あらすじ
大レースの本命馬が失踪、その調教師の死体も発見されて英国中が大騒ぎとなる「名馬シルヴァー・ブレイズ」。そのほか、ホームズが探偵になろうと決心した若き日の事件「グロリア・スコット号」、兄マイクロフトが初めて登場する「ギリシャ語通訳」、宿敵モリアーティ教授と対決する「最後の事件」まで、雑誌掲載で大人気を得た12編を収録した第2短編集。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
『さあ、狩りの始まりだよ!ワトスン』
ホームズ決め台詞のひとつ。ん?ワトスン?ワトソンじゃないの??ホームズの人気に引けをとらない名相棒を光文社の日暮雅通訳では“ワトスン”と表記している。子供の頃から、ホームズの相棒は“ワトソン”と刷り込まれていた自分としてはこのワトスン表記が最初はどうしても違和感があり馴染めなかった。
調べてみると“ワトソン”を採用している翻訳版もあり正解はないようだ。中には“ウォトスン”と描かれているものもあるらしく『誰やねん!』とツッコミたくなる。ワトスンの正式名称は“John H. Watson”、日本の悪習である《英語は何でもかんでもローマ字読み》で当てはめると“ワトソン”になる。英国人に発音させて日本語に置き換えると“ウォッスン”。なんと!本場に近かったのは“ウォトスン”だった…(これで定着しなくてよかったわ)
なんにせよ、ワトスンと復唱され続けると、いつの間にか違和感はなくなり愛着が湧いてくる。むしろ“ワトスン”て呼ぶ方が通っぽいと感じるようになり、今では完全にワトスン派に鞍替えしてしまった。
ちなみにこのワトスン、実は3回の結婚歴があるという説がマニアなファンの間で論じられている。
やるね、ワトスン!
さて本作品も前作に続き全12エピソードが収録された短編集となっている。相変わらず小気味いい捜査で即時解決しているのだが、本作ではついにあの人物が登場する!そう、ホームズの宿敵“モリアーティ教授”だ!『英国で起きる犯罪を辿っていくと、必ずモリアーティに繋がっている。でも決して関わりを裏付けるような証拠は残さない。彼を断罪することこそが僕の最大の使命なんだ。』とホームズ自身も息巻いている。これから2人の幾多の知略戦が繰り広げられるのかと想像したら垂涎ものだ…と思っていたら、モリアーティ教授はたった一話のみの出演で即退場となる。え〜マジで、永遠のライバル的な存在じゃなかったのか〜、残念…
でも逆に、たった一話の登場だけでホームズやワトスンなみの知名度を獲得するとは、モリアーティ、、やはり只者ではない!
そして、本作ではもう一人、重要な人物が登場する!それは、ホームズの兄マイクロフトだ!
えっ?ホームズ、お兄さんいたの?ぜんぜん知らんかった。しかもこのマイクロフト、かなりの切れ者だった。『観察眼と推理力では兄には敵わない』とホームズに言わしめるほどのトンデモ人物なのだ!ただホームズと決定的に違うのは行動力だ。謎に対して興味を抱き、恐ろしいほどの推理を発揮させるが、それを立証するために自らの足を使おうとはしない。つまりは面倒くさがりの出不精ということだ、無念…
マイクロフトは、このあとのエピソードでも何回か登場し、兄弟で共同捜査なんてのも披露してくれる、、なのに何故こんなにも認知度が低いのだろう。
『シャーロック・ホームズの回想』に収載された全12編の個人的評価(好み?)を載せておく
名馬シルヴァー・ブレイズ ★★★★★
ボール箱 ★★★☆☆
黄色い顔 ★★★★☆
株式中買店員 ★★★☆☆
グロリア・スコット号 ★★★★★
マスグレイヴ家の儀式書 ★★★★★
ライゲイトの大地主 ★★★★☆
背中の曲がった男 ★★★☆☆
入院患者 ★★★☆☆
ギリシャ語通訳 ★★★★★
海軍条約文書 ★★★★☆
最後の事件 ★★★★★
Posted by ブクログ
名馬シルヴァー・ブレイズ
