【感想・ネタバレ】後世への最大遺物・デンマルク国の話のレビュー

あらすじ

普通の人間にとって実践可能な人生の真の生き方とは何か。明治27年夏期学校における講演「後世への最大遺物」は、人生最大のこの根本問題について熱っぽく語りかける、「何人にも遺し得る最大遺物――それは高尚なる生涯である」と。旧版より注・解説を大幅に拡充し、略年譜を新たに付した。「デンマルク国の話」を併収。改版(解説=鈴木範久)

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Posted by ブクログ

古本屋で見かけて読んでみた。明治27年に内村鑑三がキリスト教徒の集会で後世に何を残すかを講演した記録。わかりやすいし内容もすばらしい。
後世に残すものは、金、事業(土木工事)、思想ときて、結局は「勇ましい高尚なる生涯」こそが最大という結論。キリスト教徒だから信仰・伝道・隣人愛などの生涯かと思いきや、武士道・意地・義侠心の生涯を説いているのがおもしろい。

(p74から引用)
しかしそれよりもいっそう良いのは
後世のために私は弱いものを助けてやった、
後世のために私はこれだけの艱難に打ち勝ってみた、
後世のために私はこれだけの品性を修練してみた、
後世のために私はこれだけの義侠心を実行してみた、
後世のために私はこれだけの情実に勝ってみた・・・
 
(p70から引用)
メリー・ライオン・・・(中略)・・・実に日本の武士のような生涯であります。彼女は実に義侠心に充ち満ちておった女であります。彼女は何というたかというに、彼女の女生徒にこういうた。
  他の人の行くことを嫌うところへ行け、
  他の人が嫌がることをなせ      

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あとこれは主題とは直接関係ないが、高知出身の下女が三日月に豆腐を供える話がかわいらしい。webで調べたら栃木県の神社には残っているようだが全国的には廃れた風習。三日月信仰自体が廃れたようだがなぜだろう。
 
(p51から引用)
その女は信者でも何でもない。毎月三日月様になりますと私のところへ参って「ドウゾ旦那さまお銭を六厘」という。「何に使うか」というと、黙っている。「何でもよろしいから」という。やると豆腐を買ってきまして、三日月様に豆腐を供える。後で聞いてみると「旦那さまのために三日月様に祈っておかぬと運が悪い」と申します。私は感謝していつでも六厘差し出します・・・

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2024年04月01日

Posted by ブクログ

教科書でしか名前を知らなかった方の本を初めて読みました。
よくわからないというのが正直なところ。
時代の空気(キリスト教にたいして)ってどんなんだったのかな。

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2023年09月30日

Posted by ブクログ

我々が後世に残すことのできるものを論じた本です。以下4つを後世に残す事ができるものとしてあげており、

1.金
2.事業
3.思想
4.勇ましく高尚な生涯

4つ目の「勇ましく高尚な生涯」を最大遺物と述べています。著者が言うように無数の方々の生涯が今を生きる我々に良い影響を与えているのは確かです。弱きを助け、艱難に打ち勝ち、品性を修練し、義侠心を実行し、情実に勝つという普遍的に大切であり、かつ困難な行動を続ければ、それは後世に繋がり、実りをもたらすという勇気付けられる話でした。

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2023年05月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

天文学者ハーシェル:わが愛する友よ、我々が死ぬときには、我々が生まれた時より世の中を少しなりともよくして行こうではないか
後世へ我々の残すものの中にまずは一番に大切なものがある。何であるかと言うと金です。我々が死ぬときに遺産金を社会に残して逝く、己の子どもがに遺して逝くばかりでなく、社会に残していくと言うことです

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2021年03月17日

Posted by ブクログ

後世のためにこれだけの金を溜めたというのも結構、事業をのこしたというのも結構、思想を雑誌の一論文にかいてのこしたというのも結構、しかしそれよりも一層よいのは、後世のために私は弱いものを助けてやった、これだけの艱難に打ち勝ってみた、これだけの品性を修練してみた、義侠心を実行してみた、情実にかってみたという話をもって、再びここに集いたい。
人間が後世にのこすことのできる、そして誰にも残すことのできるところの遺物で利益ばかりあって害のない遺物がある、それは、勇ましい高尚なる生涯である。

