが良くなかった、私のしたいことは名を残すことではなく、少しでも世の中を良くしたいことだった、そしてその結果として名前が歴史に残ることを考えたのだった、と。
なるほど、これならどこからも文句は出ませんよね。
そこで内村青年は、自らの志についてさらに考えていきます。
具体的にどうすればいいのか。
後世へ我々の残すものの中にまず第一番に大切なものは何か、と考えます。
……えーと、すみません。この調子で書いていきますと、とても簡単には終わりそうもないので、以下、かなりまとめつつ端折りつつ、「マキ」で進んでいきますね。
内村青年が考えた「後世への最大遺物」はこの順番で4つでした。
(1)お金
(2)土木的事業
(3)思想(哲学・文学)
(4)教育
……うーん、これはなかなか面白いランキングですよね。
というところで、すみません、また次回に続きます。
《第三回》
上記の本の読書報告の第三回であります。とても面白い本であります。
前回まで報告したのはこういう事でした。
筆者の若かりし頃の青年内村君が考えた、「後世へ我々の残すもの」はこの順番で4つであります。
(1)お金
(2)土木的事業
(3)思想(哲学・文学)
(4)教育
これはなかなか面白いランキングですよね。
一番目のお金は、もちろんその富を社会に有効に用いるのですね。
二つ目の土木的事業というのは、例えば大阪にある「道頓堀」みたいなものですね。ある人が頑張って土木的事業をしたことが後世の人々にどれほど有益となったか、というパターンであります。
三つ目の思想もよく分かります。社会が劇的に変化したその背景に、優れた思想家がいたことは歴史上後を絶ちません。
四つ目の教育というのもそのセットみたいなもので、自らが優れた思想をうち立てられないのなら、過去のそれを広く人々に知らしめる仕事としての教育であります。
こうしてみると一つ一つについて、とても説得力がありますね。
で、内村青年はどれを選ぶかというと(実は、1番目から考えていって、これはダメだからその次、と進めていったのですが)、自分はみんなダメだと思っちゃうんですねー。
謙遜青年内村君であります。
そうして内村君はとても失望してしまいます。
自分は後世に何も残すことはできないのだと、悲嘆の念を発するのであります。
しかしここから、内村君はなんと、コペルニクス的転回のような考えを編み出すんですねー。
それは何かといいますと、……、あ、すみません、次回に続きます。
《第四回》
読書報告の四回目になってしまいました。いくらとても面白い本でありましても、そろそろ終わりにしなければ、顰蹙ものであります。
がんばって終わらせます。
さて、若き日の内村鑑三氏が、悲嘆を繰り返した後手に入れた考え方はこういうものでありました。整理して書いてみますね。
まず内村青年はこう考えます。
今まで挙げた「後世への最大遺物」は、実は「最大遺物」ではなかった。
その理由は、まず、これは誰もが残すことの出来るものではないこと、次に、確かに有益なものではあるが、害も同時に伴っていること、の二点である。
そして、このように続けます。原文を引用してみます。
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それならば最大遺物とは何であるか。私が考えてみますに人間が後世に遺すことのできる、ソウしてこれは誰にも遺すことのできるところの遺物で、利益ばかりがあって害のない遺物がある。それは何であるかならば「勇ましい高尚なる生涯」であると思います。これが本当の遺物ではないかと思う。他の遺物は誰にも遺すことのできる遺物ではないと思います。しかして高尚なる勇ましい生涯とは何であるかというと、私がここで申すまでもなく、諸君もわれわれも前から承知している生涯であります。すなわちこの世の中はこれはけっして悪魔が支配する世の中にあらずして、神が支配する世の中であるということを信ずることである。失望の世の中にあらずして、希望の世の中であることを信ずることである。この世の中は悲嘆の世の中でなくして、歓喜の世の中であるという考えをわれわれの生涯に実行して、その生涯を世の中への贈物としてこの世を去るということであります。その遺物は誰にも遺すことのできる遺物ではないかと思う。