かなり昔に読んだけれどタイトル今でも覚えてた。ホームズの推理さすが。名馬シルヴァーブレイズ失踪、調教師ストレイカー殺される。話いりくんでるからまとめてみる。フィッツロイ・シンプスン動機あるけど無関係。ケイプルトン厩舍のサイラス・ブラウン荒野でシルヴァー・ブレイズ見つけて匿う。馬自分のものにするつもり、でもストレイカー殺してない。ストレイカー悪者でシルヴァー・ブレイズ怪我させようとする。シルヴァー・ブレイズ驚いてストレイカー蹴るとストレイカー死ぬ。カレーに混ぜたアヘン粉や怪我した羊、マッチの燃えカスからストレイカーの思惑推理したホームズすごい。
ボール箱
怖い話だった。スーザン・クッシングに送られてくる2つの耳怖い。耳はスーザンじゃなくてセアラに向けたもの。悪女に振り回されてジム・ブラウナー妻メアリと不倫相手アレック・フェアベアン殺した。でもブラウナー殺人怯えてる。罰受けてほしいけど救われてもほしい。複雑。
黄色い顔
僕この話全く覚えてない。窓から覗く黄色い顔、妻エフィーの噓と秘密。前夫の恐喝事件と推理するホームズ。でもそれ間違い。結末はハートフル心暖まる。黒人娘に仮面被せた。娘いること打ち明けるの怖くて隠してた。でもグラント・マンロウ良い人だった。眠いから寝る。おやすみ。
株式売買店員
赤毛組合みたいな話。ホール・パイクロフト割りの良い就職先得る。雇い主何か怪しい。雇い主ピナーほしかったのパイクロフトの筆跡。なりすましが目的。
グロリア・スコット号
ホームズ最初の事件。最初の事件普通はインパクトあるし長編とかになりそう。でも短編で回想でドイルは使った。大胆。ハドスン・トレヴァに届いた不思議な手紙。読んだトレヴァは卒倒する。手紙暗号で危険知らせるもの。輸送船襲った時の生き残りが脅してたのが真相。
マスグレイヴ家の儀式書
ホームズの中で一番冒険ものな話。学生時代の旧友レジナルド・マスグレイヴに頼まれた不思議な事件追うホームズ。マスグレイヴ家の謎めいた儀式書、執事ブラントンとメイドレイチェルの失踪。儀式書の暗号解いていく様子かっこいい。樫と楡の問題を数学的思考で解決していくのもさすが。ブラントン哀れだ。女の子の気持ち踏みにじりそのことに気づかなかったことがあの結果招いたと思う。
ライゲイトの大地主
完全調子でないホームズ活躍する。アクトン家に入った強盗事件とカニンガム家の御者殺害事件。御者ウィリアム持ってた紙切れ事件の鍵。ホームズ嘘巧みに使った。紙切れから注意反らすための発作、時間の書き間違い、ワトスンに罪なすりつけ。筆跡鑑定や証言の矛盾に気づくのも見事。カニンガム親子の犯罪暴かれた。細かい描写の矛盾、気づきたいな。
背中の曲がった男
ジェイムズ・バークリが夫人と言い争っている最中に死ぬ。夫人疑われるが窓の下には人の痕跡。ミス・モリスン証言する背中の曲がった男。ホームズの推理メインというよりストーリー性メインの話。背中の曲がった男ヘンリー・ウッド戦地でバークリにはめられて捕虜にされた。運良く生き残ってナンシー・バークリと再会、ナンシー夫人夫の悪行なじる。バークリ、ヘンリー見て卒倒して死ぬ。ただの事故死だった。ホームズのセリフ印象に残ってる。「正義に関係ないと言っていられる人間などいませんからね」。この言葉覚えとく。
入院患者
僕これ全く覚えてない。医師パーシー・トレヴェリアンの病院から消えるロシア人患者。何かに怯える支援者ブレッシントン。ホームズ、ブレッシントンの隠し事に気付き捜査を断る、ブレッシントン殺される。ブレッシントン、過去の犯罪で仲間売り、敵討ちにあった。ホームズの現場の様子から犯人達の行動推理する様子、さすが。因果応報。ホームズの話ではこれ、徹底的に守られている。
ギリシャ語通訳
マイクロフト遂に登場する。序盤のホームズとマイクロフトの推理合戦、記憶に残ってる。ホームズ、妬んだりしてないところがかっこいい。自分に自信持っている証拠。ギリシャ語通訳者メラスが巻き込まれたアテネ人監禁事件。犯人達、ソフィに結婚迫りクラティデス脅そうとしてた。犯人達取り逃がしたし、恐らくソフィが復讐した。後味苦い話。
海軍条約文書
