あらすじ
2019年7月、京都市伏見区にある「京都アニメーション・第1スタジオ」で起きた放火殺人事件。死傷者68人を出した凄惨な事件はなぜ起きたのか。裁判での証言や供述調書および独自取材を通して、青葉真司被告が起こした事件の実相に迫る。
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遺族の言葉が胸にしみる。一つ一つを引用しないが、青葉被告を「さん」付けするのだ。マスコミなどの目があるところでの発言なので、これが全てだとは言えないが、自分にはあの男に「さん」付けなど出来ない。人として見たくない。
誰もが苦労するし、裏切りによって追い詰められる経験はある。この男の場合はそれが極端だった。
社会に向けられた課題は確かに多い。特に的を得ているのが吉岡忍氏のコメント。サブカル的な側面から平成後半を読み取り、何が事件に影響したか? について語る点はあまりにも多くの事を射抜いていた。
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【目次】
はじめに なぜ事件は起こったのか
第1部 事件に至る経緯
第1章 青葉被告の生い立ちから
1.【事件当日】十数分間の逡巡の果てに……
2.【幼少期】親の離婚,そして貧困
3.【高校時代】「お前ならできる」恩師の言葉に背中を押され
4.【高校卒業後】夢追い,東京へ。逮捕,そして派遣生活に
第2章 事件は止められなかったのか
5.【2008年以降】「金字塔」の落選。そしてネタ帳を燃やした
6.【2018年以降】「盗作された」募る不満。支援拒み,深まる孤立
第2部 証言の記録
第3章 青葉被告は何を語ったのか
1.143日間の公判で語ったこと
2.記者との20分間の面会で語ったこと
第4章 青葉被告の治療にあたった上田医師の思い
3.死刑判決が出た後もずっと考え続けていること
第5章 公判で語られた遺族や負傷者の思い
4.長男のために青葉被告に伝えたかったこと
5.受け止めることができない,娘がいない現実
6.長女のたくさんの寝顔を写真に収めていた夫
7.突然奪われた,世界にたった一人の姉
8.現場に駆けつけることを妨げた巨大な黒煙
9.どうしても見届けたかった,最期まで頑張った娘の姿
10.夢半ばで命を奪われた息子
11.上半身に一番重い「Ⅲ度」の熱傷を負った女性
第3部 社会に突き付けられた課題
第6章 同じような事件を繰り返さないために
1.「底辺」自称し孤立。ロスジェネ世代,青葉被告と加藤元死刑囚の違い(雨宮処凛)
2.非正規雇用の拡大は社会全体に様々な危機をもたらす(橋本健二)
3.事件を起こす前に「誰かの顔を思い浮かべて」(大友秀逸)
4.その時代特有のゆがみから,事件の教訓を導く(吉岡忍)
5.夢破れた人でもやり直しがきく社会へ(阿部真大)
6.「無敵の人」を「無敵」でなくすのは相互接触(與那覇潤)
おわりに 何ができるか問い続けて
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予想以上に自分の中に重たいものが残った。生い立ちこそ違うが、就職氷河期下にキャリアアップに繋がるような就職が出来なかった青葉被告の行動や考え方が自分の当時をなぞるようで悲しくなった。
起こしてしまった事件の大きさに軽々しく減刑をした方がいいなどとは言えないが、青葉被告の罪は自分たちが住んでいる社会がもたらしている自分は、この本を読んでいて感じた。
最近、仕事で統合失調症を発症したことがあり今は薬を飲みながら一緒の職場で働く同僚がいる。他の同僚たちの配慮があるとは言い難い厳しいダメ出しに、心を砕きながら毎日頑張っているがなかなか理解が得られない様子を間近で見てきた。
本書の終盤でも書かれていたことだけど妄想に囚われた人に声をかけ続け関係を断たないことが、その人を「無敵の人」にしない方法だと思う。無敵を無効化する(失いたくないものを持たせる)ことが、京アニ事件の再発を防止するために自分ができる数少ないことの一つだと思う。
ちゃんと知れて良かった。やっぱりニュースの切り抜きや見出しだけで、わかった気になっちゃダメだ。
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結局、動機になった「自分が書いた小説を盗作された」ということを本人が今でも信じているのようなので、救いようがないなと。共感力がなく、認知も歪み、他責思考で物事を判断する人が書く小説をどのくらいの人間が娯楽として読めるのかと。携帯小説としても読者は少ないのでは。しかしこういう事件を起こしたらそれはそれで読みたいとは思うけど。
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まず始めに言いたいのは
どんな理由があろうとこの事件は正当化できない。
青葉死刑囚の過去は悲しいもので
辛い過去なのは理解できる。
しかし自暴自棄になった最終形態の青葉信司は『無敵な人』になってしまった。
失うものは何もない。
この状況を助ける事はできたのか。
小説家の夢は閉ざされた。
ヒトラーも画家志望だったか受験に失敗して理解して貰えなかったと言っていた。
自分を理解して貰えない先は相手を攻撃するしか満たされないのかもしれない。
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2019年に起きた京都アニメーション放火殺人事件を追ったルポルタージュ。
事件のあらましから犯人の生い立ち、裁判の経緯、被害者の人生、遺族の言葉、識者の見解までの詳細を報告する。この殺人事件は、30人以上が死亡する衝撃的な事件だったので、その日のことはよく覚えている。犯人は、自分のアイデアを京アニに盗用されたという勝手な思い込みだけで犯行に及んだ。決して許せない事件ではあるものの、彼の不幸な生い立ちと孤独な人生、それが犯罪に至った経緯を知ると、もう少し社会のサポートがあれば防げたのではないかと思った。(これは結果論でしかないが)アメリカでは格差と分断が問題視されているが、日本でも生活環境の格差による社会の分断が密かに進行しているのかもしれない。このような事件は、これからも断続的に発生するような気がする。
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世間に衝撃を与えた京アニ事件のルポ。
青葉被告の生い立ち、証言記録、被害者家族の被告人質問、意見陳述記録、有識者の見解。
社会との繋がりと居場所。人間が人間らしく生きていくベースにはこれらが最低限は必要だということが分かる。
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これからの課題「孤立させない」ってね。
難しいな、、、と。
訪問介護、訪問看護も入っていたのでしょう?