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……うーん、この辺の展開が、感動的といえば感動的であります。
が、しかし、なんかいきなり闇夜で鼻を摘まれたようだとも感じちゃいますねぇ。
ともあれ、この考えの基、内村青年は「勇ましい高尚な生涯」を送り、なるほど、後世に立派な名を残したのでありました。
……あのー、すみませんが、もしもお暇なら、この話題の第一回目に戻ってみてくださいませんかね。
そうすると分かりますが、なんだか、「ねずみの嫁入り」、メーテルリンクの「青い鳥」みたいな話でありますね。
Posted by ブクログ
内村鑑三 戦争の影響のなか、著者の事業観、国家復興論を中心とした名言満載の講演録
「後世の最大遺物」は、社会をよくするために お金をどう使い、未来のために何の種を植えるのか、自分で考え、人々の反対に打ち勝って、それらを実行せよ というメッセージ
「デンマルク国の話」は、戦争に負けても、善き精神を持った国民と未来のための事業があれば、国は亡びないというメッセージ
お金と事業について
*金は後世への最大遺物の一つであるが、遺しようが悪いと害をなす
*金を使う力を持った人が必要〜事業とは金を使うこと
*金を溜める人(金持ち)と事業家(金を事業に変ずる人)は別物
思想と事業について
*事業は 思想が世の中で実行されたもの
*世の中で実行できないなら、思想を遺こすことにより、将来の事業をなすことができる
文学は 国を改良するための戦争の手段と捉える点は かなり過激
後世に遺す最大遺物とは
*誰にでも遺すことのできる遺物
*利益ばかりあって害のない遺物
*勇ましい高尚なる生涯〜種々の不幸に打ち勝って大事業をなすこと
デンマルク国の話 の結論
*戦いは敗れ、国は削られ、国民は意気鎖沈し何事も手がつかないときに国民の真の価値は判明する〜戦いに敗れて精神に敗れない民が真に偉大なる民である
*国を興さんと欲すれば、樹を植えよ、植林は建国である
*善き宗教、善き道徳、善き精神さえあれば、国は戦争に負けても 衰えない
Posted by ブクログ
母校の先輩でもある内村鑑三曰く、人生をかけて後世に残すべき(わかりやすい)ものは「金か、思想か、事業か。」
とはいえこの3つは誰もが遺せるものではない。内村鑑三はこう言う。
この3つよりももっと尊きものがある。それが人生だ。
高尚なる人生はだれにでも遺せるチャンスがある。
とにかく善く生きろと。
Posted by ブクログ
弱った精神に柱が立ちます。この本は今の日本人に必要になってきている精神論を記載していますが、義侠心や隠忍自重の精神にして努力怠らないものが必ず成功を治めていく、と言うことをあらゆる歴史に照らして、また著者のキリスト教精神に照らし綴っております。
非常に面白く読めました。また勇気が湧いてくるので、何か物事を貫く必要がある方や、行き詰まりを感じている方、悩みを抱えている方が読むと、あらゆる薬やストレス発散を行うことに勝る読後の妙薬を得られるように感じました。
Posted by ブクログ
「後世への最大の遺物」は不敬事件の影響で極貧生活を送っていた内村鑑三が1894年の箱根での夏期学校の講演をまとめたもの。
明治の立身出世主義の正反対の思想。立身出世から零れ落ちた人々に共感を呼び、希望の灯となる。聖書の聖者からではなく、日本の歴史上人物の生き方から説いていく。
「デンマルク国の話」は、1911年、朝鮮併合の翌年に発表された。ドイツとの戦争に敗れ、肥沃な領土を失ったデンマーク復興の鍵は何かを語る。
まさにSDGs。
「代表的日本人」も読んでみたい。
Posted by ブクログ
我々は後世へ何を遺すことができるのか。内村鑑三曰く、後世への最大遺物は「勇ましい高尚なる生涯」であるという。金や事業、思想も後世への遺物と言えるが、これらは万人にとって遺すことが容易なものではなく、一種の才覚が必要とされる。しかし、高尚なる生涯は誰しもが希求することができ、後世に遺すことができる。まずは自分にとっての、「高尚なる人生」とは何かを考え、働きかけることが重要。
Posted by ブクログ
名声などのためではなく、私がどれほどこの世界を愛したかを記念物ときて残したい。
死ぬまでにこの世界を少しでも良くして死にたい。
勇ましい高尚なる生涯。
戦いに敗れ精神に破れない。