ワトソンも言ってるけど「第二のしみ」レベルの国家の危機。ワトソンの友人パーシー・フェルペス、海軍条約文書盗まれる。関係者疑われるも決め手ない。パーシーの部屋に侵入試みる者まで現れる。ホームズも言ってるけど、今回手がかりを繋ぎ合わせるの大変。官僚の建物に詳しく、パーシーの病室に侵入する理由ある者、犯人。文書盗んで隠したけど部屋を替えることになって取り出せなくなったジョゼフ・ハリスン犯人。
「第二のしみ」のあらすじ、本編と違ってた。話、大きく変わってた。ドイル、ここで書いたあらすじ忘れた?もったいない。
最後の事件
前読んだ時よりずっと面白い。ホームズの緊迫感や覚悟がわかるからかも。モリアーティの小さなミスから追い詰めるホームズ。一進一退の攻防の末遂にホームズ、モリアーティ追い詰める。モリアーティとの対峙の後海外に逃げるがモリアーティ、追ってくる。また一進一退の攻防の末ホームズとモリアーティ滝壺に落ちる。一旦終わりかと思うと悲しい。
モリアーティの論文、「二項定理」だった。「小惑星と力学」ではなかった?調べないと。解説の講談師のホームズの話。明治時代に話したというのが小室泰六のホームズ?これも調べないと。
Posted by ブクログ
短編集の2作目。
タイトルの回想どおり、ホームズが手がけた最初の事件や学生時代の事件が書かれる。ホームズに負けず劣らずの才能を持つホームズの兄も登場する。
1つ1つの短編がとてもおもしろくて、いろいろ書きたいのだが、スペースも時間もないので、『最後の事件』だけにする。
この章の冒頭からいきなり衝撃的な文で度肝を抜かれたのだけど結末がとても悲しい。まさか『シャーロックホームズ』シリーズで感動して涙がでるとは思わなかった。
ホームズとワトソンがめっちゃ仲良くなってるなと思ってたらこれだよ。
次の短編のタイトルが『生還』なので期待することにする。
Posted by ブクログ
『名馬シルヴァー・ブレイズ』
『ボール箱』
『黄色い顔』
『株式仲買店員』
『グロリア・スコット』
『マスグレイヴ家の儀式書』
『ライゲイトの大地主』
『背中の曲がった男』
『入院患者』
『ギリシャ語通訳』
『海軍条約文書』
『最後の事件』
Posted by ブクログ
短編集。全12話。
言うことなし。今回もおもしろかったです♪(’-’*)
全部おもしろいんだよな〜。感想書くのに窮するくらいパーフェクトです。
実は他にも、『シャーロック・ホームズの生還』と『シャーロック・ホームズ最後の挨拶』を買っちゃいました(笑)
あとは『緋色の研究』と『四つの署名』を買えば、既刊の六巻は制覇したことになります★ただ、その日は近くて遠い・・・ようでやっぱり近そう(笑)読まずにいられないんだもん♪
このシリーズ、完結するのはおそらく来年の1月ですね。7月に七巻、10月に八巻、1月にラストの九巻が出るのだと思われます。
いやはや、楽しみが増えて嬉しいですね〜(*´ー`)
Posted by ブクログ
ホームズは短編の方が好きかも。ここに有名な滝のシーンが出てくるとは思わなかった。モリアーティはどの事件の裏にいたんだろう。今までのお話にも関わってたのかな
Posted by ブクログ
12の短編が楽しめます。
シリーズ4作目です。
1作目から読んできましたが、シリーズを読む前に抱いていたホームズ像が、ずいぶん変わりました。
病的なほど事件にのめり込んだり、探偵の知識を努力の結果(本人は努力とは思っていませんが)身につけたりと、意外な一面を見せてくれます。
今後のシリーズが楽しみです。
Posted by ブクログ
黄色い顔がいい話だったので好き
短くて不思議で解決も鮮やかで読んでて面白い短編集だった
さすがに古いのであっと驚くというほどではないけど、期待はずれでもない塩梅で人気も理解できるし安心して読める
Posted by ブクログ
新訳シャーロック・ホームズ全集の
短編集2作目。
今回は
ホームズが探偵になろうと決心したきっかけとなった
「グロリア・スコット号」事件
実の兄であるマイクロフトが初登場する
「ギリシャ語通訳」事件