これ以上踏み込む方法って、あと何があるの?
訪問してた看護師さん介護士さん、今考えると怖かっただろうな、、、とか思っちゃった。
ネガティブなものを消すのではなく“薄める”という思考は新鮮。なるほど。
SNSではなく実際の人間関係、居場所があることが重要。
だよな、、、とは思いつつ、被告の経緯を読むと、やっぱりなかなか難しいのでは?と感じてしまった。
自分がその居場所になれるか?って言ったらできないし。
今なら、そういう人からは離れなさいという意見の方が強い。
じゃあ、福祉や介護、医療関係の人達が、それを担うんかっていったら、低賃金で働いてて、人手不足なのに、そんなところまで手が回らないんじゃないか?と。
難しい問題だよね。
深いため息がでた。
Posted by ブクログ
なぜ被告は事件を起こすに至ったのか。
同じような悲劇を起こさないために社会にできることは何か。
普段は思いつかないことを考えさせる本。
自己の責任として何でも切り捨てられることが多い資本主義社会の中で、優しさと繋がりを大切にして生きていたい。
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朝日新聞社取材班やから、ちょっと構えてたところはあったが、まあそれ程思想を表に出しては来なかったか。
その分、内容は、ない。
新聞記事とか、ネット情報とか以上のものは殆どない。
あえて言えば被害者家族の慟哭だが、想像の範囲を出るものではない。泣いたが。
朝日だし、後半の「識者」は評論家だったり小説家だったり、社会がどうの環境がどうのという奴ばっかりで期待通りだったが、被告に、一片の同情も湧かない。
こういうやつは昔からいるし、どこにでもいる。
ゼロには絶対できない。
悲惨だという環境も、そこでちゃーんと頑張って、人として生きていく方々が大半だ。そこへの支援と、犯罪者への対応は、全く違う。無礼だ。
真面目だとかなんとかいうが、結局、自分が逃げる方法を探してるだけにしか読めない。自我を、傷つけないように、理由つけて引っ込んでるようにしか感じない。
人は壊れる。それは認める。みんなそうだ。
だから、他人を傷つけていいことには全くならない。
社会の荒波に耐えれない自我をなんとか守ろうとして、それも、客観と接しないことで守ろうとした結果がこれだ。
創作に噛んでれば、理解できないこともない部分はある。それとこれとは、全然違う。
問題は。
こういう自我暴走の奴が、簡単に人を傷つける、それも大量の人間を被害者にする情報と環境が簡単に手に入ることじゃないのかと思った。
空想と現実の区別がつかず、手段と結果の因果関係に想像が付かない。
なんかもう、怒りが渦巻いて。
アホの妄想に燃やされた人の数、某カルト宗教より多いからな。
Posted by ブクログ
読み終わりました。
発売してすぐ購入して、なかなか読む気になれず
少し経ってから2/3一気読みしたんだけど
苦しくて、辛くて、、なかなか続きが読めなくて
たった数ページだったんだけどね、苦しくて。
やっと読み終わりました。
悔しいです。
京都アニメーション。京アニ。
無敵の人。
どうしてこんな事件が起きてしまったのか、
やっぱり今回の被疑者、青葉真司も生い立ちは
色々あったりするんだけどそれを免罪符には出来ないよ。
生まれた環境、生まれた時代…
いろいろ悪いことが重なったのは可哀想だけれども
青葉からしたら関係者、でも実際は無関係の人達
その方々の方が遥かに可哀想です。
被害に遭われた方の遺族のページがとにかく辛くてね。
なんでって、知ってる作品に関わる人だったりさ…
正直関係者ひとりひとりの名前を知っているわけではないし
アニメーターの方とかの仕事だったり何も知らないの。
でも「知ってる」ことがあまりにも多い。多すぎるんです。
年齢や性別も様々で
色んな人が被害にあっているんだけど
残された遺族の思いは同じで、とにかく辛い。
悪魔のような人間を必死に生かした、医療チーム
彼らも色んな気持ちに押し潰されただろう…。
正直思ったことは
青葉のライトノベルを読んでみたいけどね。
一体どのようなもので、本当に盗作されたのか。
その作品が世に出ることは恐くないけれど…
その作品(といえるものなのかは不明だが)を
読んだら、もしかしたら、もしかしないと思うけど
印象が変わる可能性も、ないとも言いきれない。
まぁ、どちらにせよ許されることではありませんが。