あらすじ
スペインによる新世界の征服/支配の正当性を否定し,先住民インディオの自由と人権を訴えつづけたラス・カサス(1484-1566)最晩年の論策.新大陸で略奪行為を働いたすべてのスペイン人たちを糾弾し,先住民にたいする賠償義務の履行方法を具体的に提示する.当時のスペイン人植民地社会を震撼させた警世の書.
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Posted by ブクログ
16世紀に始まった「エンコミエンダ」はインカの人たちを奴隷のように扱う代わりにキリスト教の教化を義務づけたスペイン王室の制度である。コンキスタドールたちの征服・支配について賠償義務があるとするラス・カサスの意見はもっともだが、一方的な一神教の教化や改宗の是非については触れられていない(気がする)。彼はカトリック司祭でドミニコ会員だったから仕方ないとはいえ、その点がずっと気になっている。
Posted by ブクログ
既刊の『インディアスの破壊についての簡潔な報告』が、その名の通りスペイン人が新大陸でおこなった非道な行為のレポートだとすると、本書はスペイン人の賠償義務を自然の法、神の法、人定の法に照らして論ずる理論的な本。ただし解説によると、ラス・カサスはもっと理論的な『財宝論』を本書の前に書いており、本書はインディアスで働く聴罪司祭たちに向けたマニュアル的性格を持っているらしい。ラス・カサスは「賠償義務を果たさないのならお前らの告白は聞いてやれないもんね」という聴罪を人質にした戦法でインディオたちに正義をもたらそうと試みた。とても実践的なことをやっていたわけで、その分、現地での強い反発も生み出したと
繰り返しが多くやや単調で、読んでいて面白いとかいう代物ではないのだが、実に考えさせられる
ラス・カサスは必ずしも孤軍奮闘だったわけではなく同じような考え方の聖職者も結構いたとか、スペイン王とコンキスタドールたちとの間にも緊張関係があったとか(やっぱりコンキスタドールは関東軍っぽい)、それでもスペインの衰退ゆえに王も貴重な財源であるインディアスの現状を追認したとか、ラス・カサスとコルテスは面識があったとか(驚くべきではないのだろうが)、事実認定と法解釈がややごっちゃになっているのかなとか、法律関係の安定性みたいなことはそこまで考慮しない(事態が事態なのだが)のだなとか、いろいろ勉強にもなった
先人の論考を引用しながらしつこいくらい丁寧に論証していくスタイル、ローマ以来の欧州での法学の伝統なのだろうか。いまの感覚からするとくどすぎるが面白い