そして宿敵モリアーティ教授と対決する
「最期の事件」
という、ホームズのパーソナルな部分に触れた話が
多く、シャーロック・ホームズというキャラクターに
大きく惹かれている者として大満足な一冊でした。
「最期の事件」の描かれ方が気になって調べてみると、
なるほど……これは納得。
Posted by ブクログ
ホームズ短編集の2冊目。
ポー名作集を読んでおいてよかった。1冊目の『~冒険』も含め、明に暗にポーの影響っぽいところを発見しては、古典を読んだ甲斐を感じて満足した。
同じく、ホームズも古典。「子供のころ好きだったな~」と知った気でいたけれど、知っていたのはほんの入門レベルであったことよ。この短編集では、「兄・マイクロフト登場(『ギリシャ語通訳』)」と、「宿敵モリアーティ教授/シャーロック・ホームズの死(『最後の事件』)」の単元を履修。
マイクロフトはシャーロックにも勝る観察眼と推理力の持ち主で、のちの短編では兄弟で活躍する話もあるらしいので楽しみだ。ところで彼はロンドンの「ディオゲネス・クラブ」という"社交嫌いの男たちが集うクラブ"の発起人のひとりだとのこと。なんだかとても自己矛盾に満ちたクラブのように思えるが、「人間嫌いの男たちだって、安楽椅子や最新の新聞雑誌はぜひとも欲しい。そういう人間のために創立されたクラブ」なのだそうだ。「クラブ」という英国文化への興味がじわりと湧いた。
そして問題の"ホームズ死すの巻"については・・・ロンドンのすべての凶悪事件の黒幕たるモリアーティ教授なんていうのが唐突に出てきて、彼との対決の結果、ホームズは死んでしまった・・・?のかどうかかなり曖昧なこの感じ。その後の歴史を知っているから言えることではあるけど、いかにも復活の余地を残している感あり。ホームズシリーズをやめたかった作者と、人気作品の連載を終わらせたくない出版社との、せめぎ合いの結果がこれだったのかな・・・と、ネットの憶測記事みたいなことを考えてしまった。
一話完結の探偵もの人気娯楽作品といえば、私の時代でいうならテレビドラマ「古畑任三郎」みたいな感じだったのかなあ、と想像。内容やキャラクターが似てるという意味ではなく、「みんなが楽しみにしていた」という雰囲気が。
ホームズの映像化作品にはあまりなじみがなく、カンバーバッチのSHERLOCKを1話見たかも程度。そのため、今は読んでいてもビジュアルイメージはそんなにはっきりしていないのだが、いろいろ調べていたら、クリストファー・プラマー(先月[2021年2月]91歳で逝去)がホームズに扮した「黒馬車の影」という1979年の映画があることがわかった。彼の演じたトラップ大佐のあの汲めども尽きぬ魅力を思えばあなた、ホームズ役はまだ見ていないけど、ちょっと、正直、控えめに言って、かっこよすぎてダメなんじゃないだろうか、ねえ?
Posted by ブクログ
オリジナルの刊行順に読んでいるシャーロック・ホームズも4冊目。今作も面白かった。
「シャーロック・ホームズの回想」というタイトル通り、ホームズが昔の事件を回想して、ワトスンに語る話がある。そして「ギリシャ語通訳」で、ホームズの兄マイクロフトが初登場。BBCドラマ「シャーロック」ではマーク・ゲイティス演じるマイクロフトが好きだったな~。あとはやっぱり、「最後の事件」が印象的だった。
Posted by ブクログ
初めの何篇かについては少し前に読んだため忘れている部分もあったのが少し惜しい。
兄のマイクロフト(?)2度目の登場のところ個人的にはすごく好き。やっぱり兄弟は信頼が置けるんだね。
回想は割とこうシャーロックの性格的な本質が垣間見える感じだと思った。
あとワトソンの「僕の診療...」だっけな、ホームズが不機嫌になるのちょっと面白いね。ホームズは冷血みたいなイメージだったけどなんだかんだワトソン君をめちゃくちゃ気に入ってるし結構ところどころで人間味感じるよね
Posted by ブクログ
若かりし頃に読んだことがあるんですが、いろいろと勘違いしていたことが多いのが、シャーロック・ホームズの作品ですね。
