あらすじ
主婦たちを苦しめている「女らしさの神話」から脱するには,女性は妻や母としてだけではなく,一人の人間として生きなければならない.家庭という「居心地の良い収容所」から抜け出て,自己実現をはかることが必要なのだ.時代を動かしたフェミニズムの記念碑的著作.一九六三年の初版以後に増補された文章も収録した完全版.
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Posted by ブクログ
60年代からの第二波フェミニズムの嚆矢となった著作と言われているが、丁寧に歴史を追うと4,50年代からのゆるやかなつながりがあったというのはひとつ学びであった。
下巻は特に、但し書き付きとはいえ、オーガズムの話に終始しすぎているし、同性愛者(女同士の絆も否定していたらしい)や特殊性癖、受動性に関してあまりに二項対立的すぎる偏見が見られ、反論の余地ありと感じた。
確固たるアイデンティティ/受動性・無気力という二項対立ではなく、『愛について』でも指摘されているような自己反省的(自己の中の他者)で可変的なアイデンティティのあり方を追求していくべきだろう。
それでも、男性も男らしさの神話に苦しんでいるだとか、教育こそが女らしさの神話に対抗する手であるというような主張は、現代の日本でも十分通用してしまうだろう。
Posted by ブクログ
「女たちの神話」に苦しめられている女性たちの実相を描いてきた著者は、そこから抜け出すためには、妻や母としての生き方だけでない、一人の人間として生き自己実現を図ることが必要であること、そしてそのための新しい人生設計について、具体的な方策をいくつか主張、提言をしている。
ただそれを実現していくことがかなり苦難の道であったことは、本書を著した後、女性解放のための実践運動に入っていった著者の文章、本書収録の「エピローグ」や「メタモルフォーゼ 二世代の後に」に示されている。
自分だけが空虚感に苛まれ、おかしな考え方を持っているのだろうかと不安な心情を抱いていた女性に安堵感を与え、また新しい生き方を考える指針の役割を果たした本書、とても読み応えのある一冊だった。
(もちろん、夫の収入で働かなくとも済む、経済的には恵まれた白人中流階級の話ではないかとの限定はあるにしても。)