【感想・ネタバレ】ゴッホは星空に何を見たかのレビュー

あらすじ

オランダ生まれのゴッホはゴーギャンやセザンヌらとともにポスト印象派を代表する画家である。ゴッホと言えば、思い浮かぶ絵は《ひまわり》かもしれない。また、《自画像》も有名である。しかし、他にも顕著な特徴をゴッホの絵に見出すことができる。それは、《星月夜》など星空が描かれた絵である。天文学者が「ゴッホは星空に何を見たのか」に着目し、ゴッホの絵に隠された謎を多角的に検証し、その奥深さに迫る。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

ゴッホについて、これまでにも本やポッドキャストでいろいろと読んだり聞いたりしていたけれど、

この本では、天文学者の著者が、特にゴッホの描いた星空に焦点てて、何の星やどんな月。どの時間帯や時期、方角のものが描かれているのか、いろんな推測をちりばめて解明が試みられています。

前提として、ゴッホが夜空を描く際に、だただいたいでではなく、実際の星座や月の角度などに忠実に描いていたのでは、という考え。

それで、実際はそれとはズレていたり、うまく当てはまらないのならば、ではどういう意図や背景で、たとえば空の違う方角や部分を持ってきたり、違う時間帯の月や星を入れたり、したのか、

というような、
完全に推測でしかないのだけれど、
ゴッホが自分の書いた絵について書いている手紙が、
いつの時期や時間のものだったか、というような情報を収集する実際の史料になっているのですが、

まさかその手紙がそういうふうに読まれるとは思ってなかっただろうけれども、

自分の絵について手紙でも書いているところが何だか親近感が伝わってくるというか、
自分の絵について聞いてもらいたかったにちがいない、思うと、
こうして今日たくさんの人々がゴッホの絵に魅了されてその絵を読み解こうと時間を割いていることは、
きっとゴッホにとっても喜ばしいことに違いない、
となんか感慨深くなったりする。

とにかく、
ひまわりだけじゃない、
星空、本当に素敵ですね。
ゴッホは色彩の画家、とも言われるように、
きっといろんな色が見えていたんだろうなーと。

バラ色の星、というのも出てくるけれど、色に注目したときに、あるいは色への高い感度を通して眺められていたゴッホの世界では、

夜の空、星は、描かずにはいられないものであったのかなーと。

星々への強い思い入れ、こだわりを感じてゴッホの作品を鑑賞できると、その絵がもっと生きてくるように見えてくる。

そしてきっとそれは、星だけじゃなくて、彼の描いたもののいろいろについて言えるのだろうと思ったり。

この本を読んでからは感じて鑑賞できそうです。

宮沢賢治との類似点も、大いに納得しました。
たしかに世界観がとても似ていそう。
二人はとてもいい友達になれたかもしれないですね。

夜空の星たちと交感してその美しさを味わい、絵にしたゴッホ。すべてを解明することは不可能だけれど、その色遣いと感性が多くの人を魅了する力があるということは定かですね。

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2025年04月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

我が家のリビングには《夜のカフェテラス》のジグソーパズルと《星月夜》のレゴが飾られている。ラピスラズリ色の美しい背景、眺めていると不思議と落ち着きを感じるカフェの明かり、不安とも異なる心のうごめきを感じる渦巻きの空に魅了され、いつの間にか手に入れたものだ。しかし、これらの絵が描かれた背景や、そこにゴッホが込めた想いについては、何も知らなかった。そうした中、本屋で本書が目に入り、手に取り読み進めた。
内容は、ゴッホ作品の中でも星空が描かれた6枚の絵に着目し、描かれた場所、季節を基に、天文学者である東北大学院理学研究科出身の谷口さんが描かれた星について多角的に考察し、そこから更に踏み込んで当時のゴッホに思いを馳せることで、作品の奥深さに迫る構成である。
本書を読むまで、これらの絵について、その風景や星空の色合いは現実で私たちが見るものとはとはかけ離れていることから、ゴッホがアーティストとして、現実に見えた景色を基盤としつつも、イマジネーションにより美化、脚色を施した作品なのだろうと捉えていた。しかし、著者の科学的考察に基づく現実の星座配置と絵のリンクや、放射光の波長帯による星の色の見え方の説明により、ゴッホは実際に1880年代にフランスで見た夜空を忠実に再現していたと知り、驚きを覚えた。また、こうして絵への理解を深めていくことで、きっとゴッホは、貧しい生活の中、寒空の下に身を置きながらも、鮮やかな星々に魅了されながら描いていたのだろう、と当時の彼の様子に想像を巡らせることができた。
ゴッホは星空に何を見て、それをどう絵に落とし込んだか。それはゴッホのみぞ知る。実際に見えた景色を彼の気分によって大きく変え、写実性を失っている可能性も十分にあり得る。そんな中でも、天文学的観点や、様々な有識者の考察、著書の情報を基に様々な仮説を立て、検証していくことで、ゴッホの作品の奥深くへと近づこうとする著者の姿勢には感銘を受けた。そして、論理的に説明できない部分については、ゴッホの当時の心境に思いを馳せてまとめられていることで、「ゴッホは星空に何を見たか」という本質的問いに読者を導く。理論では導ききれず、ゴッホの心情に思いを馳せる著者の様子は、夜空を眺めて誰かのことを考える人々の姿と重なる。読者の顔を自然と夜空へ向けてくれる。

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2025年01月04日

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