シャーロック・ホームズと言えば、天才探偵の代名詞で、すべての事件を解決していると思っていたのですが、文中の表現では、未解決の事件とか、解決はしたが残念な結末に至ったものが、複数あるんですね。
さて、この作品は、シャーロック・ホームズがいったん舞台から去ってしまう『最後の事件』が収録されているのですが、冷静に考えてみると『最後の事件』は、事件らしい事件は無いですよね?ホームズを葬り去る事が、その目的で、それ以外の事は書かれていないことを改めて認識しました。
Posted by ブクログ
多分、コナン・ドイルが書いて発表した順番で言うと、
①緋色の研究②四つの署名③~~~冒険
に続く四冊目。短編集。
面白いんですよね。
謎解きっていうより、やっぱり人間ドラマなんですねえ。
人の欲望とか業とかっていう、そういうダークサイドのお話。
それが当時のロンドンとかイングランドとか、海外とか、色とりどりに風俗も交えて描かれてますね。
それがでも、ホームズとワトソンっていうフィルター通しているから、
安心感も娯楽性もある。
ホームズの性格っていうか雰囲気、ワトソンとの掛け合い、信頼関係みたいなのが絶妙なんですね。もうキャラクターものですね。
「ルパン三世」が、1話1話はよく考えれば、無茶苦茶な話ばかりでも、面白い。というのともう、似てます。
「新宿鮫」シリーズともそういう意味では似ています。
きっと、アガサとかも同じようなことでしょうね。
メグレ警視シリーズもそうですから。
でも結構、えぐい人の欲望を描いているんですね。
資本主義、合理主義、宗教が規律とは、もう成り得ない資本主義都市社会のアノミー。というとちょっと大げさだけど、そういうことだから、今でも読めますね。
これ、ほんと、大人じゃないと味は味わいつくせないんですねえ。
この歳で再読して、魅力の深さに気づきました。
「キャラもの」としてのシリーズの面白味が際立つ短編集でした。
以下は、備忘録。ネタバレですので。
【名馬シルヴァー・ブレイズ】
競馬の名馬をめぐる犯罪。
愛人に金を使っていた調教師がイカサマをしようとした、という内容。
それにライバル牧場の思惑と、二重の偶然が絡む。
ちょっと話としては大らか?な偶然性があるけど、
イングランドにとっての競馬文化の雰囲気が感じられるのは楽しかった。
【ボール箱】
これはつまり・・・。夫婦がいる。幸せだ。
そこに妻の妹がやってくる。これが毒婦である。
夫を誘惑する。夫は突っぱねる。毒婦、怒る。妹に色々そそのかして、浮気させる。夫怒る。
浮気現場で、妻と間男を殺害。その耳を毒婦に送る・・・そういうお話。
これも、謎解きは手段で、目的は人間ドラマっていう感じで読ませます。
【黄色い顔】
アメリカで苦労して、実は黒人と結婚して黒人に見える子供を産んでいた女性が、イングランドに戻って過去を隠して幸せな再婚。
だが、娘のことを夫に言い出せず、それが疑惑を呼ぶ。
謎解きっていうより、心理描写が巧みだなあ、という一篇。
【株式仲買店員】
話の構造は、「赤毛組合」ですね。
株式仲買店員が、好条件でロンドン外に。
同時にその人を騙った悪党が株式仲買店に。
その構造をホームズが暴くけど、実は悪事の方は勝手にしくじって警察に捕まっていた、という。
【グロリア・スコット号】
ホームズ学生時代の最初の事件。
お金持ちの老人男、実はかつて別名で横領事件を起こして、
オーストラリアに遠島流刑に。
その船上で反乱に加わり、人も殺してた。
その過去を知っている人に脅されていた。
結局その人は、脅されて自殺的に死んでしまう。
実は謎も暴ききれず、人名も救えないという・・・。
でも味わいとしては「緋色の研究」「四つの署名」と同じ、
隠された海外系の暗い過去の話、というオハナシとしての面白味。
【マスグレイヴ家の儀式書】
ホームズの若き日の回想事件。
金持ちが居て、そこの執事がいるが、執事が失踪。
その旧家の歴史的な隠された財宝を盗もうとしていた。
古文書の文言文書に隠された秘密を暴く的な味わいで。