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2020年08月10日

Posted by ブクログ

後世への最大遺物は高尚なる人生である、と筆者は言う。後世に残す価値のあるものとして、お金、事業、思想が挙げられている。どれも残せない、と嘆く人に対してのメッセージ。高尚なる人生(自分は生き様だと捉えた)が、残された人たちにとって価値があるのだ、と考えさせられた。

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2020年05月16日

Posted by ブクログ

この本は、内村鑑三がおこなった講演を記述したもので、「我々は何を後世に遺すことが出来るか」というテーマについて語られている。

要旨としては、次のようなことだ。
『お金を遺すことも立派なことである。しかし、それは誰にも出来ることではない。お金を遺すよりは事業を遺すほうが影響は大きいだろう。事業よりも、更に影響が大きいのは思想だ。そして、我々が遺せるもので最も影響が大きいことは、生き様を遺すことだ。』

内村鑑三は、生き様を遺すことだけが立派なことと言っているのではなく、お金や事業や思想を遺すこともそれぞれに立派なことだと言っている。ただ、それらは才能が必要で誰にでも出来るということではない。
しかし、この「生き様」というものだけは、その心構えさえあれば必ず誰にでも出来るということで、他のものと一線を画して、それを特に強く聴衆に訴えている。

内村鑑三の語った話しを元に出版されたこの本こそが、彼自身の「思想」を体現したものであり、実際、その後に遺した影響は計り知れない。
この本が時を超えて読み継がれているのは、そこで言われていることが、古今東西のあらゆる人々に共通する心性を揺さぶるものがあるからだろうと思う。

天地は失せても失せざるものがあります。そのものをいくぶんなりと握るを得て生涯は真の成功であり、また大なる満足でもあります。私は今よりさらに三十年を生きようとは思いません。しかし過去三十年間生き残ったこの書は今よりなお三十年あるいはそれ以上に生き残るであろうとみてもよろしかろうと思います。(改版に附する序文)

金を遺物としようと思う人には、金を溜める力とまたその金を使う力とがなくてはならぬ。この二つの考えのない人、この二つの考え方について十分に決心しない人が、金を溜めるということは、はなはだ危険のことだと思います。(p.28)

ただわれわれの心のままを表白してごらんなさい。ソウしてゆけばいくら文法は間違っておっても、世の中の人が読んでくれる。それがわれわれの遺物です。もし何もすることができなければ、われわれの思うままを書けばよろしいのです。(p.47)

天というものは実に恩恵の深いもので、人間を助けよう助けようとばかり思っている。それだからもしわれわれがこの身を天と地とに委ねて天の法則に従っていったならば、われわれは欲せずといえども点がわれわれを助けてくれる。(p.62)

たびたびこういうような考えは起こりませぬか。もし私に家族の関係がなかったならば私にも大事業ができたであろう。あるいはもし私に金があって大学を卒業し欧米へ行って知識を磨いてきたならば私にも大事業ができたであろう、もし私に良い友人があったならば大事業ができたであろう、こういう考えは人々に実際起こる考えであります。しかれども種々の不幸に打ち勝つことによって大事業というものができる、それが大事業であります。それゆえにわれわれがこの考えをもってみますと、われわれに邪魔のあるのはもっとも愉快なことであります。邪魔があればあるほどわれわれの事業ができる。とにかく反対があればあるほど面白い。われわれが熱心をもってこれに勝てば勝つほど、後世への遺物が大きくなる。もし私に金がたくさんあって、地位があって、責任が少なくして、それで大事業ができたところが何でもない。たとい事業は小さくても、これらのすべての反対に打ち勝つことによって、それで後世の人が私によって大いに利益を得るにいたるのである。種々の不都合、種々の反対に打ち勝つことが、われわれの大事業ではないかと思う。(p.68)

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2020年07月15日

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