結論は、その男は共犯した、自分が棄てた女に復讐されて、
財宝の地下室で死んでいた。女は財宝を捨てて、どこかに去っちゃった。
謎は解くけど、犯人は捕まえないお話。
【ライゲイトの大地主】
田舎街。土地争いをしている相手の家から文書を盗もうとした、父と息子。
それを知られた家来を殺してしまう。
その父と子の陰謀を、死んだ男が手にしていた手紙の切れ端から、
筆跡鑑定的にホームズが暴く。
【背中の曲がった男】
現在中産階級でのほほんとしている当年男と妻。
実はその男の方はかつて、その妻を手に入れるために、ライバルの男にひどいことをした。
インドで従軍中にセポイの反乱の中、騙してライバルを死地に追いやった。
その被害者の男性が、艱難辛苦の末にイングランドに戻る。
偶然、その妻と再会。
復讐に訪れるが、悪い夫の方は心臓麻痺で死んじゃう。
経緯を暴くだけのお話。
【入院患者】
とある医師のところに入院している患者兼オーナーみたいな男が、
何者かに狙われている。
で、殺されちゃう。
実は強盗団の一人だった、というオチ。
実はホームズは何も解決も救済もできなかったという・・・。
【ギリシャ語通訳】
ギリシャから来た娘と兄が不良にひどい目にあう。
ホームズたちは、被害者は助けきれない。
でも巻き込まれた通訳の命は助けられた。
なんと言ってもホームズの兄・マイクソフト(だっけ?)の人柄雰囲気だけで楽しく読めてしまうけど、実は結構かわいそうな話。。。
【海軍条約文書】
文書の盗難事件。
被害者の婚約者の兄が犯人。
政治色で読ませるけど、オチとしては平凡かな。
【最後の事件】
モリアーティ教授が登場したら、
あっと言う間にホームズが死んじゃう。
この1篇だけ取ったら、別に名作とは言えないんだけど。
もうキャラクターだけで読んでしまう。。。
Posted by ブクログ
・ホームズとワトソンの絆を感じさせるエピソードが多くてじんわりする巻。『ノーベリ』のくだりもホームズがワトスンに寄せる信頼が見えるし、二人で公園を散歩して「気心の知れた同士、ほとんど口をきくこともなかった」のもとても良い空気だ。ホームズがワトソンとの会話で、「ぼくらの捜査」「ぼくらの考え」と「ぼくら」を使うのもいい!そして『最後の事件』でお互いがお互いのことを指して言う「真の友」「親友」には涙がこぼれる。
・ドイル先生は、善なる者が悪なる者を手にかけるのがお嫌いなようで、心臓発作や転んで石に頭をぶつけるなど、悪人が自分で勝手に死んでしまう設定が多いように思う。
・当巻は短編集。以下、各話のタイトルと、二人の生活に着目したポイントをメモしておく。
「名馬シルヴァー・プレイス」
p15 有名なディアストーカーとインヴァネスコート姿のホームズ挿絵
「ボール箱」
p59 相棒が考えていることを当てるなんてできるわけがないだろう、とワトスンに言われていたことを根に持って(?)、不意打ちでやってみせるホームズ。効果抜群に驚くワトスン。あら可愛い
「黄色い顔」
p98 語られるホームズの日常生活。重量級のボクサーでかなうものがない腕の持ち主だが、目的のない肉体労働をエネルギーの浪費と考える。ただしいざというときのために体調を万全に整え、食事も質素。おもしろみのない生活への不満で、たまにコカインを注射するのが唯一の悪習
p128 『ノーベリ』
「株式仲買店員」
「グロリア・スコット号」
「マスグレイヴ家の儀式書」
p205 奇人っぷりを表す名シーンのオンパレード。葉巻を石炭バケツの中にしまい、パイプ煙草をペルシャ・スリッパの中に入れ、未返信の手紙をマントルピースの真ん中にジャックナイフで刺す。部屋の壁に拳銃で弾を撃ち込んでV.R.と描く
p208 部屋の散らかりようを見かねたワトスンがホームズに片付けをうながす。立ち上がったホームズは片付けると見せかけて、過去の事件の資料をワトスンに見せ、まんまと事件の話へ気を引くことに成功する!語り始めるホームズ、「このまま散らかしっぱなしでかい?」このホームズのドヤ顔を見よ!
「ライゲイトの大地主」
p255 ホームズの神経発作演技シーン。ホームズは変装の名人だが、発作の演技の名人でもあった
p272 ホームズ「あんなふうにきみの心を痛ませたのは、すまなかったね」ワトスンを気遣うホームズ
「背中の曲がった男」
「入院患者」
p313 夜の二人の散歩シーン。挿絵で腕を組んで歩いているので目が点になるが、註釈に"この時代は仲の良い男性同士が腕を組んで歩くのはおかしくないこと"とあり、納得。(余談だが、この新訳シリーズは註釈が充実しており、当時の事情に明るくない者としてはとても助かっている)
「ギリシャ語通訳」
p346 ホームズの兄、マイクロフト登場!ホームズより才能は上だが、行動力がないとのこと。一切口をきいてはいけないディオゲネスクラブもこの話で登場
「海軍条約文書」
p382 "もちろん、ホームズは自分の仕事をこよなく愛していて、助力を求められるといつでも気持ち良く力を貸してやることを、わたしはよく知っていた"
p404 バラを手に取って語るホームズ。バラは人生にとって余計なものであり、余計なものであるからこそ神のなせる業でもある。「だからぼくらは花から多くの希望を与えられるわけです」
「最後の事件」
p452 ホームズのモリアーティ評が語られる。犯罪界のナポレオン。(犯罪の)巣の中心にじっとしている蜘蛛。自分ではほとんど何もせず、実際には手下が手をくだす
p476 モリアーティと共に、ライヘンバッハの滝壺へと姿を消したホームズ。ホームズがワトソンにあてた最後の手紙に書いた「真の友へ」、この顛末を書いたワトスンがホームズを呼称する「親友」に涙がこぼれる
Posted by ブクログ
シャーロック・ホームズ新訳、第2段
こちらも短編集
シャーロック・ホームズの活躍にうっとりさせられる作品
そして、最後の短編にはモリアーティ教授初登場
相変わらずのドキドキ感、さすがの一言
Posted by ブクログ
やはりモリアーティ教授との対決「最後の事件」が印象的です。1巻まるまる使ってもいいくらいの内容。ホームズが死の覚悟を持ってワトスンを遠ざけ、最後の闘いに赴くのが切なかった…。駆け足感がありますが、だからこそホームズは復活を望まれ、生還を果たすことになったのだと思います。映画の2はこの話が元になるのでしょうか?あと「名馬シルヴァー・ブレイズ」と「マスグレイヴ家の儀式書」「ギリシャ語通訳」が面白かったです。お兄さんも素敵ですが、ソフィさんがどんな復讐しでかしたのか気になりますw
Posted by ブクログ
1年に1冊ぐらいずつ読んでるシャーロック・ホームズです。
安定したおもしろさがありますねぇ。
なんか、思っていた以上に、ホームズとワトソンは、仲良しですね。ちょっと、ホームズは、ワトソンをバカにしているところがあるのかと思っていたけど、ホームズの方が、ワトソンのことを好きなんだとなんか伝わってきました。ラブラブだ。いや、変な意味ではなくね。
最後の事件は、続きがあると知っているのに、しんみりします。コナン・ドイル自身は、続編なしのこれで終わりって思っていたので、ちょっとは、しんみりしたのかなぁ。
でも、モリアーティ教授は、どんな犯罪をおかしたのかは、さっぱりわかんないですねぇ。
Posted by ブクログ
ホームズ、昔いろいろ読んだはずなのに、すっかり忘れている自分にビックリ。
モリアーティ教授との最後の事件は初めて読みました。
漠然としすぎて、お互いの凄さが今ひとつピンとこなかった、というのが正直な感想です。
Posted by ブクログ
ホームズシリーズの短編第二編。長すぎず、短すぎず、起承転結がしっかりしていてどんどん読みたくなる。当時から大人気だったというのも納得。やはりホームズとワトソンのキャラクターが魅力的、作品を重ねるごとにキャラクターに愛着を感じるので、本作の最後の話が当時の読者に与えた衝撃も理解できる。
Posted by ブクログ
前作、冒険の方が油にのってますね。
実際、この回想の方はシリーズの人気出てしまい辞められなくなって仕方なくコナンドイルさん書いていたそうで。
ホームズのキャラで一番素敵なところはアヘン中毒なところ。不義密通に関して非常に扇情的だとして社会通俗を乱す懸念をしていたくせに、アヘンはオッケーなんですね。今じゃ逆転してるあたり、なかなか面白いなあ。